「東かがわ市は手袋の街でありました・・・。」
 もはや過去形になろうとしているこの言葉。一時(ほんの十数年前です)、9割以上が東かがわ(白鳥・大内・引田)製と言われていましたが、逆に今では9割以上が中国を中心とする海外生産。

 そんなご時世に、昔と変わらぬ製法で、グローブを作り続けているのが四国手袋工房です。



伸びのある革素材を、縫製時に狂わないよう、縦横に伸ばしていきます。革の繊維状態を見極める経験が必要な作業です。時には何時間も伸ばし作業を続けることもあります。
「ポンス」と呼ぶプレス機で、一枚づつ抜きます。左右の手で革の厚さや色の具合、シボの加減が変わることのないように気を付けて裁断していきます。
パーツ毎に揃えられていくのですが、一枚ずつ革の色や表情が異なるために、組み合わせがおかしくならないよう、順番を変えることはできません。
真鍮から削り出されたロゴを高温に暖めてて、革に焼き付けます。革の材質により、ロゴの凹み具合が異なるため、微妙な温度管理が必要です。
マジックベルトは、YKKクイックロンを採用しています。海外製のマジックと見た目は同じでも、数千回着脱を繰り返した後の耐久性が違ってきます。



まずは、デザイン部分の縫製から始めます。甲側にステッチが入れられた後、ロゴの入ったパーツを縫いつけます。最も目立つ縫製部のため、丁寧さは欠かせません。
唯一の機械化された工程です。コンピューターで動きをコントロールするミシンで、甲側のあらかじめ決められた位置にゴムを入れていきます。
ゴム入れは、目立つ場所なので美しくなければなりません。このゴムは、グローブの脱落を防止する他に、手を正しい位置に送り込み、フィット感を高める役割を果たしています。
平側は、親指からパーツが組み合わされていきます。手の形状に合わせて立体的になるよう設計されているため、縫い上がると親指が立てってきます。
平側にもゴムが入ります。ゴムの引っ張り具合も一様ではなく、使われる革の厚さやコシ(柔らかさ)の具合に応じて微妙に変えていきます。
甲と平がつながれ、平側のアテ革が縫製されます。外縫いグローブの弱点でもある、糸切れを防ぐために、最も手をつく恐れのある部分のステッチをアテ革でカバーします。
革に汗抜きの穴が開けられます。手の発汗量はとても多く、使った後は汗がグローブの中にたまります。湿った革をいち早く乾かすために必要な穴です。
ベルトやマジックが縫いつけられ、最後の主縫製を待ちます。すべての工程が終わる毎に、検品が行われ、革パーツの異常、ステッチのゆがみなどが無いか確かめられます。
主縫製は、すべての指の外側を縫製し、袋状に仕上げていきます。縫い代の大小や革の引っ張り具合一つで、指のネジれやフィット感の悪さが起きてしまうこともあります。
甲側と平側の指先の曲率が違うため、慎重に縫い合わせていきます。このような立体的な設計を用いることで、たった二枚の革でも指を包むことのできる袋状になります。



主縫製が終わると、一通りの検品をして、最後に仕上げの作業に移ります。ブランド及びサイズの書かれたネームを入り口部分に取り付けます。
グローブの一番下部の縁(ヘリ)革を巻き付けていきます。ロングタイプには本革を、ショートタイプには合皮を巻き付けます(ショートに本革を使うと手が入らなくなるため)。
縁革の余りは、1ミリ前後の縫い代を残して、手作業で切り落とされていきます。これで縫製関連のすべての作業が終了します。
縫い上がった後は、手の形をしたアイロンに被せて成形します。このアイロンの温度管理も重要で、革の性質に応じた適温が求められます。
最後はバーナーで、余分な毛と、少し出ている縫製糸を焼きます。縫製糸は融けて丸くなり、糸の抜け止めにもなります。

 四国手袋工房では、材料のほとんどに革が使われているため、均一な素材から作られる工業製品とは異なり、職人は毎日革と向き合い、革と対話し続けることが必要とされます。
 それは、傷であったり、色であったり、手触りであったり・・・。生物から預かっている革を使う限り、厳密に言うならば二つとして同じ物ができない物づくりの世界なのです。

 そんな物づくりの伝統を、少しでも残していきたいと考えています。
希少な但馬の和牛が用いられた、ペアスロープ「屋島」ブランドのグローブが発売決定。詳細はこちらより





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