八番札所 熊谷寺



第二回 発心の道場編 その1
「とりあえず八十八カ所参りに行きたい」と口走ってみたものの、巡礼の旅だけに事はそう簡単ではなく、一番札所に行って何をどうすれば良いのか知るところから旅が始まるのでした。



 11月17日。天気は快晴。気温は6℃。まだ夜が明けぬ朝6時30分に自宅を出発。遍路旅の朝は早く、一カ所でも多く参拝するために早起きが欠かせないのでした(納経所は午前7時〜)。
 巡礼に欠かせないアイテム一式(第一回で紹介したもの)をパニアケースに詰め込んだのですが、道具の中で一番大事にしなければならない金剛杖が入らないので、急遽自作の杖ホルダーを装着したのでした。

鹿革の切れ端で、ダカール用の金剛杖ホルダーを自作。バイクへの装着はタイラップにしました。
一番札所に向かう途中のサービスエリアで暖を取りました。まだ恥ずかしくて白衣は着ていないのです。

 午前7時30分、徳島市街からほど近い一番札所霊山寺に到着。駐車場では、多くの人が白衣に着替え、身支度を整えていたので、その方々に紛れて初めて白衣を着てみたのでした。時代劇チックな出で立ちは、少々恥ずかしいものでもあります。
 白衣を着ていると、不思議なもので同じ格好をした人が親しく見えてくるものですねぇ。霊山寺では、仲間が多くいるようで嬉しくなりました。またバイクに乗った巡礼者は珍しく、声をかけられることも多くなりました。


 一番札所霊山寺の本堂内には、納経所の他に白衣などを扱う売店が有り、そこのおばさん(おねえさん?)が初めての巡礼者に、お参りの方法やお経の読み方などをコーチしてくれるとの張り紙が有り・・・。ちょうど先に本堂に入った3人のグループが教えを受けていたので、その後ろで聞き耳をたてて作法を学ぶことにしました。

参拝の方法

一 山門にて一礼
二 水屋で手を洗い、口をすすぐ
三 本堂で納札を納札箱に入れる
四 ろうそく1本、線香3本をあげる
五 賽銭を納める(5〜10円位)
六 読経(詳しくは、一番札所で教えて
もらってください)
七 同じ要領で大師堂にも参拝
八 納経所でスタンプをもらう
九 山門で一礼
頭陀袋(ずだぶくろ)には、ろうそく・線香・ライター・経本・数珠の他に、住所名前を書いた納札を札所数×2枚ずつ用意します。賽銭も結構投げ入れますので、小銭はいっぱい用意した方が良いでしょう。

 一応、上記のように参拝し、決められたとおりに読経するのが良いでしょうが、要は心の問題。別に本堂の前で頭を下げるだけでも、何の問題も無いと思います。よくよく回りの人を見てみると、白衣を着た人でも決められたとおりに参拝している人は約半分ぐらいかな(適当に簡略化しているのではないでしょうか?)。

 ただ、最低限守らなきゃならないルールがあります。ろうそくや線香はもらい火をしない事、橋で金剛杖を付かない事、鐘は参拝後に撞かない事・・・ぐらいであります(これらはみんな守っています)。

 慣れないながらも読経を終え、納経所で最初のスタンプをもらうことができました(¥300)。大抵はお寺のお坊さんが筆でサインとスタンプをしてくれます。そして御影(みえ・おすがた)と呼ばれる、本尊の姿を絵に描いた紙ももらえます。

 御影(カード)は、88枚分を集めて、額に飾る人が多いそうです。平日でも納経所で並ぶこともありましたので、土日の納経所は結構な混雑になることも多いようです。
 そしてここから、八十八番までへの旅が始まったのです。

8:00 霊山寺出発。二番までは1.4km。ものの5分で次に。
8:45 二番極楽寺出発。次の札所も近い。参拝者はぐっと減っている。閑散とした感じ。
9:40 三番金泉寺出発。次までは5km。バイクじゃ、あまりにも近すぎてヘルメットの脱着が煩わしい。
10:00 四番大日寺出発。今朝霊山寺付近ですれ違った歩き遍路一行を追い抜く。
10:30 五番地蔵寺出発。距離の近いところばかりなので、一日に何カ所でも回れそうな錯覚に。
11:00 六番安楽寺出発。少しずつ寺が遠くなっている。この長短の揺さぶりは意図されたものだろうか?
11:30 7番十楽寺出発。観光バス団体ツアーに遭遇。おばちゃんにバイクへの質問責めにあう。
11:50 8番熊谷寺出発。お昼までにここまで来ることができた。今日のノルマ12番までは余裕か?
12:10 9番法輪寺出発。お腹がすいたので、売店でうどんを食べようとすると、お団子しか残っていないとの事。食べそびれる。
12:50 10番切幡寺出発。初めて山の中腹にあるお寺。石段は333段あるものの、本堂すぐ下までバイクで行ける。
13:44 11番藤井寺出発。門前の駐車場は不覚にも有料だった(バイクなら路肩に止めても何の問題も無いでしょう)。
14:56 12番焼山寺出発。11〜12番間は、バイクでも難所続き。最も安全と思われる経路をたどっても所要1時間。標高800m。
15:50 13番大日寺出発。12番から山を降りて行く。距離20km。修行にふさわしい道のり。
16:20 14番常楽寺出発。15番はすぐ近くなんですが、諸般の理由から、本日は打ち止め。


輪袈裟は首の反対側にぶら下がる・・・
格好なんてどうでも良くなってきたのでした。


 1〜11番札所までは、ほぼ順調に・・・。それにしても、札所間の距離設定が絶妙ですね。最初から距離が長かったら、多くの人が早くに挫折するでしょう。距離は、長短のリズムを繰り返しながら、次第に長くなっていきます・・・。

 やがて訪れる12番の焼山寺へは、歩きなら登って降りるのに一日がかりの苦行の道。バイクでも約1時間、クネクネ道と格闘してようやく着きます(厳冬期の二輪は止めておいた方がいいでしょう)。


 今日のノルマは12番まで・・・そして時間があったら行けるところまで、なんて考えていたのですが、徐々に焼山寺登りの頃から、スタンプ集めに奔走するのがバカバカしくなってきたのでした。
 「一体何のために88カ所巡りをしているのだろう」という疑問、そして心を込めた読経ができていないのではないかという反省が・・・。
 そしてこのサイトで、「何を伝えたいのだろう?」、「伝えるためのまともな写真が撮れていないんじゃない・・・?」という焦りが。

 ヘルメットの中でそんな事を考えながら訪れた14番札所。ついに単純なスタンプ集めでは意味が無い事を悟り、お参りは一時中断。後日出直すことにしました。

 たった一人、バイクで写真を撮りながら旅するのも修行なのかもしれません。自身の迷いは深まるばかり。
 四国霊場の旅は、たった14番を終えた所・・・入り口に立ったばかりなのです。

次回も「発心の道場」続編
(まだまだ先は長い・・・)



メニューへ