文・写真:三橋 [2009年3月30日送信]

3月17日、JR上野駅構内

 2009年の3月、いよいよリーガルコーポレーションの新潟工場で生産が始まった。今回のR-05/06ブーツの製作状況も、ぜひ見ておきたいと、本社担当者に同行。その担当者は例のごとく花田氏、そしてなんとレディースブーツ担当のHさんもいっしょである。

(私にとっては)早朝7時54分発の“Maxとき”新潟行きに乗車。


相変わらずカメラを向けると顔を隠すHさん。ならば今後は隠し撮りとしよう。(このアングルも隠し撮りだが、失敗)

新潟駅ひとつ手前の燕三条で下車。



職人さんたちの“技”をご覧にいれましょう。
 新潟工場訪問はこれで5回目である。この1年少々の間に、なんとまあよく通ったものだ。これからご案内の製作記は前作のライディングブーツR-01/R-02でも製作状況を詳しくご送信しているが、それをご覧でない方にちょっと説明しよう。
 この工場の生産の大半は“リーガル”ブランドの紳士靴。そして新たに加わったブランド“シェットランドフォックス”、これがまたいい。その作り、見るからに素晴らしい。靴好きにはたまらないだろう。そんな立派な靴の生産のなかで、ひっそりと作られているのが、ペアスロープのブーツたちである。創業100年を越える靴作りのノウハウをお借りして作っているライディングブーツ、それがどういう意味を持ち、職人さんたちのどんな技で完成されるのか、再度、違った角度からとくとご覧に入れましょう。
 事務所の応接室で準備をしていた。正面には数々のリーガル製品が、、、えっ?我がペアスロープブーツが一番上のタナに・・・私の訪問に対する工場の方の粋な計らいだろうが、それを見てなんだかもの凄く嬉しい気分となった。





レトロでゴツイ機械作業も多いが、靴作りは熟練の手作業が基本。


「写真、撮らせてあげなよ」。説得する花田氏だが、、、やはり隠し撮りしかないか。

 R-05/06の試作ブーツをどれほど作っただろうか。そしてその試作を作るたびに花田氏とHさんはこの工場に訪れている。ブーツのイラストと仕様書を送りさえすれば自動的に試作品が出来上がるなんて、そんな簡単な事ではないのだ。しかも最終試作品が見本としてあっても、今日のような販売品生産初日には、また東京から来て一部始終チェックする。それが彼らの仕事である。
 メンズは花田氏が、レディースはHさんと手分けして生産中の製品チェックを行う。まさしく一枚の絵に描いたブーツから、販売品生産までの長〜い工程を責任を持って仕事につく。工場の職人さんたちも素晴らしいが、このお二人にも頭が下がる思いだ。
 では、そんなブーツ作りの工程をご案内しよう。



午前中から凄い気合いの入れようである。

縫製出来たてのアッパー(上部革部分)はまだ立体的ではなく、ノッペリとしている。


“釣り込み”作業で立体になったつま先。どうです、キレイなカタチでしょう。




カカトにつづいてつま先を“釣り込み”作業で立体的に整形。




木のラックに積まれたジップアップのR-06。3月生産分はこれで全サイズ全て。(非常に少ない)



下部分の余った革を裁断機に掛ける。それにしても真剣な表情である。



グッドイヤーウエルトとは、この細革(ウエルト)を縫い付ける製法。この大事な工程から、汚れ防止のラップが被せられる。




クギを打つ。簡単そうに見えるが、これぞ手加減のいる職人さんならではの手作業。



頼もしい表情で作業する職人さん。


グッドイヤーウエルト製法の特長であるコルク。これが履きやすさの源でもある。

[ R-05/06が成型コルクなのに対し、兄貴分であるR-01/02は最上級の“練りコルク”。同じ方式にしたいところだが、カジュアル性とコストのバランスを見て成型コルクを選択。]


