photo&text  尾原 義則

    最終回

 これまで所属した手袋メーカーを離れてから半年、ペアスロープ四国手袋工房による新しいライディンググローブが生まれてきました。

商品が出来上がると、必然的に品評会が始まります。「いい感じに仕上がったね」とか「ここはこう改良したらいい」といった声があがります。

 新しい工房で作られ出したグローブは、「これまで培った良い物は生かし、ユーザーやテスターから寄せられた意見をもとに、さらに改良を加え、全く新しいグローブを作り出そう」という考えのもとに製作されています。
 これまでの既存のグローブとの最も大きな違いが「革」と「装着感」です。使っていくに従って馴染んでいく、そんな革の特徴を最大限に生かしたモデルに仕上がっています。

基本的には、革の肉厚を増し、平均して1.6ミリ前後の厚みがあります。それでありながらソフトに仕上がっています。加えて、色落ち・色あせを防ぐ加工がされています。

グリップとふれあう部分は、極力縫い目を廃するパターンにし、操作性を重視。よりフィット感が高まるよう、指又部分を中心としてパターンに手を加えています。


 しっかりとした厚手の皮革は、手を包み込み、アクシデントから手を守ります。ベースとなる革に十分な強度を持たせているために、補強のための革の重ねは最低限にすることができます。それゆえ革が本来備え持つ、横伸びを最大限に生かし、手の運動を妨げることのない、作り方になっています。手を握ると、手の拳の回りの周囲は肉が寄り長くなります。手は運動に合わせて各部とも微妙に太さが変わってきます。その距離の違いを革が吸収することができるのなら、理想に近いグローブと言えます。

 デザイン的な要素は必要最低限にとどめています。グローブはあくまでも脇役で、ライダーやライディングウエアを引き立てる小道具であるべき・・・という思想で作っています。グローブにおけるデザインは、必要なものもある反面、虚飾に過ぎないことも多いものです。

 シンプルな物は、縫製の手間が減るという考え方では、コストダウンかもしれません。しかしながらシンプルであるが故に、革や縫製にごまかしがきかなくなります。シンプルな物づくりの方が難しいものです。



終わりに・・・「日本製」であること自体がブランドになろうとしている昨今、「ただ日本で作ればいい・・・」ということではなく、日本で作るメリットを最大限に生かし、ユーザーにその物づくりの素晴らしさを伝えていくのが使命とも考えています。そして、次の世代が受け継ぐことのできる仕事になれるよう、スタッフ一同励んでいきます。





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