文:三橋弘行 写真:坂上修造 取材日:2018年5月8・9日
[ モーターサイクリスト誌連載 2018年 7月号]





大先輩の飯出さんを後ろに、6気筒1800ccのホンダゴールドウイングで那須湯本温泉に向かう。


温泉紀行ライター巨匠
 
飯出敏夫(いいでとしお)さん
温泉&温泉宿の取材に特化して約30年、入った温泉は3000湯超。得意分野は秘湯系。集大成の温泉達人コレクション
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那須温泉神社にご挨拶


九尾の狐伝説の殺生石
東北新幹線の那須塩原駅で飯出さんと合流、いっしょに那須湯本温泉を楽しもう、という寸法である。いやいや、めっぽう温泉に詳しい巨匠といっしょなら、分からないことを調べることなく教えてもらえるのだからありがたい。
那須湯本温泉の歴史はかな~り古い。まずは1300年以上の歴史ある那須温泉神社で取材祈願。ちなみにこの神社は温泉(おんせん)ではなく、温泉(ゆぜん)と読む。
温泉神社の隣には、中央部分に草木がはえていない異様な雰囲気をもつ“史跡 殺生石”の空間がある。その昔、悪の妖怪“九尾の狐”がここで退治されて石になり、その石が毒を発し、人や動物、虫に至るまで殺し続けた、という伝説あり。那須湯本温泉はそんな環境の中の、歴史ある温泉地だ。


高台に建つ松川屋那須高原ホテル。那須湯本温泉の中では歴史ある宿だが、現在は鉄筋ビル。温泉宿というよりホテルそのもので、風情ある湯船に上質な湯があるのだろうかと不安に思ったが・・・心配無用。



料理は那須の山と高原の幸。そして別注の「とちぎ和牛のすき焼き」を追加。その見るからに高級な霜降り和牛の味は濃厚。
少食の筆者にとって、別注すき焼きは欲張り過ぎた。酒が進んだこともあり、テーブルに並んだ料理を食べきれない。しかし目の前の飯出さんは、「おいしいよ、おいしい」と全て完食。すごいなあ、と感心すると「出された食べ物は残さず食べるのが家訓のようなもので」・・・御年70過ぎですぞ、ほんとにすごい。(でも、おいしくなければ、完食できませんよね)






ホテルの温泉は、乳白色の『鹿の湯源泉』と、無色透明の『奥の沢源泉』の二つの源泉が注がれている。男性用は鹿の湯源泉のみ、女性用は両方あり。特に女性用の奥の沢源泉湯船からの景観は、樹木の絵画のよう。なんだか不公平のような気もするが、その代り、男性用の露天風呂は素晴らしい。取材日は曇り空で視界が悪かったが、晴れていれば、まるで北海道のような広大な風景が見渡せる。・・・ということは向こうからも見えるかもしれず、女性用には不向きか。(外から見えない女性用露天風呂もあり)
ということで女性用湯船の奥の沢源泉の湯には浸かっていないが、やはり魅力的な湯は、乳白の鹿の湯源泉だと思う。

[ 松川屋那須高原ホテルの湯]
鹿の湯源泉:
 単純酸性硫黄温泉 [硫化水素型]  配湯量 80 ℓ/分
 源泉温度:57.2℃ pH 2.6 酸性 溶存物質(ガス成分除く):843mg/kg
奥の沢源泉:
 単純硫黄温泉 [硫化水素型]  配湯量 50 ℓ/分
 源泉温度:70.1℃ pH 4.0 弱酸性 溶存物質(ガス成分除く):260mg/kg
加水なし・加温なし 源泉かけ流し 浴室:内湯2 露天2 貸切り湯2
取材日:2018年5月8~9日


[ せっかくだから、立寄り入浴施設『鹿の湯』 をご案内 ]

1300年の歴史 鹿の湯


鹿の湯建物をまたぐ沢のすぐ上流が史跡殺生石。

48℃の高温湯船に笑顔で浸かる飯出さん。信じられない光景、筆者は足首まででギブアップだ。

鹿が傷を癒やした湯
殺生石のすく下方に那須温泉神社の創建と同じ頃に開湯されたという〝鹿の湯〟がある。
「那須に来たら、鹿の湯はぜったい外せませんよ」。飯出さんは、その歴史だけではなく、湯船の造りや泉質が見事なのだと語る。
男性用には湯温が異なる6つの湯船がある。41、42、43、44、46、48℃、私は熱い湯が苦手で42℃までだが、、、。

鹿の湯:設備改修日以外は年中無休 8~18時営業 料金は平日400円、土日祝500円
※以前の泉質は『酸性・含硫黄-カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉』、しかし現在掲示の分析書では『単純酸性硫黄温泉』と泉質名が変わっている。






松川屋7代目主人は、なんと連載初のバイク乗りである。なので温泉取材でありながらバイク談議が多くなる。上記写真の左は主人の愛車。
主人は那須町観光協会、とちぎにごり湯の会の会長やらなにやら、いくつもの会の役職を務め、年間200ほどの会合に出るという多忙な日々を送っている。つかの間のひと時があるならば、温泉宿とはいえ、バイクにも癒やされているのだろうと察する。(弟さんの料理長もバイク乗りだ)




思いのほか那須高原には見どころが多い。日帰りではなく泊まって楽しみたい。温泉施設『鹿の湯』に浸かるのも忘れずに。
※土日祝日、特に昼間の鹿の湯は混雑。

なお、下記を見て立寄り入浴料金が高めなのが分かろう。これは立寄りで湯船が混雑せず、宿泊客がゆったり浸かれるための故意的な設定だと聞く。

料金は1人平日1万6350円~ (2名1室諸税込・1名宿泊は休前日以外可) 全25室。立寄り入浴:平日1200円、土日祝日1500円

松川屋那須高原ホテル 公式HP >>

次回、「にごり湯編」の14湯目は・・・

 北海道の 
ホテル利尻




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