文:三橋弘行 写真:坂上修造 取材日:2017年5月7・8日
[ モーターサイクリスト誌連載 建築編 第4湯 ]







城崎温泉は平安時代から知られる、およそ1400年の歴史があるそうだ。それ以来、人々は外湯につかって温泉を楽しんでいた。宿に内湯ができたのは昭和31年に始まった集中配湯≠ニいう複数の源泉を一つのタンクに集め、58℃の湯を各宿に供給するようになったから。

城崎の温泉街の中央には、柳の木を両岸に従えた大谿(おおたに)川が流れ、架かる数本の橋は石造り。ユカタ姿でカランコロンと下駄の合唱、この風情がたまらなくいい。ここに来たなら、まずは7つある外湯巡りを楽しもう。一つ一つ個性ある建物と湯船、身も心も温まる。







300年続く老舗旅館の『三木屋』、文豪・志賀直哉お気に入りの宿である。外観は限りなく昔のままだが、玄関に入って、まず目に飛び込んでくるリニューアルされたラウンジからの美しい庭の風景。その横には約250冊もの本を揃えたライブラリー。ユカタを選ぶコーナーの演出も見事だ。なお全客室には近代化したトイレも備える。古き良き風情を残しながら、今の時代に合った居心地の良さも取り入れている。





この地域は松葉ガニが名産で、漁期(11月上旬〜3月中旬頃)ともなれば温泉とカニが同時に楽しめる。特に津居山(ついやま)ガニは近くの津居山港からの松葉ブランドガニで、この宿でもぞんぶんに味わえる。(けっこう値は張るが、まちがいなく美味)
取材時は禁漁期間のため松葉ガニは味わえなかったが、日本海の幸や但馬(たじま)牛など盛りだくさん。老舗旅館だけあって、その盛り付けもなかなかのもの。





歴史ある古い木造宿だから浴室も風情のある古さか、、、と想像していたが、まったくそうではなく2つの内湯ともに清潔で爽快。城崎温泉は集中配湯のため、どの宿も同じ泉質だから、浴室は各宿で個性的に工夫されているようだ。取材日は5月上旬、ガラスの窓越しに咲く満開のツツジが湯船に映る美しい光景だ。

[ 三木屋(城崎温泉)の湯]
泉質:ナトリウム・カルシウム−塩化物温泉
源泉本数(集中配湯):4 動力ポンプ湧出 1350 L/分
源泉温度:51.8〜75.5℃ 混合配湯温度:約58℃
ペーハー:6.9 中性 溶存物質:4308mg/kg
主に循環ろ過 減温の為の加水あり
[三木屋浴室]:内湯2 家族風呂内湯1
取材日:2017年5月8・9日





三木屋10代目の35歳(取材時)の主人。いやぁお若い。
「この仕事を始めてから趣味として旅行に行こうと決めました。気になる宿に泊まって参考にさせていただいて。今までに60軒以上の宿に泊まりました」
他の宿に客として泊まれば、今までの三木屋に無い何かに気づき、それをアレンジした自分流のアイデアが生まれる。若い真面目な勉強家である。





昭和に入ってすぐの1927年建築の木造3階建て。古き良き時代の面影をたっぷりと残しつつ、リニューアルによる居心地の良さも魅力的。主人のおもてなしが各所に表れている国登録有形文化財の宿。城崎温泉に来たなら外湯巡りも忘れずに。

料金はひとり平日1万6550円〜 (2名1室諸税込 ※2017年取材時料金)。全16室。立寄り入浴無し(外湯にどうぞ)

三木屋 公式HP >>


次回、「建築編」の5湯目は・・・

 鳥取県 三朝温泉 
旅館 大橋


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