2012年8月21・22日



 高知県四万十市にある“四万十市トンボ自然公園”は、休耕田を利用して作られた世界初のトンボ保護区である。一面湿地帯の園内の出入りは無料で、隣接して四万十川学遊館(有料)があり、その中に“とんぼ館”と“さかな館”がある。大人も子供も、もっと自然に接しよう、、、といった意図が見え、人工的にとはいえ、トンボが住める環境に戻すという試みには頭が下がる思いだ。
 そんなわけだからトンボ好きの私が訪問しないわけがない。んっ、“リョーマの休日”?、このノボリ旗は高知県のいたるところで目にしたが、そのつど武田鉄也が頭に浮かぶ。おっ、“わざわざ行こう!”ってのはいいねえ、四国じゃなくて“志国高知”、志のある国へ、ってのも。ただし、龍馬ふうの男が和服着て後ろにオネエちゃん乗せてベスパに乗ってる、っつうのはちょっとトンチンカンだけど、まっいいか、「バイクで行こう」って二輪業界を応援しているみたいだから。






1日目:トンボ撮り第1回戦
8月21日

 昨日を振りかえろう。大雨の中を走り、四万十市に着いて、四万十川の赤鉄橋を渡りトンボ自然公園に到着した。その頃には雨は止み、青空も見え隠れし、時おり強い日差しも現れる。

フォト:坂

 坂上カメラマンのクルマからカメラを取り出し、まずは学遊館の受付に行ってトンボの情報を得る。
 「先ほどまで凄い雨だったので、これからトンボは飛ぶかどうかぁ・・・?」
 かなり不安なコメントである。それを知らずに坂上カメラマンは「勝負だぁ!」と言わんばかりの表情で公園の湿地帯に向かう。
 だが・・・・・・・・・・・・・・・・。



 つい先ほどまで降った大雨で、湿地帯から大量の水があふれ、どこが小川か道路なのか分からない状態になっている。この状況でのトンボ撮りは、かな〜り厳しい。というより、トンボの姿が見えないのである。

広大な湿地帯と水没している道。

尾原は奥へ奥へと歩いてゆく。
水溜りもおかまいなく何かを狙う坂上カメラマン。

結果、ドロだらけの尾原のR-06ブーツ。

尾原がドロだらけにしたR-06ブーツの名誉のために掲載する。可憐なほんとうの姿を。


 こんな最悪の状況でもしばらくするとチョウチョ、いやチョウのように飛ぶチョウトンボが舞いだした。それも数匹ではなく数十匹という数で。
 チョウトンボはこの8月上旬に東京都大田区の野鳥公園で二匹見た。そのときはあまり近づいてくれず、止まってもくれなかったので、その美しい姿の写真はまともに撮れていない。しかしここのチョウトンボはちがった。飛んでいる姿も多いが、よく枝に止まってくれるのだ。

赤トンボとチョウトンボ。(フォト:坂)

 その美しいチョウトンボのド・アップは最終話にでもたっぷりとご覧頂こう。・・・出し惜しみでスマンですな。

 ここでのトンボ撮りのターゲットは、大型のヤンマ系、その中でもオニヤンマがいちばんの狙いだ、と坂上カメラマンと申し合わせていた。しかし状況が悪いのか、いくら待ってもいっこうに現れない。ま、明日の午前中に期待するとして、今日のところは撤収する。


撤収する坂上カメラマン。





四万十川学遊館“あきついお”をちょっと見学。

 “あきついお”とは、トンボの古い呼び名“あきつ(秋津)”と “うお(魚)を合わせた造語だそうだ。
 ビジネスホテルに向かう前に学遊館による。入館料840円を支払い、まずは“さかな館”へ。ここには四万十川水系を中心に約300種の魚を飼育している。ちなみに、なにを隠そう私は魚好きでもあり、水族館は大好きだ。

四万十川学遊館に入る。

トンボよりも多少は関心ありそうなカミさん。
中は広々としている。

私にガンつけてるハリセンボン。


 次はとんぼ館。ここは世界のトンボ標本1000種3000点が展示されており、単一施設の常設としては世界一だという。

トンボ自然公園に生息するトンボは、現在76種だと書いてある。しかし今日のトンボたちは10種類も見ていないような気がする。

すごい種類の標本に圧倒される。
オニヤンマだ。ぜひ撮ってみたいのだが、、、。


 1000種類という数の標本は見事である。しかし生きたトンボとはちがい、色彩が沈んでいる。そして物悲しい。やはり元気に飛び回っているトンボたちの美しい姿を見れば、こちらも元気になる。

 さて、とんぼ館の順路を歩いていると、トンボに関するさまざまなウンチクパネルが通路に掛けてある。これが面白いのである。
 ・・・ではほんの一部を、私の解説付でご案内しよう。


要約すれば、“トンボ獲り”には「想像力」「忍耐力」そして「集中力」の3つが揃わなければならない、とある。
カメラで捕らえる“トンボ撮り”もまったく同じで、どの辺りを飛行するかの「想像力」、飛んできて近づくまで息をひそめてじっと我慢の「忍耐力」、そしてアングルを決め瞬時にピント合わせのダイヤルを回し、シャッターをタイミングよく押す「集中力」、この3拍子が揃わなくては飛行中のトンボは撮れない。
なお本文では・・・「最近、日本人に覇気が感じられないのは、子供時代のトンボ撮り体験が乏しいから、と言ったら飛躍しすぎでしょうか?」と締めくくっている。同感。

