文・:三橋弘行 [2008年5月30日 送信]




 こうして2008年3月1日に発売した極上のライディングブーツ、しかしその販売価格の決定は2月に入ってからだった。コストのことを考えずに好き放題に作ってしまったブーツである。結果、安価であろうはずがない。
 二輪業界、いやリーガルCo.が流通する一般小売業界も含めて、3万円の価格を超えてしまうと、いちじるしく販売量は低い。しかしこのブーツは3万円台のシロモノでもなく、もっとずっと上の作りである。
 価格決定は、通常コストからはじき出す。それは生産コストだけでなく、数々の型代やサンプル代、そしてそれらの開発のための、もろもろ経費を加えて。・・・そんな計算がイヤになってしまった。だから無理矢理5万円を切る。ブーツの作りに手を抜いていないが、価格決定はけっこうテキトウであった。

 しかしこれほどの素晴らしいブーツが出来上がったが、はたして売れるのだろうか、不安だらけであった。5万円を切ったとはいえ、4万円台のブーツはレーシング系以外、皆無に等しい。その価格帯の靴を販売することは冒険と言えるのだ。さて、、、。


神妙な顔つきだが心は笑顔の花田氏:新潟工場にて


 結論から申し上げよう。R-01/02合算で約400足作ったブーツ。3月1日の販売開始から半月後には大きなサイズが欠品し、4月に入る頃には半数が売れたのである。
 過去に弊社では、ひと月にこれほど多い数を販売したことがなく、たった1店舗販売としては驚くべき数字。しかも、高額なブーツなのでなおさらのことだ。
 これにはリーガルCo.の皆さんも、いっしょになって喜んでくれた。ここまでやったのだから、きっと売れる、と信じていたそうだ。不安を持っていたのは筆者だけだったのかもしれない。






 R-01/02のブーツをお買い上げいただいたお客様の年齢層は、予測していたように高い。とはいえ、大型二輪を楽しんでいる平均年齢は40歳になろうとしているのだから、当然、20代は少ないが。

■購買年齢層:20代・10%、30代・40%、40代・30%、50代・20%
■販売モデル比率:R-01対R-02=10対9(差は少ない)
■販売カラー比率:ブラウン対ブラック=3対2(これは意外だ)

 発売後2ヶ月間の統計。ややアバウトではあるが、おおむねこんな感じである。また、上記以外に気づいたことは、“リーガルブランド”の靴を所有している、または以前履いていた、、、は70%ほどおられる。これはいかにリーガルブランドに信頼感を持っているかの数字であろう。ありがたいことではあるが、これではいけない。これからは“ペアスロープ”というブランドに信頼を頂かなくてはならないのである。そのために、よりいっそうの努力が必要なのだ。




 このブーツ作りには大きな目的があった。ひとつには弊社25周年ということもあるが、それはたまたま25年目の年に発売したにすぎない、いわば結果論だろう。そんなインチキ臭いことではなく、もっと大きな目的・・・それはこのブーツに注目していただく機会に、ウェアの着こなしを考えてみませんか、そしてもっとカッコいいバイク乗りになりませんか、と。
 “足もとから見直そう” である。

 靴はその人の性格を表すとも言われる。どんなにカッコいい高価なウェアを着ていたところで、靴がショボければ体裁だけかな?な〜んて、台無しなのだ。きっと足もとをすくわれることだろう。そうです、足もとがすべて、というのは大げさだけど、あなたをしっかりと語っているのです。

 こんなに長い製作記ストーリー、読んでいただき光栄です。ありがとうございました。
おわり。

協力:株式会社 リーガルコーポレーション
    チヨダシューズ株式会社
    (リーガルコーポレーション製造子会社)
撮影:坂上修造・三橋弘行







 “憧れのブーツ製作記”は終了したが、バイク乗りをカッコ良くする靴作りがこれで完成したわけではない。2008年5月現在、まだまだつづいているのである。そして五月晴れのとある日、いつものようにリーガルCo.の花田氏が弊社にやって来た。


花田氏 「こんどは僕がペアスロープさんのイメージを思い、作ったブーツですよぉ。つま先の太い糸は、なんと手縫い! 靴底はクレープソール! ど〜です、カッコいいでしょぉ〜」
筆者 「な、なんだぁ〜? なんで白なんだぁ? それに手作り(手縫い)のソフトクリームクレープって、甘ったるいじゃないかぁ!」


花田氏 「なんでそんな発想しますかねえ? これはねっ、女性ライダーを意識して作った試作品です! だって三橋さん、自分のばっかしで、奥さんや娘さんは他メーカーさんのを履いてるんでしょっ。次はしっかりとしたカッコいい女性のブーツを作らなきゃだめですよぉ!」
筆者 「そっ、そうかぁ・・・ でもなんで25cmって俺のサイズなんだ、これ」
花田氏 「いやあ、とりあえず履いてもらおうかと、、、」
筆者 「ヤダネッ!・・・ ・・・」




 次の“製作記”は、女性用を優先順位とした、ちょっとカジュアル路線なライディングブーツとなりそうです。そして弊社デザインによるR-01/R-02製作とは異なり、リーガルCo.の花田氏デザインによるブーツも試作進行中。
 ということは、筆者と花田氏のデザイン競走となるわけで、つまり、戦いはまだまだ終わらない、というわけです。

 靴作りは時間が掛かります。特に女性用となれば、男どもに分からないことがたくさんあります。発売目標は2009年の春ですが、さてどうなることやら。 今後は彼らと飲んでる時間より、打ち合わせのほうを多くするよう心がけます。 ではごきげんよう。

でもやはり、ちょっと一杯の時間のほうが長くなってしまうものです。[このページを送信した2008年5月30日の晩、リーガルCo.本社近くの、もの凄く安くて旨い居酒屋にて]

[ もし目標どおりの進行なら、2009年正月あたりから“製作記”をご案内、ご期待下さい。]


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