|
◆牛革…革のチャンピオン |
「本革」という表現は以前ほど使われなくなったものの、「革」の文言から思い浮かぶのは、やはり牛革。そう言えるくらい認知度の高い革素材である。革は食肉の副産物であり、牛肉は世界規模で消費量が多いことが牛革の供給量に繋がっていることから、無駄にしないためにも積極的に活用していくべき素材であろう。
牛は体が大きいため大判の原皮が得られ、動き回る馬や鹿と違いおとなしい性格で傷も多くはなく、丈夫でクセも無く加工しやすい。家具にも服にも鞄にも靴にも、もちろん手袋にも。これほど広範囲をカバーできる革は比肩するものが無く、革素材における永遠の総合チャンピオンと誰もが認める存在、それが牛革である。 |
|
|
ペアスロープのグローブ用牛革は、選りすぐった良質な原皮にオイルを染み込ませ、柔らかくしなやかに仕上げて使用している。革らしい剛性感ある使い心地が頼もしいグローブだ。
牛革は良質な原皮を安定して入手できることから1点1点の革の表情や素材感にばらつきが少なく、ベーシックモデルとしてゆるぎない存在。生産性に優れ、製品価格も鹿革モデルより身近である。
例えば、用途別(3シーズン+夏用メッシュ+防寒)のグローブを揃える場合を比較すると、牛革モデルのSG-7+MG-6+PG-30が35,500円に対し、鹿革の馬鹿SPロング+鹿メッシュ+PG-29Dでは49,000円(いずれも税別、2019年10月価格)となる。
関節や発汗量が多く、仕事量の多い手に直接着けて使うグローブは消耗が早いため、ヘルメットと同程度の周期での交換が必要となる。優れたランニングコストは長期的な良い環境の維持にも貢献する。 |
◆製法…どこが違うのか |
なぜ日本製のグローブが優れているのか…これはみなさん共通の疑問でしょう。簡単に答えるなら、キャリア。手袋づくりに携わった経験の蓄積量の違いである。もちろん海外の工場でも、経験を積んだ職人は腕を上げるが、技術が上がれば工賃も上がってしまうため、コスト圧縮を目的とする海外生産の趣旨とジレンマが生じる。そのため経験の浅い縫子さんが縫っていることが多く、熟練職人が作り続ける国産品との差はなかなか狭まらないのだ。
国内の熟練職人が持つ正確な縫製技術を生かした作り方が、「外縫い」と「ガンカット製法」である。 |
|
|
◆外縫い |
グローブをぐるりと一周する縫い合わせを外側にすることで、縫いしろが手に当たることがなく快適な装着感を得ることができる。ただし、外からは見えない内側を縫うため多少のミスはごまかしが効いてしまう「内縫い」よりも正確な縫製が求められ、きれいに仕上げるには長年の経験が必要となる。市販グローブのほとんどが内縫いなのはこのためで、大量生産ができる大規模な工場を回せるほど熟練職人が多くはないのだ。等間隔で整然と並ぶステッチは外観の美しさだけでなく、正確なサイズ出しと均等な負荷配分にも貢献。
縫い目が見えるので、糸が切れても補修しやすい利点もある。なお、レーシンググローブは例外で、経年耐久性よりもサーキットでの転倒時の糸切れ防止を目的とし、革を薄くして内縫いで作られることが多い。 |
|
|
◆ガンカット製法 |
平面のパーツを表裏で最中合わせにするのではなく、指の腹をトンネル状に包む構造のパーツ分割で立体縫製としている。縫製部分を減らして極力大きなパーツで形成することで、自然な使用感と操作性に寄与する製法。ペアスロープのグローブは全製品が甲のパーツを大判の一枚革で裁断されており、使用するごとに革が伸縮を繰り返すことで手の形を記憶して行き、数種のサイズでは対応しきれない個々の手に合うグローブへと変化する。パーツを細かく分割すればコストは下がるが、繋ぎ目ができるとせっかくの革の伸縮性を損ねてしまうのである。 |
|
|
|
クセが無く素直な性質で、様々な加工がしやすいのも牛革の良いところ。 |
|
|