2012年8月20日

 朝8時55分、気温はすでに30度に限りなく近いなか、東京都大田区の自宅から四国に向かって出発する。
 いつもならカミさんもいっしょなのだが、「えっ〜?四万十市まで1000キロくらいあるんでしょっ! この真夏に冗談じゃないっ!」 と問題外。なおかつ右腕を痛めており、セロー250以外の重いバイクには乗れないのだから仕方がない。だから一人旅。

 正確に申せば“一人旅”は高松までである。私が出発してから5時間40分後、羽田14時35分発高松空港15時50分着のジェット機という超反則ワザで後を追う。いや、追い越してゆく。

ゼファー750:リアシートにはカミさんのヘルメット。

 旅の相棒はゼファー750。でもほんとうはほとんど高速道路ばかりだから、スズキGSF1200(1995年式の過激な初期型)をチョイスする予定だったが、うかつにも車検切れでアウト。何台か所有していると、ついついうっかりをやらかすのだ。
 



東名〜新東名。

東名高速:神奈川県から富士山を正面に。
 今日の目的地は香川県高松市の屋島工房率いる尾原の邸宅、そこでカミさんと合流って寸法だ。
 東京の我が家から四国高松の尾原邸まで680km、その95%以上が高速道路で、所要時間は9時間を予定している。昨年の春にも同じコースで尾原邸に行ったが、その時の記録(ツーリング紀行2011年“桜”)によれば、
・・・『尾原んちに到着したのは夕方6時22分。東京大田区の自宅を出たのが朝9時45分だから、690kmを8時間37分。平均速度はジャスト80km/h。まあたいした速度ではないが、ガソリン補給したり、昼飯食ったり、一服小休止したりの時間を含めての平均速度なので、まあ頑張って走ってきたと言えようか。』
(※昨年は新東名開通前なので10km多い)
 当時はCB750だからバイク性能はほとんど同じ。ただし春と真夏では水分補給等の休憩回数が多いだろうから、今回は9時間目標とした。
 一般道を18分走り、快晴の下の東名高速。ネイキッドバイクゆえの真正面からくる風は・・・ちっとも涼しくない! 温風ときどき熱風である。ちょっとイライラで、ちょいとスロットルオープンぎみ。


御殿場を過ぎてすぐ、新東名に入る。


 東名から新東名に入ると、すぐに気づくのが路面の良さ。あきらかに揺れが少ないのだ。クルマの場合は揺れだけでなく音も静かなのが分かる。そして道路の広さ、これは東名よりも交通量が少ないので余計に。そしていちばん印象的なのが“直線”。これで制限速度100km/hとはどうなのよぉ、と感じる。正直に言えば、リッターバイクなら最初から最後まで200km/h以下に落とさず走破できるだろう。
 新東名は2車線と3車線が交互に連なるが、この日、3車線の場合の左車線の流れは100km/hくらいで、中央車線が120km/hほど。では右の追い越し車線はといえば130〜140km/hである。
 我がゼファーはフクメンに警戒しながら中央と右側を交互に走る。・・・おっと、前方に御用となっているクルマが。今日の新東名では3台が税金を納めているようだ。 


[フクメンについて]
 誤解のないよう初めにお伝えすれば、この話は警察官を批判するのではなく、一部のフクメンの、それはそれはキッタナイやり方に憤慨するものである。なお私の知人や親戚に警察官がおり、そして弊社のお客様にも多くの警察官がおられる。その職業に、私は好意と尊敬の念を持っていることを付け加えて・・・。

 私はバイクでフクメンに御用となったことはない。いつも制限速度で走っているのかといえばそうではない。ではなぜか、、、それは言えない。
 昨年、クルマでやられた。1500ccのワンボックスでの夜の東名、80km/h制限区間。走行車線にトラックの軍団がノソノソと走っていたので前の2台の乗用車に続いて追い越し開始。前の乗用車は軽快で、その速度に追いつけない荷物満載の我がワンボックス。そこへ後ろからヘッドライトがどんどん迫ってきて追いつかれた。申し訳ないのでアクセルを踏んで頑張ってトラックを追い越し、走行車線に戻る瞬間、赤灯!。速度105km/hで25キロオーバーだと。
 おいフクメン!、あんたらドン速のワンボックスに「早く追い越せっ!」とあおるように迫ってきて、それで「ご馳走さん!」なんて、まともな警察官のやることかぁ?。おまけに「すっとんで行った前のクルマはどうなのよっ!」と言ったら、「速すぎて先行ったから仕方がない」とぬかしやがる。
 こんな交通取締りをやっている以上、警察官全体の品位を落とすし、反感を持たれども交通安全の推進にはちっともならないのである。これじゃあ、点数稼ぎと集金業務だけの取り締まりだぁ、まったく、こんちくしょう!(ちなみに、隣にいたカミさんも、そうとう怒っていた)