ソールを縫い付ける。血管が浮き出るほどのチカラのこもった作業である。


ソール全体を圧着する。ここまでくるとブーツの完成形が見えてくる。


キレイに整ったサイドライン。あとはベージュの部分のラインを塗装し、ラップを外して仕上げのクリームを塗れば完成である。


ソールサイドを慎重にバフ掛けする。ちょっとでも外れると革がキズだらけだ。


「う〜ん、いいデキだぁ」と、我が子のような眼差しのR-05生みの親、花田氏。




 こんな具合でブーツ製作状況をご案内したが、しかし実際にはその工程の半分にも満たない。まあ、細かな作業を含む全工程を掲載したら、専門用語だのなんのと、読んでいただくほうも辛かろう。いや、サイト制作する私のほうが辛かろう。

 いや〜、あっちこっちにうろうろで疲れた。しばし食堂で休憩させていただこう。ちょっとオバちゃんと雑談でもしながら。。。

「今どき珍しいレトロなヤカンですなあ!」に、「ここはこのヤカンがお気に入りで、高くてもこれでなくちゃあダメなようですぅ」。いい靴を作る人々は、このカタチのヤカンが大切なようである。


 では次に、レディースブーツの製作状況をご案内しましょう。男性用R-05/06と、レディースR-05Le/06Leとは、カラーもデザインも同じなので(木型は大きく異なる)、どこでレディース用の作業をしているのか非常に分かりにくい。しかしちょっと考えれば簡単なことで、担当である若いHさんのいるところがレディースブーツの作業進行中なのである。




黒を中心とした靴作りの工場の中で、ひときわ可憐なアイボリーのR-05Le。


外側だけでなく、中の奥深くまで縫製チェックするレディース担当Hさん。


何かを見つけると、上司の花田氏や工場担当責任者に問答無用の質問。(をしているような気がする)

やはりオジさんたちは、若い女性には優しい。この工場に限ったことではないが、、、。




製作工程途中で、すべてのブーツの寸法を測る。ミリ単位と誤差も見逃さない。


Hさんの厳しいチェックに、心配で覗き込む工場担当責任者である。









若い女性にジッと見つめられてるとやりにくいんだよなあ、、、って感じだろうか。
ほんとにキレイな仕上がりだ。チェンジ部分の手縫い糸がこれまた良い。



いいブーツが出来ようとしてるのになぜだろうか、悲しい表情だ。

若い職人さんもこんなに気合い入ってますよ、Hさん!


ご年配の職人さんも負けてはおりません。どうです、この手さばき。


孫ほど離れた歳の差。仕事の会話とはいえ、Hさんに笑顔が戻ってホッとした。


おジイちゃんの仕事に尊敬のまなざし。そしてお二人に対し、私の尊敬のカメラアングルである。




やはり、いいブーツですなあ。。。

 いかがだったろうか。完成品の1足のブーツに、どれほど多くの職人さんたちの手が加わっているかがお分かりいただけただろうか。花田氏の男のブーツ編では、その製作技術を。Hさんのレディース編では、靴作りの感情をお伝えした。未熟ながら私のカメラでそれらを少しでもご理解いただいき、各担当者の心のこもったブーツを履いていただけたなら、ひじょうに嬉しい限りである。



 夕刻、工場をあとにしてJR燕三条駅に向かった。いや、正確には駅の近くの居酒屋に向かった。
 いやぁ〜、越後のサカナは旨い。もちろん酒も。今夜はどちらもとびっきり旨い!
すみません。しこたまアルコールが入っているのでピントが合いません。

 居酒屋でたっぷりアルコールをカラダに注入し終え、駅の売店で名産品“柿の種”とアルコールを補充して新幹線に乗り込む。あとは何を話したのかまったく憶えてはいない。
 大宮で二人は新幹線を降りた。東京駅に向けて発車するまで手を振っていた。今日、最高の笑顔で。。。



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