2013年9月1日 担当 屋島工房 尾原

10年ほど前に、カタログに掲載されていたキップグローブ。希少な革であるがゆえ、原皮入手が困難となり、いつしか生産中止になったモデルです。しかし、年々再生産のご要望が強く寄せられ、キップを使ったグローブを復刻することになりました。



 キップとは、牛革の一種。主に北米で生産される皮革に付けられる名称です。牛革には、成長にともなう大きさにより、それぞれ名称が付けられていて、キップは子牛と成牛の中間の大きさの革の名称で、おおむね生後10ヶ月前後の牛が用いられています。

 成長過程にある若い牛であるために、その銀面(表面の光る部分)はキメが細かく、繊維は緻密に絡み合っているので強く、かつ柔軟性に富んでいてしなやかな操作感が魅力です。もちろん牛の成長に伴う、革のクセが付いていないため、使い込んでいくほど手に馴染んでいくという特徴もあります。

 こうやって書くといい事ばかりなのですが、世界的に牛革の需要が増しており、安定して入手するのが困難になっています。

 その昔作ったキップグローブが、そろそろ寿命になる時期を迎え、「前使っていたキップが良かったのに、今無いの?」とお問い合わせを頂くことが多くなりました。

 そこでタンナーに協力してもらい、キップグローブの復刻をすることに。新しいプレミアムレザーグローブの歴史が、ここからまた始まります。

 昔のモデルと同じく、指のセンターにキップグローブならではのステッチを入れました。指が細く長く、スマートに見せるための工夫です。  

手口部分は、親指の下側をスリット加工にしました。ベルトは、手の甲をアクセル時に反り返す時にじゃまにならないよう、より小さめな形状に変更しました。

手前が北米産キップ。奥側がニュージーランド産牛革。ニュージーランド産は、おおむね一般的な成牛の2/3の大きさなのですが、キップは、そのさらに半分の大きさになります。大きさを見れば、まだまだ子どもの牛であることがわかります。 

 キップグローブは、単なる若い牛革と侮ることなかれ・・・。

 目が詰まった繊維に、オイル分をしっかりと染み込ませており、しっとりとした中に「シャキッ」としたコシのあるグローブに仕上がりました。鹿革とは一味違う感覚、ぜひ一度お試し下さい。
 
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