上の写真は、ウインターグローブを分解したもの。
 今は、どこのメーカーのウインターグローブも多層構造になっていて、基本的には、大きく一番外側のシェル(革)、フィルム、インナーと分けることができる(一部の廉価なアイテムはフィルムが入っていないこともある・・・)。
 

それでは、3層それぞれの役割とは如何に・・・


シェル

最も外側で外気と触れる部分。ペアスロープでは基本的に革を用いる。革の持つ保温力を生かすという意味もあるのだが、総革なのは主に安全のため。このシェルが生地や合皮だった場合、手を本当に守ることができるだろうか。PG-29Dはニュージーランド産鹿革、PG-29は国内産ソフト牛革、PG-30/33はオイルドステア牛革を用いる。



フィルム

極薄のフィルム状の素材を手袋の形に溶着したもの。現在では透湿性能と操作性を兼ね備えた「サイトス」フィルムを選択している。基本的にウインターグローブでフィルムを使うのは、「防風」という機能を生かすため。これが無いとシェルの縫い目の隙間から、スースー冷たい風が入って来る。風や水は通さないが、水蒸気は通すため、手が蒸れることは少ない。



インナー

手の皮膚と触れあう起毛布(黒い生地)と、ウレタン層が組み合わされるインナー。この部分で貯められた空気層が断熱材(デッドエア)となって、冷たい外気から手を守ることができる。起毛布をフカフカにして、ウレタン層を厚くすれば、デッドエアは多くなり、それに比例して保温能力は増すものだが、指は当然曲げにくくなっていく。PG-30/33は、ウレタンに輻射熱(放熱)を反射して熱移動を防ぐサンステートを貼り付けている。




3つの品番、4つのアイテムの違いとは
 2007年のアイテムとしてPG-29、PG-30、PG-33、そして鹿革モデルとしてPG-29Dがラインナップされた。モデルの違いはすなわちシェルとインナーの材質の違いである(フィルムは同一)。
 保温層、保温材を多くすれば、操作性が悪くなる。重ね着をすればするほど動きにくくなるのと同じ理屈。その逆もしかり・・・。下のグラフを見てモデルを選ぶ参考としてもらいたい。
 ただ、いずれのモデルも高いレベルでの操作性と防寒性を兼ね備えていることは間違いない。
 
グリップヒーターをご使用の方は、PG-29(D)・PG-30をおすすめする。
防寒性が高いということは、つまりヒーターの熱も伝わりにくいということ。



サイズの選び方とは
 ウインターグローブは、Lサイズの手の人が2サイズ下のSサイズのグローブに手を入れることができる。
 でもこれは間違った選び方。インナーに使われているウレタン層を潰して手を入れていることに他ならない。”デッドエア”層が無いのだから、暖かくない。しかも窮屈になって手が圧迫されて、血流が悪くなり、手が冷たくなってしまうというもの。
 下の写真のように指先に1cm近くの余りがあって正解。よく冷える指先を、しっかりと断熱材のウレタンで包んでいることが肝心。「スイッチ操作がしやすいから」と、間違っても小さいサイズを選ばない方がいいかも。
 


おまけ
 ペアスロープのウインターグローブは、総革のクラシックなイメージによって、ハイテク素材を使ったグローブに防寒性能が劣るのではないか・・・という指摘をよく耳にする。
 決してハイテク素材が嫌いなワケではない。良い物は積極的に使いたいと思っている。いくらコストが高くついても・・・。
 だから、グローブ総合メーカー時代、素材メーカーから提案される新素材を使って、グローブを作って、真冬に走り込んでテストを繰り返したものだった。ライディンググローブだけじゃなく、スキーやスノボ、冬の海難救助に使われるプロのグローブまでも・・・(たぶん、これだけ数多くのグローブを実車走行テストできた人はいないと思う)。


PG-29D

 でも、そこで行き着いた結論がある。
 暖かさは、”デッドエア”層の厚さに比例するということ。曲げ伸ばしする指をしっかり空気の層で覆うことのできるグローブがすなわち暖かいグローブなのだ。(サンステートは、デッドエアの外側に貼り付けることで効果を発揮する。)
 「眉ツバ」物の新素材・・・つまり、効果・機能がありそうでも、実際に走ってみても体感できない素材は、今後も使うことが無いだろう。
 今のウチのグローブは、そういった厳しい素材選びの中から選ばれたモノから組み立てられているということになる。決して目新しくなくても・・・。





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