文:三橋弘行 写真:坂上修造 取材日:2016年5月9・10日
[ モーターサイクリスト誌連載 2016年 8月号]





長野県松代町には城跡がある。江戸時代の初期から明治維新まで、真田家によって継がれてきた松代藩の松代城だ。その初代藩主は真田信之、あの真田信繁(幸村)の兄である。この城下町は城跡以外に、武具などの所蔵品を展示している真田宝物館、そして江戸時代に建てられた真田邸があり、温泉とともに癒やされる街なのだ。





国民宿舎にこれほど立派な浴室があるなんて、そしてその湯の泉質がこれほど素晴らしいなんて思いもしなかった。申し訳ないことだ。
それはまさしく黄金の湯。その湯量は毎分740リットル、もちろん100%の源泉掛け流し。しかもその成分はカラダに良いときている。この宿の近くには、武田信玄と上杉謙信との戦い、川中島の合戦場があり、きっと武将も兵も傷を癒やしに浸かったのだと想像する。
なお、黄金の色は泉質に鉄の成分が入っており、それが酸化して変色するのが主な原因。・・・金は無関係。

そしてこの湯の成分は濃く、誰も浸からずに時間が経つと表面に炭酸カルシウムの被膜結晶ができる(写真左下)。もちろんこれを取り除いてから湯船は解放されるのだが、なんとも幻想的な景観だ。

[ 松代荘の湯]
含鉄(U)−ナトリウム・カルシウム−塩化物温泉
ペーハー6.7 中性 源泉温度45.2℃
源泉湧出量740リットル/分
加温なし 加水なし 掘削自噴
溶存物質 15520mg/kg 自家源泉掛け流し
浴室:男女別内湯6 露天風呂5
取材日:2016年5月9・10日




これも失礼な話だが、過去の経験からか、国民宿舎の食事には期待してなかった。そりゃぁ高額な宿の高級食材にはかなわないが、このスタンダードなコース料金での夕食に十分に満足したのである。
・・・料理長、コストの制約がありながら、頑張ってるなあ、と感じる。




副支配人(左)と支配人(右)。お二人とも温泉、いや温泉宿に対しての情熱は高い。さまざまな資格をとって、さらに勉強し、ここの湯がどれほど素晴らしいのかを各地域の人々にアピール。その結果、この松代荘の客室稼働率は、年間平均で、なんと86%! この数字、土曜日なら限りなく100%に近い。それほど人気のある国民宿舎になったのである。
(※2018年10月現在、上記写真の左側の女性が支配人です)





5月上旬の取材の翌月、筆者は再度この宿に泊まりに来ている。その理由は、以前に骨折した時々痛む足の古傷が、取材時に湯に浸かってスッキリと癒やされたから。自宅からもっと近ければ、毎週のように通いたいところだ。

ところで、満室が多い土曜日だが、前日〜1週間前に予約すると、運が良ければ空室あり。筆者の再度宿泊(土曜日)はそれを利用。

料金はひとり1万650円〜 (2名1室諸税込)。1名宿泊可。全36室。日帰り入浴:510円 10:00〜22:00(21:30受付終了)

松代荘 公式HP >>


次回、「にごり湯編」の3湯目は・・・

 岩手県 
国見温泉 石塚旅館






[ さらに・・・すぐ近所にある日帰り入浴施設も紹介 ]


風情ある建物である。 熱血な主人である。

内湯建物に隣接する源泉。入浴者は誰でも見ることができる。(見学のみ禁止)

松代荘から直線距離で約100mのところにあるのが、加賀井温泉「一陽館」。以前この温泉地は加賀井温泉と呼ばれていたが、現在は松代温泉としている、がここは以前の名称を譲らない。
ここに来れば主人に会うだろう。そして「初めてかい?」と聞かれ、そうであれば源泉を案内され、湯の説明をしてくれる。これがここの名物でもある。(息子氏の場合もあり)
にごり湯のことを知るには、この温泉は教科書と言える。その理由は・・・行けばわかるでしょう。ぜひお薦め。
なお、主人にはにごり湯という言葉を使わないほうがよい。「にごり湯っていうの嫌いなんだよな」と語った。

入浴料:400円(つり銭のないように)
8:00〜19:45営業(ほとんど無休)





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