 ・・・いやはや大人気ないコメントで、全国の警察官のお客様、申し訳ない。これは一部の悪質なフクメンヤローの話なのでお許しを。





浜松SAの駐輪場はカワサキだらけだった。ホンダとヤマハとスズキの領地なのに。


まだ半分しか溶けてない、自宅で凍らせたペットボトル。夏はコレに限る。
 東名より山側を通る新東名なのに、ちっとも涼しくない。暑いぞ、静岡県!。
 天竜川を渡ったところでゼファーのエンジンはぐずつき、走りながら予備タンに切り替える。近頃のバイクには燃料コックはなく、燃料計に頼るしかないが、はやり予備タン切り替え方式のほうが安心だ。あと何リッター残っているかが明確に分かるから。
 予備タン切り替えから3キロほどで最初の休憩および給油で浜松サービスエリアに入る。11時20分着、東京の自宅から240kmを2時間25分だから、平均速度は99.2km/h。かろうじて高速道路の制限速度(80km/hも多くあり)を守っている。まあ都内の一般道路走行も含んではいるから限りなくグレーゾーンではあるが。
 ゼファーは12リッターのガソリンを食い、ここまでの燃費はジャスト20km/L。ローカルな一般道路ならもう少し走るが、高速道路ではこんなもんだろう。とはいえこのくらいの燃費は今どきの省エネカーではザラにある。4〜5人乗れて、エアコン効かせて。なんだかクルマのほうがはるかに省エネだな。






東名〜伊勢湾岸〜東名阪

 浜松SAのちょいと先で新東名は終点となり、支線を通って三ケ日ジャンクションで東名と合流する。もう瞬時に分かるのは路面の悪さでバイクが縦に揺れる、、、というよりどの高速道路も似たようなもので、やはり新東名の舗装の良さが特筆ものなのだろう。


 東名高速には音羽蒲郡IC〜豊田ジャンクションの間、下り線15km、上り線21km区間は制限速度60km/h(荒天時はなんと40km/h)である。だがしかし、60km/hで走ってるやつなんて誰〜もいない。流れは80〜100km/hなのだ。
 60km/h制限の理由は、道路が狭く、事故が多発するからということだが、たしかにその区間の事故は多い。しかし多少狭いからといって事故が多発しているのはなぜか・・・・・弊社京都伏見店に出入りしている、京都五条の染物業“いづつ”の若旦那、山ちゃんは言う、
「あそこはオバケが出はりますぅ。だから事故が多いんどすぅ」。
 山ちゃんはオバケにめっぽう弱い京男である。だから新東名が2013年、豊田ジャンクションまで延伸開通するまでは、山ちゃんはその区間を走らないという。

いづつの若旦那:京都伏見店にて


 豊田ジャンクションからの伊勢湾岸自動車道は、東名とは異なり広くて走りやすい高速道路だ。ここも新東名よろしく、ついつい速度が上がってしまうから自重せねばならない。
 今日はこの道路の海沿いの風が気温を下げて心地よい。しかし強風の時のバイク走行はたまったもんじゃない。昨年の12月、京都伏見店にカミさんと2台で走ったときは向かい風が特に強く、80km/hで走っていても、140〜150km/hで走っているような感覚で、しかも横風が吹けば、1車線流されるような。私は面白がって走っていたが、カミさんの顔は引きつっていた。強風時はそんなリスキーでスリリーな伊勢湾岸道路なのである。



東名阪、鈴鹿インター付近を通過。

 伊勢湾岸から東名阪に入ると、交通量は倍以上に増え、その上、道幅は狭い。なので四日市、鈴鹿と新名神のジャンクションまでは上り下りともに渋滞慢性化路線である。今日はそこそこの流れで走っている。がしかし、暑い!。
 並走する乗用車、その中でカップルがコーヒーなんぞを飲みながら涼しげに会話している。きっとこう話しているのだう・・・「このクソ暑い最中にバイクなんか乗ってやんの。可哀想に、あのオッサン、クルマが買えないんだろうなあ。。。」、余計なお世話だ。しかし「クルマが買えない」というのは間違いではない。会社にはワンボックスはあるが、我が家にはクルマがない。車庫のスペースは全てバイクが占領しているから。。。





