新しくペアスロープのラインナップに加わったPG-02と、従来モデルと基本コンセプトは同一としながらも、新しく仕立たPG-12。これらのグローブの甲側には大きな一枚の牛革が用いられています。「シンプル」であることを突き詰めたこれらのグローブの魅力をお伝えします。


魅力その1 手の寸法の変化に柔軟に対応できること。

 手の各部位を詳細に測っていくとわかることなのですが、手を握っている時と伸ばした時では、当然のように寸法は変わるものです。

橙色で描いた部分の距離は、手を握るにつれて肉が寄り、太くなっていきます。手のすべての部分の寸法がこのように握ることで変化していきます。

 このことから、手を伸ばした時ならずも、握った時の寸法変化に合わせて素材が伸び縮みするか、はたまた寸法が長くなった分を逃がすグローブの設計がライディンググローブでは必要になります。グローブの甲側を大きな一枚革で作るなら、革本来の横伸びを上手に使って、手の動きと革の伸びとが連動するグローブを作ることができます。

 もし仮に、この部分を縫製でつないでいると革が全く伸びず、フィット感の無いグローブになるでしょう。また、革以外の伸びの無いパーツを甲側に用いる事も同じ様な現象が起きると言えるでしょう。

(ペアスロープ製のグローブは、いずれのモデルも甲側に一枚革を用いています。甲にデザインのあるタイプは、革の横伸びを生かすことができるよう設計されています。)


魅力その2 良い具合になじむこと。

 人によって、手のひらの大小、指の長短、拳回りの長さなどは全く異なります。手袋を作るにあたって、手の数十とも言える場所を測定して、その中間値をMサイズと規定しています。それでもグローブのサイズをS〜LLまでの4サイズとし、この中から手に合う物を選ばなければならないのには少々無理があるかもしれません。
グローブの革は、汗や水分を含み、そして乾く過程で収縮します。仮に一枚革なら、橙色の矢印の部分が、ほぼ均等に収縮します。そして使っているうちに、人の手に合うようになっていきます。

 革グローブの良いところは、人によって違う微妙なサイズ違いを補ってくれることです。革は伸縮する特徴を持っていて、圧力がかかるところは少々ですが伸び、逆にそうでない所は縮みが発生します。なるだけ大きな革を用いることで、革の収縮率が一定となり、人の手に被さる皮膚のように、次第になじんでいきます。仮に異なる部位で裁断されたパーツをいくつもつないだ革グローブなら、こうはいかないはずです。

(それゆえグローブは、指先に5〜10ミリ余裕があるものをお選び下さい。革は伸縮しますが、どちらかというと縮みの方を上手に生かすことで、手にフィットするグローブになっていきます)。


デメリット コスト高であること

 甲側に何も縫わないので、縫製の手間は少々減りはします。ですがそれ以上に、革のコストがかかってしまいます。目立つ傷や汚れを外し、風合いの良いシボが出ている部分を選んで裁断しなければなりません。革のパーツが小さければ、裁断できる部位も増えるのですが、大きくなると使えずに捨てる部分が格段に増えていきます。本当言うと、甲側は一枚革で無い方が、製作サイドとしては、はるかに楽ですし助かります。

 しかし、PG-02とPG-12は、安全性・操作性、そして良好なフィット感を兼ね備える使い勝手の良いグローブであるがために、あえて甲側のデザイン的な要素を排除して、設計したのでした。




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