文:三橋弘行 写真:坂上修造 取材日:2017年11月2~4日
[ モーターサイクリスト誌連載 2018年 4月号]





東北自動車道、日光宇都宮道路を走り、日光市街から霜降り高原を経て、奥鬼怒温泉郷へと向かう。途中の川俣湖は人造湖ながら、まるで絵葉書のようだ。
加仁湯へは、環境保護のため、その宿までクルマやバイクでは行けない。手前の駐車場に停めて、約8キロの林道を歩くか、宿のマイクロバスに乗るかのどちらかである。当然ながら体力に自信がある筆者は徒歩を選択した。野鳥の鳴き声しか聞こえない、静かでキレイな空気の中を歩くのもいいものだ。しかし・・・そんな気分も2~3キロまで。だらだらとした登り坂に苦戦だ。体力が衰えていることを思い知ったのである。

女夫渕無料駐車場からは、宿泊者専用のマイクロバスが出ている。 徒歩組は8キロの林道をスタスタ。急坂ではなく、ほとんどがゆるい登り坂。筆者の足はガクガク。


やっとのことで到着の加仁湯・・・見栄を張らずにマイクロバスにすればよかったかも。とりあえず右にある足湯に直行。



料理はもちろん地元の山の幸。写真以外にもさまざまな料理がてんこ盛り。
筆者は別注の「鹿刺し」と「オオサンショウウオの天ぷら」をつまみに「イワナの骨酒」と欲張る。で、初めて口にしたオオサンショウウオの味は、、、こりゃあクスリですな。
なお、加仁湯の名の由来は、沢にカニがたくさんいたから。しかし現在はそれほどおらず、料理に沢蟹は見当たらない。




なんといっても加仁湯の自慢は温泉そのもの。
宿の源泉は5つあり、露天風呂が4つ、内湯が2つ、貸切り露天風呂は3つ、そして利き酒ならぬ「利き湯」の小さな湯船が5つある。不思議なのは隣どうしと言ってよい5つの源泉で1つだけが無色透明。その他は、青みがかった美しい乳白色である。
メインの露天風呂は混浴だ(上記の大きな横長写真)。そこは珍しく、タオル着用可能。しかしその奥に、大差ない大きさの女性専用露天風呂(このページ最上部のタイトル写真)があるので、タオルOKと言えど、女性がわざわざ浸かりにくることは少ない。

[ 加仁湯の湯]
含硫黄-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 [硫化水素型] その他
源泉本数:5 掘削自噴・動力揚湯 総湧出量:335.3 ℓ/分
源泉温度:45.9~63.7℃ pH 6.3~6.7 中性 
溶存物質(ガス成分除く):1124~1728mg/kg
加水なし・加温なし 源泉かけ流し
浴室:露天4(+利き湯)・貸切り湯3・内湯2(男女別)
取材日:2017年11月2~4日




夕食後、主人に話を伺った。もちろん酒を飲みながら。
この地ならではの苦労は、都会人の想像以上だ。しかしこの熱血な主人は、ひとつひとつ解決してゆく・・・というのは初めの1時間で、その後の3時間は、野球の話(ベイスターズの選手の合宿)、相撲の話(春日野部屋の夏合宿相撲小屋あり)などなどで、いつのまにか時計の針は翌日になりにけり。
そして翌朝、フロントで主人の隣に娘さんが、、、いや、女将さん、奥さんだ。

こりゃあいったい、どうなってるのだろう・・・。




筆者がお世話になっている温泉紀行ライターの巨匠、飯出敏夫(いいでとしお)氏いわく「加仁湯こそ秘湯であり、温泉の聖地ですぞ」。温泉好きなら浸かりに行かねばならんでしょうな。素晴らしい湯に乾杯。

料金は1人平日1万3110円~ (2名1室諸税込・1名宿泊は可) 全48室。
立寄り入浴:800円 ※送迎マイクロバスは宿泊者専用

加仁湯 公式HP >>

次回、「にごり湯編」の13湯目は・・・

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