[2011年4月6日]


野郎二人旅。



 翌朝、適当に起きて旅支度。尾原家のガレージ(という豪勢なものではないが)からCBと尾原のバンディット1200を引っ張り出す。
 そいうやあクルマはどうしたと聞くと、「隣りの土地を買って車庫にしましたんや、ほらっ」。確かにガレージの隣にクルマが2台ある。
 「なにぃ〜土地買ったぁ?・・・羽振りいいんじゃねえの!」と言えば、「20坪で、ヤマハのVマックスより安かったんでぇ」 だと。
 我が東京大田区上池台の街で20坪の値段といったら、Vマックス(231万円)10台分でもとても買えない。そもそも東京の20坪なら家が建つわけで、それを駐車場用にするのだから、うらやましいかぎりだ。とはいえ、そんな土地の高い東京が嫌いじゃあない。なんといっても生まれ育った街なのだから。
 さあ、野郎2台で高知県に向かって発進だ。


おもちゃの富士山みたいな山がたくさんある高松市。おっ、急カーブだとよ。

我らは高知道を進む。

トンネルも多い。

高知県の早明浦(さめうら)ダムで小休止。四国の水資源の中心的存在である。


こういうのを「急カーブ」とは言わない。「高速コーナー」と表示してほしいものだ。

ローカルである。

高知道から国道439号線へ。

早明浦ダムの水量は、特に大きな川のない香川県には非常に大きな影響がある。

 早明浦ダムが渇水すると尾原んとこの香川県は断水モードになると言う。また、断水を逃れても、バイクの洗車などしようものなら「白い目で見られるんだわぁ」と。車庫が安く買えても、夏にいつでも洗車できるわけではない尾原んちである。


与作(439)。

 高知道を大豊ICで降り、国道439号線を走っている。439号線・・・俗称:与作(439)。徳島市から高知県四万十市の山間部を通る全長342km、四国では名高い酷道(国道とは名ばかりのひどい道)。
 当ツーリングサイトの2002年「四国で秋の味覚三昧」では四万十市寄りを走っている。その時の記憶では、センターラインなし、クルマのすれ違いほとんど不可。落ち葉の少ないクルマの30cm幅のアスファルトワダチを、恐る恐る走ったものだ。

山も川も道も素晴らしい439号。おいおい、あまりペースを上げるなよ、尾原ぁ〜。

桜並木の通過は気持ちいいのだ。


木材トラックとはすれ違う。こんな時につい・・・「与作は木〜を切る〜〜ヘイヘイホォ〜♪」

う〜ん、THE ローカル!

すばらしいぞ、与作(439)!


 あれから9年が過ぎ、与作(439)も変わったものだ。(当たり前のようだが)センターラインがある。広く路面も良いのに観光バスも大型トラックも走っていない。なんという快適な道路だ。
 しかしソバを食いながら尾原がポツリと言う。「う〜ん、でも与作をあなどってはいかんですよぉ」。
 道の駅“633美の里”で食ったのは“つがにそば”と“つがにうどん” 共に750円。このあたりの川では“つがに(モズクガニ)”が有名なのでそうした。カニがどかっと入っているのではない。尾原の感想は「いやぁ〜、どうなんでしょうかねぇ・・・」。


きれいな仁淀川(によどがわ)の支流を桜を見ながら軽快に先へと進む。

郵便屋さんは439を全開で走る。


 つがにの味、尾原は首をひねったが私は珍しい味なので、まあまあ。尾原は讃岐うどん以外は味音痴だと分かったのは数日後のある一件である。それはまたあとで。
 さて快適に走っていた与作(439)なのだが・・・・・・。




 「だから言ったんや、与作をナメたらあかん、て」。きっと尾原は走りながらつぶやいているだろう。道路はセンターラインが突然なくなり、乗用車どうしのすれ違いすらできない狭く曲がりくねった道にひょう変した。与作(439)が本性を表したのだ。観光バスも、林業以外の大型トラックも見ないのはこのせいだったのか。
 まあ狭くなっている酷道はほんの数キロだから、バイクで走るには苦はない。むしろ変化があって愉しいでのではないかな。

 仁淀川(によどがわ)町に入った。川沿いに小さな街が点々とあるが、そのいたるところで桜が豪快に咲いている。青空の下で満開だ。川の水も、なんと美しいことか。。。




 今日の目的は仁淀川町。そしてその地に咲く “ひょうたん桜”を見ることである。
 仁淀川町のひょうたん桜は、四国ではかなり有名。いや全国区とも言える(もっとも尾原には初耳の桜だが)。ライトアップもあり・・・なのだが、今年は無し。この四国まで自粛ってやつが届いているのだろう。
 まあそんなメジャーな桜なのだから道が混むのを覚悟していたが、なんだか目的の桜に向かうクルマはいないようだ。


街から小高い山に登る。

ぜったいに迷わない。こんな道路標示があるのだから。(1年中だろうな)


すれ違ったのは郵便屋さんのみ。

ずいぶんと標高を上げたものだ。


 ひょうたん桜は、ツボミがひょうたんの形をしているのでその名がついたという。学名はウバヒガン桜で樹齢約500年。県の天然記念物にも指定されている名木だ。なのに尾原は知らない。
 ではどうのこうの語るより、じっくりとご覧いただこうか。


















 満開のひょうたん桜・・・全国の桜巡りを続けて、数多くの巨木・名木を見てきたが、こんなに標高が高くて、山の急な斜面に豪快に咲く桜を見たのは初めてだ。周りの小さな桜の木や、菜の花が、名木“ひょうたん桜”の名脇役として素晴らしい演出をしている。また、写真では写しきれないが、同じ目線の山々の風景とのコンビネーションが、これまた素晴らしい。
 なお、ひょうたん桜の下の斜面には芝桜が植えられているが、その満開はひょうたん桜の花が散る頃だという。両者の競演も見たいものだが、それこそ贅沢というものだ。

 いやぁ〜、こんなに美しいところなのに、花見の観光客が少ないのがいいのか悪いのか。「ま、平日なんやから」とは、尾原の当てにならんコメント。





 ひょうたん桜からの帰路は別の道だった。要は地元のクルマ以外は一方通行になっている。おそらくは交通量が増える土日対策なのだろう。
 さて、仁淀川町の桜はここだけではない。もう少し欲張って桜巡りを継続しよう、って寸法だ。



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