グローブを作り出すには技術が必要です。例えば縫製なら、一二年も訓練を積めばそれなりの物が縫えるものです。しかし「技術の向上には終わりが無い」と職人は言います。キャリアの浅い者が作る物と10年・20年選手が作った物には、明らかな差が存在しています。
 ここでは経験豊かな職人が作るグローブにしか存在しない魅力を取り上げていきます。

ステッチの美しさについて

 「縫えていればそれでいい」的なグローブと、操作性とフィット感、加えて美しさを求めるグローブの縫製は大きく異なるものです。

ミシンの音で、キャリアの差がわかります。「トントントン」と一針づつミシン針を落としていくのが初級者。でも10年もグローブを縫い続けると、「ダー・ダー・ダー」というスピード感がある連続音に変わっていきます。
ステッチが、グローブの縁に沿って等間隔で、しかも真っ直ぐに揃っていることが必要です。直線だけでなく曲線部も上手に曲げなければなりません。

 あなたの手元にあるグローブのステッチを見てください。「縫製が落ちている」もの(本来あるべきステッチの位置から脱落しているもの)は論外・・・としても、縫い代の距離が変わったり、妙なところでジグザグになっていたりしていませんか?

 今のミシンは一針ずつ針を落とすことができ、初心者でも丁寧に針を進めて仕事をすることができます。でもその工程で、「ちょっと(縫い代から)浅いかな・深いかな?」なんて考えてしまうと、その迷いがステッチとなって現れ、ジグザグになってしまいます。ベテランならそんな迷いも考える暇もなく、直線なら「ダダダーー」と一気に縫い上げます。このスピードの差がステッチの美しさの違いにつながります。「丁寧に縫えばいい」だけのものではないのです。

人差し指・小指の曲がり方について

 手を曲げてみればわかることですが、通常人差し指と小指は真っ直ぐに曲がっていくのではなく、少し内側にネジれて曲がっていきます。

グローブの人差し指と小指が内側に少しネジれているのがおわかりいただけますね。手を握ると操作性の良さが実感できることでしょう。

 実際の手の動きを、グローブで忠実に再現するなら、より操作性の高いグローブになると言えます。ファッション用やスキー用グローブなら人差し指と小指を内側に曲げたりはしないのですが、ライディンググローブは高度な操作性を要求するため、形の設計だけでなく、縫製時に意図的に、この二指を内側にネジるよう、職人に要求しています。実際、縫製時にかける革への微妙な力加減一つで、指は内に向いたり、外に向いたりするものなのです。





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