童謡 “赤とんぼ”より | ||
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2006年8月5日 発信 |
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6月2日、中央高速をぶっ飛ばし、カミさんと八王子市の養蚕(ようさん)農家である長田さん宅を訪ねる。本来は見学不可だが(仕事のじゃまになるしねえ)、ご主人のご配慮で許可を頂いた。目的のカイコは明治期に建てられた風格ある母屋の隣りで飼われている。 飼育小屋に入ると、昔、親戚の農家で見た飼育方法とはちがっていた。20メートルほどの長い箱のような中にたくさんいる。いや、そんな優しい表現ではなく、ウジャウジャと白いカイコ虫がうごめいている。 さっそく手に取ってみる。30年ぶりだろうか、この感触。肌がすべすべして妙に気持ちいい。しかし、、、信州育ちのカミさんは触ろうとはしない。カミさんの実家はサラリーマン家庭で、カイコにはあまり接していなかったのが理由だそうだが、単にイモ虫が嫌いなだけだろう。 |
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飼育小屋には2万数千頭いるというから、それはもうどっさりとこんな感じ。シャワシャワと小雨が降っているような音をたてて桑の葉を食う。 |
よくよく話を伺ってみると飼育は重労働だ。夜露の付いた葉が良く、早朝5時に桑の葉を刈り、カイコに与える。昼間も絶え間なく葉を与え続け、また夕方に桑の葉を刈りにゆく。ひと月半、毎日がその繰り返し。それを年に二回、飼育を行う。その間は家族旅行など、日帰りですらまったくできないだろう。 飼育の見返りである収入を、恐る恐るおバアちゃんに聞いてみた。 「とてもとてもサラリーマンの月給にはとどかないんだよぉ」 と。だから養蚕を続ける農家が激減したのだろうが、それ以上に、コストの安い、中国やブラジルからのカイコ糸の輸入が主な原因だろう。いまやニッポンのカイコの糸を使う絹織物は、日本の流通で5%にも満たない状況である。 なんだか先行きの暗い話になってしまったが、ウエア業界にも同じことがいえる。弊社ペアスロープのような全製品“メイド イン ジャパン”を名のるメーカーもほとんどない。悲しいことに、ニッポン人がニッポンのモノを愛用できなくなる時代が来てしまうのか、、、いやいや、長田さん家族も頑張っている。ご主人に、周りの農家が養蚕をやめているなか、なぜ続けているのかを尋ねた、「意地ですかねえ、、、。」 そう、弊社も“意地”を持ち続けたい。 |
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そして5日後 ・・・。 |
6月7日、カイコが繭を作り出したと聞き、再び長田さん宅に向かう。我ながらしつこい性格なので、繭の姿を見なければ気がすまないのだ。 繭を作り出す1万頭以上のカイコは、母屋の二階に移されていた。近づいてよ〜く観察すると、一生懸命に白く細く光り輝く糸を出し、繭を作っている。床を歩き出しているものも大勢いる。それを一匹一匹長田さんが拾い集め、繭棚に戻す。なかには脱走に成功し、天井に繭を作るツワモノもいる。 何台もの石油ストーブがあるので聞いてみた。「25度くらいなら良いが、20度まで下がるとカイコは糸を出しにくくなる。そうなると暖房しなくてはねえ。逆に気温が上がると窓を開けて通気させる。でもねえ、スズメバチが入ってきて、肉団子にして盗んでっちゃうんだよねえ、、。」 桑の葉を与える重労働から開放されても、その後の管理もこれまた大変だ。しかしこのような労力で、あの美しい絹織物が存在するのです。 |
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協力:長田養蚕 http://www6.ocn.ne.jp/~yousan/ |
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