新名神〜名神〜中国自動車道〜阪神高速7号線


 東名阪の亀山ジャンクションで新名神高速道路に入る。ここも新東名のように広くて直線的な道路だ。交通量も少ない。
 亀山ジャンクションからはすぐさま上り坂。鈴鹿の山地を横切るように標高を上げ、三重県から滋賀県に入るころには気温が下がり、風が気持ちよい。京都までは、あと30分少々といったところか。
 甲賀市の士山サービスエリアで本日2回目の休憩。予定では京都あたりで給油休憩する考えだったが、いままでの暑さでノドの渇きがもう限界である。それにしても二百数十キロに1回というか、予備タンになるまで走り続けるというのには原因がある。メーター手前のトンボのキーホルダーが目に入ると、前に前に、けっして止まらず前進あるのみ、、、というトンボ精神がのり移ってしまうからである。

印伝赤トンボキーホルダーは秋の限定生産品。


 東京から京都方面に向かう場合、東名・名神の直通ルートを使う人はごく少数派だろう。現在は新東名・伊勢湾岸・新名神ルートが距離も時間も最短だから(時間にして40分くらいの差かな)。ただし、数多くあるジャンクションで道を間違えれば、トンチンカンな方面へ行ってしまうことになるが。。。

京都市内はすぐ目の前。

 新名神は草津ジャンクションで名神と合流すべく、どんどん標高を下げる。と同時に気温はぐんぐん上がってゆくのが分かる。バイクならではの肌で感じるってやつだ。
 名神を走っている。そこは温風。そしてトンネルで山を越え、京都市内が見えた頃には・・・熱風である。
 尋常ではない暑さの中、京都南インター通過は午後1時55分。自宅からジャスト5時間だ。ここを降りて10分も走れば、弊社京都伏見店があるが、今日は夏休み中だから寄らない。というよりも早くこの熱風から抜け出したいので、営業中でも寄らないだろう。それにしても聞きしに勝る京都の暑さである。
 
中国自動車道と並走の大阪モノレール。

 吹田ジャンクションで中国自動車道へ。並走するモノレールを軽く追い越す、、、その瞬間ゼファーは減速。すかさず予備タンに切り替え、ふたたびスロットル(ワイド)オープン。
 宝塚インターを過ぎて数キロの西宮名塩サービスエリアで休憩、そして給油。午後2時35分である。
 ん?この時間はカミさんが乗るジェット機が羽田空港を飛び立つ時刻だ。高松空港着は午後3時50分だから、どう頑張って走ったところで、この先で追い越されるのだ。恐るべし、ジェット。
 ところで自宅からここまでトイレに行っていない。ペットボトルを1リッターは飲んでいるのにである。たぶんカラダの表面の汗が、風圧で強制的に出てしまっているのだろう。酷暑ならではの現象ですな。
 ゼファーはガソリン、私は水分を補給して発進。阪神高速7号線を経て淡路島へと向かう。


阪神高速7号線。





神戸淡路鳴門自動車道〜高松自動車道。

明石海峡大橋。

 よくもまあこんなデカイ橋を作ったものだ。明石海峡大橋は何度渡っても、その豪快な姿に感激する。だからいつも走行中に写真を撮る。
 橋を渡ってすぐの淡路サービスエリアで小休止。休憩間隔が短くなったのは、カラダが水分をほしがっているから。そして少々疲れてしまったから。この真夏の炎天下を6時間以上走っていれば当然だろう。
 ほんの10分弱休憩して、ふたたび走り出す。しかしまあこの暑い中、ゼファーは元気だ。もっと回せ!、スロットル開けろ!、と催促しているようだが、淡路島ではネズミ捕りなる、たいへん下品な捕り物を行っているとの情報があり自重して走る。とはいえ爆走外車(クルマ)の後をついていったら、トップギアでレッドゾーン。さて何キロだぁ?、、、忘れちまった。


淡路島を快走。


 レッドゾーン走行も、ネイキッドバイクではカラダが風圧に負けて長くは続かず、爆走外車は先に行ってしまった。しばし休憩のつもりで制限速度(100km/hかな)+小αで走っていると、茶髪の若いネエちゃん二人が乗ったK自動車にパシュッと抜かれた。これじゃあいかん、と後ろにつくと、なお速度を上げる。あらら、この速度はKの限界だろうな、ネエちゃん、元気だなあ・・・時刻は午後3時50分、カミさんを乗せたジェットは高松空港に着陸しただろう。

