文:三橋弘行 写真:坂上修造 取材日:2015年10月5・6日
[ モーターサイクリスト誌連載 第12湯 ]




関越自動車道の小出インターから、黄金に輝く稲穂を見ながら東に進む。取材日の10月上旬はコンバインフル稼働で米の収穫真っ最中だ。ここは魚沼、コシヒカリの産地として全国的に知名度は高い。
インターから10キロほど東に走れば、道路両側は山に挟まれ田んぼはなくなる。そしてその国道から横道に入ってまもなく、そこに栃尾又温泉「自在館」がある。1000年以上前の開湯から、湯治を目的とした人々が今なお通い続けている。



連泊をする湯治目的と、主に1泊の観光目的とで、異なる食事メニューを選択できる。もちろん取材とはいえ我らは後者のほうで、地元魚沼の食材を堪能。
それにしても、米が旨い地域というのは、なぜ漬物も旨いのだろうか。想像するに、米に負けない味を出そうと、人々は努力していたのだろう。筆者には、ご飯と漬物だけでも御馳走に思える・・・いや、ウソをついてしまった。新潟と言えば「酒」。これもヌキにしては語れない。




ここの放射能温泉のことを詳しく解説すると、ものすご〜く長くなるので、ものすご〜く簡略化して述べれば「地底のラドンという微量に放射能を含んだ“気体”が、他の温泉成分と共に湧出された湯」、とまあこんな感じである。
自在館の管内にも湯船(左写真)はあるが、メインは3軒共同湯の“したの湯”(右写真)と“うえの湯”。上下の湯はどちらも約36℃とぬる〜い湯なので、ゆったりと長風呂を。

[ 栃尾又温泉の湯]
[3軒共同湯] 
単純放射能温泉
ペーハー8.6 アルカリ性 36℃ 無色透明無味無臭
加温加水なし 自然湧出 源泉掛け流し(上がり湯のみ加温循環ろ過)
浴室:内湯3(日替わり交代制 男女別)

[自在館自家源泉] 
単純弱放射能温泉
ペーハー7.9 弱アルカリ性 28.5℃ 無色透明無味無臭
加温あり加水なし 自然湧出 源泉掛け流し
浴室:内湯2 露天1 共に貸切風呂
総湧出量:178リットル/分 飲泉可



栃尾又温泉 自在館 じざいかん

ゆったりと長湯を楽しみたいなら早めに訪れよう。チェックイン13時ごろ、チェックアウト11時ごろは、そんな理由から。湯治と観光を兼ね備えた宿。
料金はひとり8050円〜1万8050円(2名1室諸税込)1名宿泊可。全28室。カード不可。
※大部屋休憩付日帰り入浴1720円(10:30〜17:00)タオル・浴衣レンタル付

取材日:2015年10月5〜6日



「自在館」の自在とは、観自在菩薩を意味する。分かりやすく言えば観音様。とはいえ宗教的な雰囲気はない。
主人は厳格な人、とお見受けした。少なくとも筆者のようなチャラい者ではない。そんな主人が不定期開催で朝食後におこなう「お茶会」というトークライブがある。その温泉話が興味深い。ありそうでないのだ、主人がお客に語る場、というのは。よいサービスである。

・・・なお、主人は2016年12月より、「日本秘湯を守る会」の会長である。

自在館主人を囲んだ「お茶会」。チェックアウトまでのひととき。









放射能というと聞こえは良くないが、この宿の湯にじっくり浸かっていると、地底からのラドンのパワーを感じる。・・・たぶん気のせいだとは思うも、やはり感ずることは大事。
千年以上も昔、放射能という言葉がなかった時代から、この温泉は人々を癒やしてきた。


自在館 公式HP >>



さて、主人が薦める次の宿は
 ・・・長野県 小谷温泉 山田旅館


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