「揺れるよぉ」
 おおっ、こんな弱気な海の男を見るのは初めてだ。ぐわはははっ。
 海の男を自称していた三橋さんが、布団を敷く力もないほどに床に横たわったきり、唸っていらっしゃる。要介護認定だ。乗客は少な目だが、細かい振動と大きな揺れは多めなのだった。
「三橋さん、まだ陸地が見えてるから、降りるなら今ですよお」
 などと、つまらないことを言ってもなんの反応もありゃしない……悲しいぜよ。
 つい、先ほどまでは豪快に缶酎ハイを飲んでルート確認などをしていたのに。WGPの最終戦が衛星放送であるから、見なきゃなるめい、なんて言っていたのに。

船の中で沈没する海の男・・・

 徳島港へ向かうオーシャン東九フェリーのスタンダード・フェリー、おーしゃんうえすと11500トンがドドドッとディーゼルエンジンを震わせて有明埠頭を出発したのが19時10分。ここからは徳島港まで19時間ちょっとの航海だ。連休最終日だからかフェリー乗り場も、ピューッとか風が吹いて、人がまばらで、少し寂しい雰囲気。デッキからはお台場や葛西の大観覧車がキラキラと回っているから、カップルなんかだったら「ワーキレイ」「ブチュ」とかなんとかいって、ひと盛り上がりなんだろうけれど、おやじ3人ではそうはいかない。缶ビールで乾杯をして、あとは飲んで寝るだけ、という状態まで乗り込んでからわずかに5分28秒。落ち着いた頃に大島さんがオロオロし始めた。トイレではないらしい。
「盗難防止装置のスイッチを切り忘れたんですけど、フェリーの振動で作動しますかね?」
「うーん、あの装置は、隣をトラックが走り抜けただけでなるからなぁ」
 本来ならば、動き出したフェリーでは車両デッキには降りられないのだけれど、パーサーにお願いして、車両デッキに降ろしてもらい、盗難防止ブザーを解除。結構、切り忘れる人がいるらしい。振動に敏感なブザーを設定したまま忘れると、船に乗っている間中鳴りっぱなしで、バッテリーをあげかねないから注意だね。

大荒れの海、
紀伊半島南端を通過。

 そうこうしながらも、夜は更け新しい朝がやってくる。どの航路でも、船内で迎える朝は遅く起きたいもの。だって、起きてもすることないんだもの。なのに「朝食の準備ができておりま〜す……」とかなんとか、船内放送で起こされる……悲しいぜよ。
 そんなヌメ〜とした時間に、飛び込んできたのが衛星放送の「絶対!ふるさと主義 香川」という番組。香川の番組というよりも讃岐うどんの特番みたいなもので、4時間くらいうどんの話題ばーっかしだけど、こちらとしてはグッドタイミング。
「おおおお、ここ知ってる」
「おおおおお、美味そうだ」
「揺れるよぉ。うどん食べたいよぉ。気持ち悪いよぉ」
 というセリフをしばしば飛び交わせつつ、もうお昼。
 おやじ3人は、みな朝食抜きで、頭の中だけ「うどん、ウドン、饂飩」の状態だから食堂に行くしかない。船内食堂ではラーメン、カレー、うどんは定番。当然、今しがたまで見ていた「讃岐うどん」のツヤっと、カクっと、ツルっとした麺しか、うどんとは呼べないわけで、蓋を開ければ見事にラーメン(500円)とカレーライス(450円)しかテーブルに並んでいない……。お楽しみはア・ト・デ。


  普段のフェリーから見る波が、ザブンザブンって感じだと、この日の波はザッパァ〜ンザッパァ〜ンという感じ。波の高さは3m以上ということで、いつもより多めに揺らしております、染之助、染太郎でございまぁす状態。
 帰りは絶対自走だと言い張る三橋さんも、乗船時間も残りあとわずかになって、やや元気になり、大島さんと強風の中、デッキでの海の男写真を撮りに行ってしまった。


「海の男、陸地に近づき復活かぁ」と、デッキ先端に向かって歩き出す。風が強すぎて行けなかったという大島さんの敵討ちだぁ。あと10mで先端……というところまでは、なんなく進むものの、残りが進まない。それは、片足を上げると、身体が後方に飛ばされてしまいそうな状況。なるほど、タイタニックで二つに割れた船体を前方に進むときの気持ちは、こんな感じなのだろうか、と予期せぬデカプリオ体験で遊んでいたら徳島港到着。
 パンパカパーン!! 長い前置きの後に、怒濤の四国ツーリングは次頁から。

※このページ全て、三橋・石野のデジカメにて撮影。

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