「使える傷・使えない傷」

 「革には傷があります。」なんて当たり前の話かもしれませんが、実際に傷はどんなものなのか、革を扱う所以外では、知っている人は少ないかもしれません。
 四国手袋工房で使われるのは、北米産の牛革ですが、生前に動き回った証拠として、頭のまわりには棘(トゲ)による傷、足のまわりには掻き傷、牧場の有刺鉄線などの傷、虫や汚れによる傷、そしておしりには牧場主の刻印などが付いています。

 普通傷は嫌がられるものかもしれませんが、逆に考えると生きているうちは健康で、牧場を走り回っていた証拠。傷があってこそ革なのかもしれません。そして生前に治った傷は、元より傷の部分が盛り上がって強くなっているものです。だから、傷の部分でもグローブにすることがあります。

真ん中の指に付いている斜めの筋が、治った後の傷跡。少し盛り上がったように痕が残るのは、人間も同じ事。強度的には全く問題無し
甲側中央にある筋は、傷じゃなく「血筋」と呼ばれる血管痕。普通は表面に出ず、染色で隠れてしまうことが多い。こちらも強度には関係無し。

 一方で使えずに捨ててしまうのが、美しくなかったり、強度的に問題がある傷ということになります。

ほとんど治っており、大きく盛り上がるようになっていて、強度的にも問題無い。ただ美しくなくて使えない
全体的に銀ズレ(表面が剥がれたような状態)にあって、小傷がいくつも存在。ほとんど使える所無し。
グローブは、床(裏面)の傷も吟味しなくてはならない。左下は鎌傷といい、肉から皮を剥がす時にできた人為的な傷。もちろんここは使えない。

 四国手袋工房では、より柔らかく風合いの良い革にするため、これらの傷を隠すための厚化粧をしていない革を使っています。ですから、なるべく自然のままの状態を生かせるよう、「使える傷」はこれまでも、これからも可能な限り製品に織り込んでいきます。
 もはや「傷」というよりは、革の「味」と理解していただければ幸いなのです。人が作り出した工業製品じゃないんですから・・・。

命あるものから頂いた革なのですから、決して無駄にしないようにしているのですが、それでもすぐに革屑は一杯になります。裁断の上手い下手は、屑を見れば解ると地場のベテランは語ります。






戻る