文:三橋弘行 写真:坂上修造 取材日:2016年11月21・22日
[ モーターサイクリスト誌連載 建築編 第2湯 ]






草津温泉のシンボル、湯畑源泉。ここでは湯の花も採取。

湯もみ::ショーとして毎日開催している。

温泉番付というのがある。相撲番付の温泉バージョンだ。
江戸時代の大関は「西の有馬、東の草津」といわれた。当時の最高位は大関だった。そして現在、横綱は「西の別府、東の草津」・・・そう、江戸時代から東の最高位は、ずっと草津温泉なのだ。
でななぜ・・・昔の理由は分からぬが、徳川の将軍家が江戸城まで湯を運ばせたことからも、当時から知名度が高かったのだろう。そして現在で言えることは、自然湧出で日本一湯量が多いのが草津温泉である。日本の温泉は今や人工的な掘削が主流だ。
また、この温泉地には昔から多くの有名人が訪れている。その名は湯畑を囲む石塀に刻まれているが、中にはジョークもあって面白い。
♪草津よいと〜こ〜 いちど〜は〜おいで〜





山本館:湯畑の周りに近代的建物が並ぶ中、木造3階建て(やぐらを含めれば4階建て)の宿は存在感あり。創業は幕末で、現在の建物は昭和3年頃のもの。
外観は木と白壁で落ち着いた雰囲気だ。寺社建築で見られる曲線を描いた唐破風(からはふ)様式の重厚な玄関を入りチェックイン。そしてピッカピカに磨かれた建築当時のままの階段を上がれば客室。










あまり食材に恵まれていない温泉地、と宿の主人は言う。確かに海に面していない群馬県だし、名産と言われるほどの肉や野菜も聞かない。しかしそこは料理の工夫でカバーしているのが見てとれる。十分に満腹。





宿の湯は100mほど離れた白旗源泉から引湯している。それは源頼朝が見つけて入浴したと伝えられる。白い旗は源氏のシンボルカラー(赤は平家)、だから白旗。その源泉を歩いて見に行けば無色透明。しかし湯船に注がれるうちに乳白色と変わる・・・強い酸性にイオウたっぷり、なんだか身体にパワーが湧き出てくるような湯だ。

[ 山本館の湯]
泉質:酸性・含硫黄−アルミニウム−硫酸塩・塩化物温泉
ペーハー2.0 強酸性 源泉温度53.6℃
自然輸出 白旗源泉 源泉引湯量 約35L/分
加温・加水なし 溶存物質 1490mg/kg
浴室:男女別内湯2
取材日:2016年11月21・22日





5代目主人が語った。
「ほんとは跡を継いだ時に鉄筋に建て替えようと考えたけど、出遅れまして。でも今思うとこれで良かったのかもしれません」……そうですね、もし出遅れなかったら、今の湯畑の景観には風情ある木造の宿がないわけで、さらに建築編として取材に訪れていないわけで。
木造宿を維持してゆくのは苦労が多いだろう。しかし、この草津温泉にいつまでも残していただきたいものである。





草津温泉には6つの源泉がある。山本館の白旗源泉はいい湯だが、そのほかの5つの源泉外湯巡りもぜひされたし。また、湯もみショーの会場建物にて、夜には『温泉らくご』も毎日のようにやっている・・・千円の娯楽、これまたよし。

料金はひとり1万7400円〜(2名1室諸税込)。全11室。一人宿泊は休前日以外ならOK。立寄り入浴:1000円 11:30〜15:00

山本館 公式HP >>

次回、「建築編」の3湯目は・・・

 静岡県湯ヶ島温泉 
落合楼村上


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