ほとんどの靴や鞄の革製品の場合、裏(床)を見せることなく、生地や別の革で覆うことが多いものです。グローブでも、肌触りの良い繊維生地(裏地)を貼り付けて、革と手を直接触れないようにすることが多いです。
これは、ほとんどの場合が、縫製部分が直接手に触れないようにするための工夫です。縫い目のゴロつきを少なくするには有効です。でも、ウチで作るグローブはそんな必要がありません。手の甲は接ぎの無い一枚の革でできているからなのです。
作り手として、今でも見た目クラシックなグローブ作りに、こだわっているのは、裏の毛の部分を肌にまとってもらい、その包み込むような素材感を感じてもらいたい・・・そんな理由もあるからです。
鹿の皮膚の真皮にあたる部分を切り開いて、起毛繊維状になっているのが上の写真です。鹿革だと裏は高級なベロアのようになっていて、毛が細く手で跡が付くほど。もちろん実使用では、手と革が一体化し、中で滑ることもなく、肌触りも操作性も快適なものになります。
鹿革の場合、厚みが1.4ミリ以上あります。通常の革グローブが1ミリ以下の革を使いますので、補強の無いたった一枚の革でも擦過等のアクシデントに十分耐えられると思います。
厚みのある真皮層の部分を、薄く削いでいきますので、おおむね平坦なベロア調になるのですが、そこは生き物。薄くなったり、均一で無い部分が出てきます。強度や手触りを悪化させる裏(床)の部分は使いません。 |
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写真中央の縦に白くなっているのが、革と肉を分離する時にできたと思われる鎌傷(刃物の傷)。極端に強度が落ちますので、使いません。グローブの裁断パーツは、表からも裏からもチェックが必要だったりします。 |
こちらは牛革。鹿革とくらべると裏(床)の毛が短いのが特徴です。鹿革の圧倒的な素材感こそ無いですが、こちらもグローブにすると気持ちの良い肌触りが味わえます。 |
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とにかく革に小細工をすることなく、その素材の持つ美点を最大限活かす・・・。そんなグローブ作りを続けています。ぜひ店頭で、グローブの裏を触ってみてください。たぶんここで言っていることがお分かりいただけるだろうと思います。
シンプルなグローブにしか、できないことがあるんです。
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