鳴門大橋通過中。


高松自動車道。


屋島。


尾原邸に到着。
 渦潮で有名な鳴門海峡を渡ればいよいよ四国。ここからは高松自動車道で高松市まではたいした距離ではない。が、ほとんど片側1車線の対面通行でペースダウン。それでもほどなく志度インターを降りて明日の為に給油し、一般道を20分ほど走って高松市の屋島、尾原邸に着く。その時刻は申し合わせたかのように午後4時55分。東京の自宅からジャスト8時間。予定より1時間早着である。

 尾原邸にはカミさんがいた。聞けば定刻どおりに高松空港につき、尾原が迎えにきて、この家に30分前に到着したという。
 尾原邸に上がっての私の第一声は「一杯ちょうだいな!」。すぐさま出てきたのは冷た〜い麦茶。ちがう、そうじゃないのだよ尾原君。このクソ暑い中、バイクで8時間も走ってきたのだから、一杯といえば、アレしかないのだよ・・・・・そう、ビールだ。そのひと口がどれほど旨いか、分かるかなぁ、分かんないだろうなあ、、、。





ジェット vs ゼファー

 どうでもよいことだが、東京の自宅から四国高松の尾原邸までの“空路”とゼファーによる“陸路”の比較をしてみる。

 ジェット機・・・羽田から高松までの所要時間は1時間15分。しかし自宅〜尾原邸のドア・ツー・ドアでは3時間30分である。そしてその旅費は24,050円(飛行機は特割料金、都内電車賃含む)
 ゼファーの陸路・・・所要時間は8時間。高速代13,025円(平日ETC割引料金)+ガソリン代4,799円で合計17,824円。その差は6,226円だが、まあ実際にはゼファーのタイヤ・ブレーキパッド・エンジンオイル等の消耗費(680kmで約6,000円掛かる)が加算されるから旅費は変わらない。※大型バイクの消耗費って、ガソリン代より高いんですよっ。

 ・・・バイクでの一人旅って、案外高くつくものですなあ。ある意味、贅沢な旅ではなかろうかな。



 今回の東京(自宅)〜高松(尾原邸)の陸路680kmの所要時間は8時間ジャストで平均速度は85km/h。これ、約40分の一般道路走行や4回の休憩(食事&給油)時間も含んでの平均なので、かなり頑張って走った。というより、のんびり走ったら暑いので、スロットルがオープンぎみだったことはあきらかである。



屋島工房 尾原んち。

 尾原は我らのために漁港近くの食事処を予約していた。早々に尾原家一同とクルマで向かい、ちょっと品の良いその料理屋に入った。
 メニューを眺めていると、すでに懐石料理を予約注文しているという。しかし酒の種類を確かめるべく、さらにメニューとにらめっこすると、恐るべきことに気づく。その懐石の名称から“京懐石”(京都の伝統的懐石料理)と分かる。
 京都伏見店ができて、ほぼ毎月のように京都に行き、そのつど本場の京懐石を味わっている私である(ウソ、たま〜に。でもミシュランクラス含む)。その私に、四国高松で京懐石を食わせるっつうのは、度胸あるじゃないのぉ。
 尾原は、食い物にうるさい私のために、上級な料理を予約したのだろうけど、私は香川県ならではの瀬戸内海の料理、タコやらアナゴやらが食いたかったわけで、なぜに京懐石なのか。逆にもし尾原が東京に来て、東京のナンチャッテ讃岐ウドンをご馳走したらどうよ。ウドンにはめっぽううるさい尾原のことだから、どんぶりをひっくり返して憤慨するだろう。

 昨年(2011年春)に来たときは、腐りかけたナマコを食わせた尾原だから、今回は気を使ってかなり奮発したのだろう。なのに大人気ないことを書いてしまった。尾原はこれを読んだら怒るだろうなあ・・・「ご馳走してあげてなんやその言い方はぁ、、、あのオッサンはもう俺んちに泊めてなんかやらへん!」とね。だから尾原はぜったいこれを読んだらいけない。

食事の前に、屋島が見える漁港で尾原ジュニアが走り回る。


左に屋島を望む美しい瀬戸内海。いいとこに住んでるんだなあ、尾原家は。


 今日はそうとう疲れているのだろう。たいした量のアルコール補給でもないのに、夜9時過ぎにはフトンに収まっていた。さて明日はいよいよトンボ撮りの本番、高知県四万十市のトンボ公園に向かう。


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