文:三橋弘行 写真:坂上修造 取材日:2016年6月30・7月1日
[ モーターサイクリスト誌連載 2016年 10月号]





あきたこまち≠フ田んぼの向こう側を秋田新幹線のこまち≠ェ走り去るのどかな風景、ここは秋田県大仙市の米どころだ。このすぐ近くに強首温泉がある。近隣には花火で有名な大曲、そして江戸時代の武家屋敷風情が残る角館の街、旅心をくすぐる地域だ。





国の登録有形文化財である樅峰苑の建物には、確かに圧倒される。しかし温泉もすごい、と言おうか濃いと言ったらよいか、、、。
強首温泉は昔からあったわけではない。昭和30年代、メタンガスの採掘をしていたら、ガスよりも温泉のほうが大量に出てしまったというのが始まり。この湯は、古代からの化石海水型なのである。その濃さ(温泉の溶存物質)といったら、今までの連載の最高値なのだ。(なので長湯せず、こまめな入浴を)

[ 樅峰苑の湯]
ナトリウム−塩化物強塩温泉
ペーハー7.1 中性 源泉温度49℃
源泉湧出量700リットル/分(最大値)
加温なし 加水なし 掘削自噴
溶存物質 21,580mg/kg 自家源泉掛け流し
浴室:男女別内湯2 貸切り露天2
取材日:2016年6月30日・7月1日




取材に同行した編集部オガワ君の(日焼けした)顔色は絶好調だ。そりゃそうだろう、普段の仕事とはちがい、温泉浸かって酒飲んで旨いメシを食える取材なのだから。
料理はもちろん地元の食材。この一品一品がお世辞抜きで旨い。なかでも珍しいのは、宿の隣の川で獲れるモズクガニ料理(他のコースもあり)。このカニミソ甲羅焼きで、酒が進むのなんの。その秋田の酒が、これまた旨いのなんの。これだから温泉旅はやめられない。






ご先祖が豪農とはいえ、まことに気さくな主人と女将さん。宿の運営は息子さん達を含めたご家族でまかなっている。この広い敷地と大きな歴史ある建物を維持するのはたいへんだろう。そういえば、この屋根の張り替え費用を聞いたら、都会の普通の家の建築費の2軒分以上だった。家を継ぐ、というのは、さまざまなご苦労があるものだ。
なお、「強首」の名の由来を尋ねたら、「この地域は、暴風雨にも倒れにくい強い稲のを持つ旨い米ができる」・・・ということでした。





温泉や料理を楽しむだけでなく、贅を尽くした大正ロマン建築の隅々も必見。なお登録有形文化財で保存品も多く、小学生以下の宿泊は不可。これごもっとも。
料金はひとり1万5810円〜 (2名1室諸税込)。繁忙期以外は1名宿泊可。全7室。日帰り入浴:600円 11:00〜15:00 ※参観料210円で宿の見学可(見学よりも泊まるのがお薦め)


樅峰苑 公式HP >>


次回、「にごり湯編」の5湯目は・・・

 福島県 
高湯温泉 吾妻屋



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