漢方薬に赤トンボの乾燥があり、それを服用すると気管支炎等に効くそうだ。そして生きた赤トンボを眺めると、精神安定剤になるのでは・・・と。
漢方薬の効き目はどうか知らないけど、優雅に飛んでいる赤トンボを見ていれば、心が癒される。そして「♪夕焼け小焼け〜の・・・」なんて思わず口ずさんでしまえば、その光景はまちがいなく天然の精神安定剤であろう。

「トンボは勝虫」という言葉は、当サイトでも数多く書いている。戦国時代の武将たちが、後戻りせず前にしか進まないトンボを勝利の証として貴んだ言葉だ。しかしその言葉には元があるのだ。
それはこう書いてある(要約)・・・古事記によると、天皇が狩りをしている最中、アブが腕を刺した。そこへトンボがやってきて、さっとアブを捕らえて飛んでいった。それを歌にしたという。そして後に戦国武将たちに伝わる。
いずれにしても、トンボは人にとって心強い味方なのである。


 ほかにもトンボにまつわる話はたくさんのパネルに掛けてあるが、ま、知りたければどうぞ四万十学遊館まで足を運んでくださいな。きっと人生変わりますよぉ。

 余談ではあるが、農機具で有名な“ヤンマー”の社名は、天気予報坊や、ヤン坊マー坊をくっつけたのではなく、オニヤンマから名づけた。トンボは農作のシンボルであり、その大将がオニヤンマだと。
 そしてもうひとつ、鉛筆で名高い“トンボ”。公式HPによるとその社名の由来は、トンボの古い呼び名“あきつ(秋津)”が、古くは日本のことを“秋津島”と呼んでいたとされることから、「日本を代表する鉛筆」という願いを込めて名づけたそうだ。「トンボは勝虫」という理由もあるらしい。
 ・・・トンボって、役者ですなあ、、、。





2日目:トンボ撮り第2回戦。
8月22日

四万十川に掛かる赤鉄橋とゼファー。(フォト:坂)


 四万十市の2日目は、早朝まで降っていた雨も止んで、朝8時過ぎには青空が広がった。トンボ撮り、期待できそうだ。
 今日の予定は、昨日に続いて午前中はトンボ自然公園で坂上カメラマンとトンボ撮り勝負(尾原も撮るが眼中にない)。そして昼は四万十川のちょいと上流にある食い処で“天然ウナギ”を賞味し、その周辺の四万十川の風景でも撮影しよう・・・こんな計画である。
 さて再び情緒ある赤鉄橋を渡る。昨日の大雨、そして夜中から早朝まで降っていたにもかかわらず、四万十川の水の色は青々としている。普通の川なら茶色の濁流となっていようが、さすが“清流四万十”と言われるだけのことはある。
 朝9時前にトンボ自然公園到着。いよいよトンボ撮りの本番となる。

「トンボ撮りが終わったら、四万十川の天然ウナギを食わせてもらうんだもんねぇ〜」・・・この笑顔はそう思っているにちがいない。


ハスの花が綺麗だ。

坂上カメラマン、何トンボを狙ってるのだろうか。

羽を休む赤トンボ。
私とカミさん。(フォト:坂)

尾原、たぶんカエルを撮っているのだろう。

オニヤンマ?・・・違う。(フォト:坂)

※“赤トンボ”は正式名称ではありません。また、トンボとヤンマは異なる種ですが、
それらの説明は長くなるので(めんどくさいので)省略しますぅ。御免なすって。


 本格的なトンボ撮りをしていると、一瞬でトンボの種類が判断できるようになる。先ほど坂上カメラマンが大型のトンボを撮っていたが、氏も私も即座に分かっていた。それがオニヤンマでなくオオヤマトンボであることを。
 おっ、オニヤンマが高速で飛んできた。その距離は10m少々。これでは70〜200mm望遠ズームレンズを持ってしてもくっきりとは捕らえきれない。5m以内に近づいてくれなければ。ここは忍耐だ。しかしその後、いくら待ってもトンボの王様は飛んではこなかった。
 私はトンボ撮りをしているので、目線は水平より下であった。陽が陰ったのでふっと空を見ると、なんとダークグレーの雲が迫っている。とポツポツと雨が。
 今日はここに来てまだ30分少々である。空は雨雲でおおわれており、天候回復の期待はできない・・・しかたなく“トンボ返り”の撤収。



レインスーツを着た2台が四万十川を渡る。(フォト:坂)

 雨足が強くなってきた。これではこの先に予定していた四万十川の風景写真も撮れないし、まだ9時半だし、腹は減ってないしで、天然ウナギを食わずして四万十市を離れ、高松に戻ることにした。雨に打たれて走りながら、尾原はきっとこう思っているだろう、
 ・・・「何しに来たんやろか。天然ウナギも食わせてくれへんで。やっぱ、来なきゃよかったなぁ〜〜〜」・・・
 そう、雨男尾原が来なければ、きっと天気快晴だったのだよ。天然ウナギが食えないのは私のせいじゃあないのだよっ。。。


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