最終頁
 東北自動車道を南下し、山形自動車道をちょいと走って遠刈田温泉へ。
 今回の旅の最後を飾る温泉宿は、伊達な男が大奮発した、温泉山荘 “だいこんの花” !
 妙な名前だが、ここは凄いのである。なにが凄いかはまだおしえない。

 実のところ、最終日の宿は東京出発前日まで迷っていた。そんな時は、弊社商品撮りカメラマンの大島氏に情報を得るのが間違いない。
 大島氏は1980年代半ばから弊社のカタログや広告の写真を撮りつづけているフリーカメラマンだが、一方で著名雑誌の温泉地も全国まわって撮っている。だから、ココっていう温泉旅館には詳しい。先月の旅「ホタル・・・」の伊豆松崎町“山芳園”も氏の紹介。ハズレがないのである。
 

 「2年前にできたまだ新しい宿だけど、“だいこんの花”は凄い。泊まってみたらどおですかぁ?」
 大島氏の言葉を信用した。だが、氏の情報には唯一の欠点がある。その宿のHPをいっしょに見ていると、
 「うわぁ〜、一泊サンマンゴセンエンもするんだぁ」 そうなのだ、氏は仕事で泊まってるから1円も払っていない。金銭感覚がないのである。
 しかし、大島氏と私の共通論はある。高い価格の宿がどこも素晴らしいとは限らないし、安宿だからといって我慢を強いられるのも勘弁。高くても安くてもショボイところはやはりショボイのである。

 私は生まれてこのかた3万円を超える宿など泊まったことがない。2万円台だってめったにない。1泊目の東鳴子“旅館 大沼”の13,800円や、2泊目の松川“松楓荘” 9,000円で大満足している私が、ではなぜ、、、
 表的にはカミさんへの大見栄。そして裏は・・・宿のHP空室情報によれば土曜日は3ヶ月先まで満室、平日でも8月などほぼ満室。 東京から近いリゾート地の伊豆や箱根ではなく東北で一泊3万円強の宿が、なぜこうも繁盛しているのか? 弊社も純国産のそう安くない品を作っているのだから、高級とは何なのか、そのサービスとは? を、この宿で少しでも勉強しようかと思いまして。。。(我ながらうまい口実を考えたものだ))



 HPにはこう書かれている。
 “ だいこんの花は世間一般でいう高級な宿ではありません。
全国のうまいものを集めた、懐石風旅館料理は、お出ししておりませんし、お部屋は近代風の数奇屋造りではありません。
そして、着物姿の女将もおりません。”


 ・・・でも高額。 宿に電話で予約した時のこと、丁寧な受け答えで 「私どもの食事はベジタブルがメインディッシュですがよろしいですか?」 要は、肉や魚料理はほとんどなく、草ばっかということらしい。 ・・・でも高額。ますます興味がわいてくるのであった。
 
大きな母屋である宿の玄関は、たった半間しかない引き戸。




1万坪ほどの敷地にたったの18室だから、建物内部にも大きな空間がある。そしてこの宿は、その空間の取り方が実にうまい。一見無駄と思えるスペースも、心を安らげるよう演出されている。



1棟で2室の離れ客室へは渡り廊下でつながる。



夕食はやはり野菜がメイン。しかしそれもこの宿の畑で育てたものだから、それはそれは新鮮。
草ばっかしだと思っていたが、肉や魚も出る。カボチャの冷しホンデュをつけて頂くランプ牛や車えびは絶品。ほかにもウナギや鴨も美味いが、野菜以外は脇役とのこと。



