文:三橋弘行 写真:坂上修造 取材日:2014年10月22・23日
[ モーターサイクリスト誌連載 第3湯 ]




のどかな安曇野を北アルプス山脈に向かって狭い県道を上り、海抜1462mに達した行き止まりに中房温泉がある。
風呂に浸かる前に宿の広い敷地を散策。10分少々山に登り、雲が横から向かってくるところで地熱浴。ここでの自分で作った温泉玉子の旨さはたまらない。
山の斜面、ところどころに温泉が湧き出している。それを間近で見られる温泉宿は、全国でも限られた極少数派。ここは、温泉とはなんたるか、を体感できる宿である。



中房温泉は昔ながらの湯治系の宿だから、食事うんぬんのコメントは必要ない、と思ったら大間違いである。ここには地熱を利用した料理がいくつかあり、なかでも別注のローストビーフは美味。温泉の成分が含まれているのだろうけど、これほどの味になるのは驚きだ。都会の洒落たレストラン真っ青か。ほかにも別注料理はいくつかあり(要予約)。
※山で食う地熱の温泉玉子(64円)やジャガイモ(人数分無料)も別注料理と言えようか。これがまた、ほんとうに旨い。



源泉数が多く、湯量が有り余るほど豊富(実際余っている)なのだから、湯船の数も多い。なので、宿が満室状態でも湯船が混雑することはない。
それぞれに趣向を凝らした湯船、温泉好きなら、やはり避けて通れない中房温泉である。

[ 中房温泉の湯]
泉質:単純硫黄温泉/単純温泉 
源泉本数:約30本(現在の使用は16〜17本)
湧出湯温:64〜95℃
ペーハー8.6〜9.1 アルカリ性 ほぼ無色透明・ほぼ無臭
湧出量:800リットル以上/分 自然湧出 自家源泉
加温・加水なし 源泉掛け流し 飲泉あり
浴室:内湯x4(浴槽はx7・混浴および女性時間あり) 
露天x8(混浴および女性時間浴槽もあり)
他に蒸し風呂・地熱浴場



中房温泉は湯を楽しむ人の為の温泉と言えよう。豊富な湯量に多くの湯船、それぞれまったりと浸かるには早めにチェックインを。

料金(2名1室諸税込)は一人¥9,654(登山者・長期滞在向け)〜¥21,750と、タイプ別にあり。
客室:50
※11月下旬〜4月中旬は積雪の為、休業

日帰り入浴:¥700(宿の手前の「湯原の湯」。宿泊者は無料) 9:30〜16:00




現在9代目の宿の主人、温泉に対する情熱と知識はそうとうなものである。「温泉はね、湯船に注がれる湯の中身が大事なんですよ」と語るように、高温の源泉を空冷・水冷で減温し、限りなくフレッシュな温泉を掛け流す・・・その工夫、そして管理には、かなり苦労していることだろう。

[追伸]
安曇野の平地から中房温泉に向かう県道は、狭いが自然を楽しめる道。取材日が10月下旬だったので、その紅葉は見事であった。
なお、ところどころで出会う猿には、ぶつからないよう注意を。また、くれぐれもエサを与えないように。


中房温泉 公式HP >>

周りの美しい山々を見ながら湯に浸かる。癒やされる、とはこういうことか。。。


さて、
主人が薦める次の宿は・・・山梨県の 
白根館


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