photo&text  尾原 義則

   第四話

 


 実際のグローブは、大西さんの工房で作っていくのですが、グローブのデザインやパターン起こしもやらなければなりません。はたまた、実際グローブを作って・売っていくためには資材や在庫を置いたりする拠点が必要になります。
 そのため、デザイン・パターンづくり・及び営業・倉庫のための場所を東かがわ市から東の約40分の高松市屋島の自宅に置くことになりました。

 いずれは、小さいながらもSHOPも作ってみたいのですが、こちらはずいぶん先の話になりそうです。

高松市屋島は、源平合戦の古戦場となったところです。佐藤次信の墓や那須与一が矢を撃つ時に足場にした岩などがあります。いずれも僕の子どもの頃の遊び場ですが・・・。

 さて、グローブ作りには、革は欠かせません。「革だったら何でもイイ」という世界ではなく、強度・フィット感・柔軟性・床毛の状態・手触り感、そして色の具合・・・こだわる部分は多岐にわたるので、どんな革の仕上げにするか革を買い求める前にしっかりと打ち合わせをしなければなりません。
 ただ、複雑な流通過程を踏む商品であるが故、長くグローブ業界にいながらも、これまで直接革の職人さんと打ち合わせをすることは無かったのですが(それゆえ意志疎通がなかなかできず、トラブルも多かった)、姫路の皮革工房をご紹介いただき、極めてスムースにほぼ理想に近い革ができあがったのでした。

 革ができあがると、いよいよ試作品づくりにとりかかります。今度は大西さんの工房で実際に作っていくのですが、その行程を特別に紹介します。

グローブのはめ心地を左右するパターンはグローブの命です。アップではお見せできませんが、ミリ単位の工夫を重ねています。
試作品では、紙で起こした型をそのまま革へマーキングします。革の裁断する部位でグローブのタッチ感が異なるため、なるべく量産時に近い採り方で裁断をします。
僕は以前は量産品ではなく、オーダーメイドのグローブやサンプル作りが多かったので、試作品の裁断は手慣れた方です。だから今回は、自ら裁断をします。
縫製はもちろん大西さんの奥さんにお願いします。この道ウン十年のベテランで、ここ数年はライディンググローブ専門。腕は確かです。
唯一の自動化された行程が、甲側のゴム入れ。自動ミシンが、山と谷が整ったステッチを走ります。ただし、動かすまでのセットに手間と時間がかかります。
グローブの手首に最も近い部分は、ヘリ革を巻き付けます。専用の特殊ミシンで仕上げていきます。手口部分に伸びが必要な場合は合皮を用います。
仕上げは大西さんが行います。かなりの高い温度ですが、革を痛めないギリギリのところで革を成形していきます。裁断と仕上げは男手の仕事です。

 こんな感じで、試作品を作り上げていくのですが、新たなグローブを一つ作れば必ず何らかの問題が起きてきます。その問題を一つ一つ解決するために、また新たなパターンを作り、同じく裁断・縫製を重ねていきます。


うちの息子は、父親が脱サラして、いつも家か大西さんの工房にいるので満足そう。届いたばかりの独特の革のニオイも好きなようです。




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