みどり豊かな敷地内のせせらぎ、
夜にはホタルが見られる。
奥にあるのが客室。




この宿自慢の風呂は6つある。その内の4つは貸切である。当然掛け流し。
貸切風呂につながる渡り廊下に、竹竿で通せんぼすると「入浴中」、、、粋なはからいだ。


蚊取り線香は持参。夏の露天風呂の必需品。



広い敷地に人工的な庭園はなく、自然のままに木が生い茂る。美しくライトアップされた木々をバックに入る露天、極めてぜいたくな貸切風呂である。



男女別の大風呂もあるが、いちばん下はなんと大風呂とたいして変わらぬ大きさの客室の専用露天風呂。
 この宿に数時間いて気がついた。母屋も客室もどこかしこもが全て平屋。そして金属やコンクリートといったものがほとんど見うけられず、木や石で造られている。
 自然と人を落ち着かせ、癒されるのは、こんなところからきているのかもしれない。
 そしてほとんどが20代と思える若いスタッフの接客態度。「ここにいるのは何ホタル?」なんて、少々いじわるな質問を女性スタッフにしたところ、「私どものホタルは“源氏”です。」とはっきり答えなさった。ふつうは源氏か平家なんてどうでもよいことかもしれないが、酒の特徴についても料理についても、しっかりと答える。きっと、宿のオーナーが教育熱心で、スタッフは勉強熱心。職種は違うが見習うべきことばかりで私自身おおいに勉強させられた。そんな意味でも一泊3万5千円という価格、けっして高くない。
 沢のせせらぎに架かる渡り廊下で、ゲンジボタルのその優しい光りを見ながらそう思った。
 それにしても、この宿の話題も最後はやはり、、、“源氏”。
  


一泊35,000円と書いた宿代だが、正確にはサ・税込みで28,500〜34,500円。1室3名までで12歳未満の子供は泊まれず、宴会不可。なんか徹底してますねえ。
やはり高額には違いないから、みなさんもぜひ!とは大きな声で言えませんが、時間もお金もちょっと余裕ができたら、また泊まりにきてもいいかな、って思います。



 朝、そりゃあ美味い朝食を食べて、至福の温泉山荘 “だいこんの花”をあとにする。
 このまま最短距離で東京に帰ってもつまらないので、いや、目の前においしい 「蔵王エコーライン」 が待っているので山形県に向かってもうひと走り。


最高所付近にはまだ雪が残る。


宮城県側からぐいぐいと登り、山形県に入ると霧が出てきて、やがて視界不良に。こんな中で写真撮ってると、デジカメぶっ壊れるのは承知だが、サービス精神おう盛になってしまった私。(だいこんの花のせいか) なお、エコーラインは素晴らしいワインディングロードだが、あの八幡平“アスピーテ・樹海ライン”には届かないかも。


国道13号線を南下すると、山形新幹線400系“つばさ”と並走するが、すぐ抜かれる。ヤツのこの区間の最高速は130km/hだが、東北新幹線内では240km/h。非力なビーエムではとてもかなわん。


 この旅の最後の昼飯は、蕎麦とした。蕎麦には、中尊寺のそばまで来たのに行けなかったニガイ経験(昨日だ)もあるが、信州に引けをとらない蕎麦好きが多い山形県、やはり食っておかなければならん。

米沢市郊外の「もみじ庵」のもり蕎麦。私はそのおおもりを頼んだ。もみじ庵の蕎麦はつなぎ無しの“十割”(そば粉100%)、ほのかな風味と歯ごたえおおいにあり。満足。
ゴマだれの蕎麦まんじゅう、美味です。









 さて、ながいながい3泊4日、行程 1508kmの旅行記も終わりとなった。
 いかがだったろうか、どっぷりと浸かったみちのくの温泉と、たっぷりと、時に強引にひも解いた義経の歴史旅。NHKの大河ドラマ “義経” に負けじと気合いを入れて頑張ってみた。
 しかし、ここに紹介した温泉も義経話も、ほんの一部分にすぎない。まだまだ至福なところは、このみちのくにはたくさんあるだろう。
 みなさんも、バイクという相棒を連れて自分好みの旅を探してみてはどうでしょうか。
 欲をいえば、夫婦坂のライディングギアもいっしょに連れてっていただければ幸いです。

ペアスロープ みつはし






[ 参考サイトのご案内 ]
鳴子温泉郷 http://www.naruko.gr.jp/
旅館 大沼 http://www.ohnuma.co.jp/
角館町 http://www.town.kakunodate.akita.jp/
八幡平温泉郷 http://www.hachimantai.org/
松尾八幡平観光協会 http://www.hachimantai.or.jp/02area/area04.html
松川温泉 松楓荘 岩手県岩手郡松尾村寄木1-41 0195-78-2245 (HPなし) 
毛越寺 http://www.motsuji.or.jp/
温泉山荘 だいこんの花 http://www.ichinobo.com/daikon-no-hana/

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温泉ツウでもないし、ましてや歴史は苦手の部類であるのに、少々無理して書いてしまいました。どこかには「違うんですよぉ、それ・・・」といったとがあるかもしれません。もし見つけましたら、どうぞそれもメールをください。
また、お薦めの温泉等ありましたら、そ〜っとおしえていただけませんか?

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