武重本家酒造という蔵元は、正門から中も素晴らしいが、外側の塀がこれまた趣がある。ちょっと半周ほど歩くことにしよう。




 中仙道から蔵元の塀に沿って脇道に入ると、明治時代以前の土壁がある。そこは電柱もアスファルトもなく、刀を差した侍がひょっこり現れても、まったく違和感のない細道だ。

 さて、主役である製品撮影はほとんど終えた。次は脇を固める小物たちを撮る。しかしその脇役たち、うまく撮るには、なかなか手ごわいのです。




本来は100年の歴史ある建物の縁側で撮りたかったのだが、、、。
 明かしてしまえば、上記の写真はホームセンターでゴザを買ってきて弊社店内で私が撮った写真だ。そして左の写真は、蔵元の縁側で簡易的に撮ったもの。ではなぜカタログで上記写真を使ったかといえば、ひとつにはストロボを使うために、当主宅にスタッフが上がらなければならず、それを遠慮したこと。そしてもうひとつは“刀”にある。
 武士の差す刀は、本差し(ほんざし)と、それより短い予備的な脇差し(わきざし)がある。蔵元の左写真は脇差しのみで、写真では長さが比較できないので、どちらか分からない。そう、本差しを持ってくるのを忘れたのだ。“脇”をテーマにする写真で、それではいかんだろうと、後日社内で撮ったというわけである。
 そもそも刀を露出することに是非があった。きょうびの刃物事件でイメージを壊さないか、ということ。しかしニッポンの伝統文化と事件はいっしょにする次元ではないと、私の判断で決行した。


 なお、刀は本物ではない。かれこれ30年前、私は横浜でやっていた古美術品即売展みたいな催事にCB750で行き、そのフェイクの刀を衝動買いした、というもの。そう、今でもうっすら覚えているのだが、刀はシートに積むことができず、ジーンズのベルトに2本差して国道1号線を東京大田区まで走って帰った。そして周りのクルマは私のバイクに近づかなかった。 ・・・今思うと、危ないヤツですよねえ。現在ならケイタイですぐ通報されてるだろう。

 さて、それら自慢の脇役たちを少し紹介しよう。


[ これらは、ほんの一部です。もっと詳しくはメニューの“製品案内”のページをご覧ください。]


 そうそう、刀、その脇差しについては、もうひとつ補足説明をしなければならない。
 ・・・“たそがれ清兵衛(せいべい)”という映画をご存じだろうか。藤沢周平原作、山田洋次監督、出演:真田広之、宮沢りえ、等の時代劇だ。主演の真田広之演ずる貧乏平侍“清兵衛”は脇差し(小刀)の使い手で、本差しの侍に立ち向かう、というストーリー。結果は脇差しの勝ちとなるのだが、その清兵衛の住まいのロケ地が、武重本家酒造の隣接した当主土地で行われていたのである。
 というわけで、脇差しは重要な小道具だ。・・・しかし、こんなに奥深いことをカタログのたった一枚の写真で伝えるのは、かなり無理があったことを今は反省している。ちょっと考えすぎたでしょうかね。


本来、たそがれどき、とは夕暮れの薄暗い時をいう。だからこの写真はウソ、イメージでしかないのです、あしからず。


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