写真はPG-29D
驚きの柔軟性を誇る鹿革を用いたモデル

 季節が秋から冬へ進もうとしているのを感じるこの頃。朝晩の冷え込みには、ウインターグローブが欠かせなくなりました。
 でも、ウインターグローブって、案外誤解の多いアイテム。決してどう使おうと「間違いじゃないんですけど・・・」、意外と知られていないウインターグローブの常識?非常識?をお届けします。


ウインターグローブの基本構造:左)革製のシェル 右)インナーに防水透湿フィルムが被さった状態


 ウチのグローブも含めてですが、意外とウインターグローブって普及度が高くなくて、「冬には乗らない」とか、「3シーズングローブで頑張っている」方々も。中には「えっ!」と、驚きの使い方で、冬を乗り越えてきた方も・・・。

 そりゃ、どうグローブをご利用いただこうとご自由なんですが、われわれ作り手の話も、少し聞いて頂けると嬉しいかも・・・。グローブの使い方・選び方の参考になりましたら幸いです。



??? 冬は普通の革製グローブにインナーグローブを入れて使っています。

 昔々、まだウインターグローブを買えない頃。僕もそうやって寒さをしのいでいました。インナーには軍手や毛の物、時には発熱素材の物なんかも試したことがあります。でも、どうやってもあまり暖かくないんですよね・・・。
 それは、肝心な断熱層(デッドエア)をほとんど作れないため。瞬間的には、レバーなどの冷たさが伝わるのに時間がかかるので、暖かい感じがするのですが、これも時間の問題。
 レイヤーでグローブの握りが窮屈になって危険だし、脱着だってかなり面倒。血行だって悪くなるので、手に暖かい血が巡ってこなくなります。
 一度ウチのPG-29と暖かさを較べてみて下さい。昼間走行向き(防寒性重視では無いタイプ)のモデルでも、そこは防寒グローブ。インナーグローブとの差は歴然です。


??? 冬はゴム手袋にインナーグローブを入れて使っています。

 これは、僕もかつて一度だけやってみたことがあります。大きめのゴム手袋を使うと、風も入ってこなくて、デッドエアもため込むことができます。しかも完全防水!! 理屈的には十分な暖かさを作ることができます。
 しかし、致命的な欠陥が一つ。手から発散される水蒸気(汗)の逃げ場が無いこと。いずれインナーに溜まった水分が、序々に冷えて手の体温を奪うことに・・・。ネオプレーンゴム製のグローブも、保温能力は高いのですが、湿気の逃げ場が無いと、同じ結末になるんです。
 冬用グローブなんですが、意外と発汗対策も大切なんです。
 ウチでは、すべてのモデルに透湿性の高いサイトス
(R)を使っています。
 


??? スキー用・スノボ用のグローブを使っています。 

 基本的に、スキー・スノーボード用グローブとオートバイのウインターグローブは、ほぼ同じ作りをしています。ただ、前者が激しい運動に使われるのに対して、オートバイは動きが少なく、絶えず冷たい風で冷やされ続けます。
 必要とされる防寒性能が全くちがうため、スキー・スノボ用では、相当寒く感じるかもしれません。
 更に、多くのスキー用グローブは、ストックを握るために指をあらかじめ曲げていることが多く、オートバイ用としてはレバーを握るため、手を開くことが困難な場合があります。
 


??? 衣料品店で買ったグローブを使っています。 

 「間違いじゃないんですけど・・・」、歩くときに使うグローブと、オートバイ用とでは全く求められる防寒性能が違います。防水・透湿フィルムも入っていないので、仮にデッドエアができていても、走り出すと縫い目から入る冷たい風が、これらを壊すことになります。
 また親指の位置の違いがあり、ウチのグローブは、最初からグリップを握る形状になっています。こうなってないと、絶えずグリップを握る形にするのに力が必要になります。グリップを握る部分が繊維だと、手の滑りも発生して危険です。
 そして・・・仮にアスファルトと喧嘩した場合を考えてみて下さい。あなたのグローブは、それで大丈夫なのでしょうか?

 




次は、ウチのグローブを使っている方の話。 



??? 「防水なんでしょ・・・」だからレイングローブとして使っています。 

 確かにウチのグローブは「防水」です。例え雨に降られたとしても、水が手に侵入することはないでしょう。PG-29で使うソフト牛革は、撥水性を持たせていて、少々の雨なら水滴をはじき飛ばします。
 でも、革がビショビショに濡れてしまうと、防水透湿フィルムの作用で、インナー側に水蒸気が入ることになります。こんな経験は無いでしょうか? 「濡れたレイングローブやウインターグローブをはめる時、中は濡れてないんだけど、何か”しっとり”と湿気ていて、冷たくなっていたこと」。
 インナーまで湿気てしまうと、今度はなかなか乾きにくくなって、ニオイなどの発生の原因になったりします。
 あくまでも「防水」は一時的な機能。本格的な雨には、雨天用グローブの使用をオススメします。

 


??? ウインターも丸洗いできますよね。

 3シーズングローブは、時に丸洗いすることをオススメすることもあります。でも、ウインターは別。前項でも示したとおり、防水透湿フィルムのせいで、なかなか中まで乾かすことが難しいです。脱水機にかけるとフィルムは壊れるし、ご家庭での丸洗いは、困難かもしれません。
 ウインターグローブは、中での発汗も少ないですし、インナーがあるため直接革に手の汚れが付くことは少なく、3シーズンほど革の傷みは少なくなります。ですから丸洗いする必要は少ないでしょう。シェル(革)の汚れは、固く絞ったタオルなどで拭き取って下さい。
 それでも、汚れやニオイが気になってきたら、インナー交換の時期です。詳しくはお問い合わせ下さい。
 


??? 指先の操作性を重視したいんですが。 

 大抵の方の場合、ウインターグローブをはめると、指先が1cm以上余っています。指先を使うので、先をカットするオーダーはできますか? という質問を受けることがあります。
 もともとウインターグローブの指先には1cm以上の余りがあるように設計していて、それは最も冷えやすい指先を十分なデッドエアで包めるようにしているからです。
 確かに指先は使いにくいかもしれませんが、すべては手の保温のため。操作性と防寒性、両方を追い求めることは困難なのかもしれません。





ウインターグローブの詳細ページはこちらから。

写真右 撥水性のあるソフト牛革を用いたPG-29
写真左 柔軟性の高い鹿革を贅沢に用いたPG-29D




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