「革」というと、伝統を大事にし、変化を嫌う「頑固者」というイメージを持っている人も多いのではないかと思いますが、意外にも皮革工房では伝統的な物は大切にしながらも、先進的な材料と技術を加工に取り入れ、その技術は、常に変化し続けています。

「素上げ」タイプの表面加工について

 ペアスロープ四国手袋工房では、「オイルド牛革」が用いられています。これは牛革にたっぷりとオイル分を含ませ、雨や汗に強く、しっとりと艶やかに革を仕立て上げる加工のことを言いますが、実は秘密はこれだけではありません。

 革は、鞣(なめ)しの段階で染料に漬け込まれ色が付けられるのですが、銀面(表面)を加工せずに、そのままで出荷されるものを「素上げ」仕上げと言い、銀面に塗料を塗布したものを「ラッカー」仕上げと言います。通常、グローブに限らず衣料や小物に使われている革は、ラッカーによる表面加工がなされています。

 「素上げ」加工は、独特の落ち着いた風合いがあり、触感が良く伸縮などによる表面の傷みが少ないのが特徴で、高級な表面加工方法とされていますが、一方で若干の色落ちや色あせといった弱点もあります。

姫路にてグローブ用の鞣し・染色、そして表面の加工が施されていきます。用途に応じて塗料や油分、薬品の量を使い分ける門外不出の「レシピ」が工房の持ち味であり、職人の腕の見せ所でもあります。

 四国手袋工房で用いられる革は、「色落ち」や「色あせ」といったデメリットを可能な限り廃した革が用いられています。これは「素上げ」の高級感を残しながらも、表面を若干のラッカーで整えることで、両方の仕上げの良いところを取り入れることができます。それゆえ「素上げタイプ」と名乗っています。
(ご注意 染料を用いた製品である以上、完全に色落ち・色あせが無いというわけではありません。多少の経年変化は革製品を使い込むことで生じる「味」とお考えいただけますと幸いです。)

皮革には、鞣しの段階でオイル分が十分に浸透しており、オイル分でしっとりとかつ、ふっくらと柔らかく仕上がっているのが「オイルド」の特徴でもあります。表面には更に水を弾くよう、フッ素等の撥水剤で加工しています。

 ライディンググローブは、汗を大量にかき、紫外線に当たり、汚れが付着しやすい最も過酷な環境化で使われます。しかも転倒時には手を守らなければ装着している意味はありません。そんな高い耐久性能と、乗車時の操縦性及び革との触感など、ライダーの快適性能をも満たさなければなりません。他用途の皮革に求められる要素より、はるかに高いハードルが待ちかまえているのです。

 ペアスロープ四国手袋工房で用いられる皮革は、これまで他用途に販売されたことのある、いわゆる「既製品」の革とは異なります。スタッフが望む理想の革を作り出すために、試作品を何度も作り、実際にグローブを作って試乗し、そしてまた革工房の職人と打ち合わせる中で、ようやく生み出されたペアスロープ四国手袋工房しか扱うことのできないオリジナルなのです。

 そして改良は今も進んでおり、さらにグローブ用の革を進化させるべく、皮革工房と手袋作りの工房とのやりとりは、今もなお続いています。





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