文:三橋弘行 写真:坂上修造 取材日:2015年9月1・2日
[ モーターサイクリスト誌連載 第11湯 ]




塩原温泉郷は東京から近い。東北自動車道をひょいと走って西那須野塩原インターから30分ほど。いや、日光・鬼怒川経由で、日塩もみじラインのワインディング(写真)を楽しんでから向かうルートのほうがバイク乗りにとっては(クルマも)おいしい。
大出館はそんな便利で美しい環境にあるが、観光旅館というより、湯治宿といったほうがふさわしい。江戸時代からカラダを癒やすために人々が足を運び、数連泊した温泉なのだ。しかし現在は、カラダではなく心を癒やされるために向かう人は多い、かな。



取材日は平日でありながらほぼ満室。そのお客の7割が老人だった。なるほど、湯治宿ならではの客層だ(休日前は逆転することあり)。
通常、湯治宿の晩飯は素朴なもの。しかし出てきた食材には意表をつかれた。豊富なのだ。この量はご老人には多いのでは、と宿の若女将に問えば、食事コースを選択できるとのこと。観光目的と湯治のご老人とでは、やはり食べる量は違いますわな。
ちなみに私のような酒飲みには、少々量が多かったようで。。。




宿の裏手の数メートルに源泉がある。指差しているのは主人、それは2種類あるうちの「墨の湯」と言われる黒い源泉。そしてまた数メートル離れた所には無色透明な「五色の湯」の源泉が。この二つの源泉の温泉成分はほとんど同じなのに、なぜ黒と透明に分かれるのか不思議だ。
なお、五色の湯は、湯船に注がれると白濁色だったり、黄土食だったり、そしてこの日は緑ががっていたりと、これも不思議。
※墨の湯は混浴時間帯が多い。もし女性が浸かっていたら、視線を向けないように!・・・これ、マナー。

[ 大出館の湯]
含硫黄−ナトリウム−塩化物・炭酸水素塩泉(硫化水素型)
源泉2ヶ所 ペーハー6.2〜6.4 中性 硫化水素臭漂う
源泉温度(季節で異なる):墨の湯39〜42℃ 五色の湯60〜70℃ 
墨の湯:透明感のある黒 
五色の湯:乳白〜エメラルドグリーン
加温なし 加水あり 飲泉可
(加水は減温および成分が強い為、そして配管保護の為) 
総湧出量:およそ160リットル/分 自家源泉  源泉掛け流し
浴槽:内湯x6 露天x2 混浴(女性時間あり)、女性用浴槽あり



豪華さを求めるならお薦めしないが、宿の方々および温泉の温かさに癒やされたいのなら、ぜひとも宿泊していただきたい。周辺の見どころ食いどころ走りどころも満喫できよう。
料金はひとり8790円〜1万4190円 (2名1室諸税込)。※平日のみ1名宿泊が可。全26室。
日帰り入浴は税込600円(10:00〜16:00)。全て現金支払い(カード機器が壊れるから)



お客の送り迎えのマイクロバス運転、温泉の管理、電話番、フロントの接客等々、いつもニコニコとなんでもこなす主人である。取材後に文章確認の電話をするがつながらなかった。翌日に再度掛けたら「電話機が壊れてしまって、スミマセン。デジタルは弱いですね。昔のダイヤル式は丈夫で長持ちしたんですがねえ・・・」、これまたニコニコと。
大出館の湯は機械を壊すようだが、人のカラダや心は温か〜く癒やすのである。









宴会禁止の温泉宿があるなかで、大出館はカラオケ付の宴会もあり。主人いわく「温泉浸かって、笑顔で飲んで歌って、そんな楽しみがあってもいいじゃないですかぁ」・・・うん。(客室には騒ぎが聞こえてはこなかった)


大出館 公式HP >>



さて、主人が薦める次の宿は
 ・・・新潟県 栃尾又温泉 自在館 じざいかん


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