初対面というのはなにかと緊張するもので、しかも先方は今後お付き合いしたい仕事上の大事な人だからなおさらのこと。
「初めまして……」と、名刺入れから名刺を取り出す。その名刺入れはコードバンにトンボ印伝の弊社自慢の製品なのだが、これが作戦である。
案の定、先方はその名刺入れに目が留まる。
「変わった名刺入れですねえ、なんの革ですか?」
「はいこれはコードバンといって馬革の希少部位でして、鹿革にうるし塗りでトンボ模様を描いているのが印伝と言います」。話はこれで終わらない。
「駿馬のごとくツッ走る姿と前にしか進まないトンボ。戦国時代には逃げ帰らないということからトンボは”勝ち虫”と言われまして、兜や着物にもトンボマークを入れていた武将がいたのですよ」
「ほぉ~なるほど、トンボは戦国武将の好みだったのですか」
……名刺交換時は何を話してよいか分からないものだが、この名刺入れで親近感が生まれ、仕事もトンボのように”前向き”に進んだことはお察しのとおり。 |