[鉄の往路編]




 カミさんの実家に置いてあった“週間さくだいら”によると、2007年のこの夏から、小諸〜小淵沢間のJR小海線に世界初のハイブリッド トレインが走っているという。これに乗らないわけにはいかん。
 バイク乗りにはなぜか“鉄道ファン”が多い(ような気がする)。その“鉄”趣味にも多くの種類があり、代表的なのは乗り鉄、撮り鉄、模型鉄。俺の場合、この三つはおさえてはいるものの、やはり“乗り鉄”に重きを置く。
 さて、全国の鉄ファンのために、ハイブリッド トレイン試乗記をご案内しようか。


甲子園ではまだ熱い戦いがおこなわれている。


 ハイブリッドは営業車両といえど、試験運転を兼ねた身の上である。よって臨時列車扱いで主に野辺山〜小淵沢間を往復のため、定期ディーゼルカーでその区間である清里に向かう。“鉄”には興味のないカミさんと娘を引き連れて。



小海線 臼田(うすだ)駅で小淵沢行きディーゼル列車を待つ。それにしても誰〜もいない。


電車!などと言わないでほしい。やって来たのはキハ110系気動車。


小海線は単線である。対向列車が来るまで、駅で待たなくてはならない。



 非電化の小海線をはしるキハ110系気動車。“鉄”の人には常識だが、そうでない人のために、ちょっと説明しておこう。

■キハの“キ”・・・気動車を意味する。電車ならモーターの“モ”となる。
■キハの“ハ”・・・普通座席車両のこと。“ロ”ならグリーン車だ。
■エンジン・・・DMF-14型 直列6気筒の直接噴射式420馬力エンジンを1機搭載。変速機(ギアチェンジ)は変速1段、直結2段。軽く言ってしまえば、3段セミオートマってところか。

 ちなみに、弊社ペアスロープ製品に “DMF”とか“DMH”“DML”と名づけたウェア品番がある。なぜか、ぜ〜んぶ気動車のエンジン形式名称と一致している。それが分かっていた“鉄”のバイク乗りは、かなり優秀な鉄人だ。


高校野球はエラーも多いが、時には大ファインプレーも見られる。



小海線の名のもと、小海駅。ここから野辺山に向かって急勾配が続く。駅の先の線路を見れば、急な上り坂が分かろう。


小海駅を出発すると、急勾配のみならず、急カーブの連続。近代型キハ110系はエンジンの唸りと共に50〜60km/hでグングン進む。 鉄橋もトンネルも曲がっている。直線などほとんどない山の中である。


八ヶ岳が正面に見え始めると野辺山駅も近い。




 臼田駅から気動車に揺られ、ガラ空きの車両にカミさんと娘はゆったりと座っている。
 しかし・・・“鉄”は座らない。運転席のうしろで、その操作を時おり見ながら、前方を眺めるのだ。これを鉄用語で“かぶりつき”と言う。そう、ストリップ劇場のいちばん前で見る“かぶりつき”と同じ意味を持つ。まん前はね、よく見えるんだ、あんなところやそんなとこ。(線路や標識のことである)

 駅で対向列車待ちの合い間、運転手と話をする。
「きょうも元気で走ってますかねえ、ハイブリッド」
「こないだは壊れちまったけど、すぐ直したから大丈夫だよっ」
「あっ、ホームでたばこ一服していいですかぁ」
「すまないねえ、車内で吸えなくて。
5分止まるからそこで吸ってていいよっ、発車の時、おしえるから」
 エンジンのアイドリング音とセミの鳴き声しか聞こえないのどかな田舎の駅での会話。都会ではありえない光景だろう。




野辺山駅に到着。右側には“ハイブリッド”宣伝ののぼり旗がひらめく。それにしてもなんという乗客の多さなのだ。

小淵沢から対向列車がやって来た。NHK 風林火山号だ。その昔、甲州の武田信玄が、信州 佐久地方を攻めてきたように。

野辺山駅周辺は涼しげな高原のおもむき。 これは山手線か、と思わせるような満員の車内。

野辺山〜清里間にはJR鉄道最高地点がある。右はその碑、そして踏み切りのところが標高1375m。そこからず〜と終点小淵沢駅まで下り坂。

清里駅に着く。降りる人も多いが、乗る人もそれまた多い。たった2両で乗せ切れるだろうか。 全員乗れただろうかと心配そうな運転手。




 JR小海線は誰が付けたか“八ヶ岳高原線”とも言う。JR線内で最高所を走る野辺山〜清里間は標高1375m。そして全国の駅で標高の高い順位ベスト10のなかに、小海線は9位までを占める。まさしく高原鉄道なのである。
 しかし、そんな涼しい高原を走るのに、近代化したキハ110系列車の窓は開かない。はたして冷房が必要なのか疑問が残る。1990年代の半ばまでは全列車非冷房で、窓からの涼しい風が今や懐かしい。
(当時はキハ58、キハ52という国鉄最高傑作の気動車で、なかには冷房車もあったが、急勾配の多い小海線では非力なエンジンの関係上、使うことができなかった。※キハ58はキハ28とコンビを組まなければ冷房不可。コンビを組んだら180馬力1機のキハ28では急勾配を登れないのである。・・・これ“鉄”人の常識)

小海線を走る、在りし日のキハ58気動車。そのエンジンはDMH-17型。その品番は弊社革ジャンにも存在する。偶然にも。




街中は人も多く、クルマは渋滞と、俺にとって心地よくはない。国籍不明な建物が建ち並び、ここは外国か?と思わせるも、おみやげは、馬刺し・ハチの子・いなご・・・としっかり日本のローカル。


カミさんと娘はアイスコーヒー。俺は生ビール。鉄道旅はいつでも飲めるからありがたい。




 それにしても清里ってのは不思議なところだ。一瞬外国にいるような錯覚をおこすが、でもどこの国を真似たというわけでもない。なんだか落ち着かない街といった印象。まあそれでも過去30年間、5年に1度は訪れているのだから、まんざらでもないが。
 避暑地として、ちょっと北には軽井沢がある。あちらは高級で、俗な言い方をすれば金持ちの別荘地。俺には縁がない。
 なお、どちらも夏には渋滞する。とくに軽井沢の渋滞はひどく、そんな時季には近寄らないほうが懸命である。

 さて、清里からの復路はいよいよ“ハイブリッド”の試乗だ。これを語らずにはこのサイトは終えられない。

ホームインクロスプレー、アウトかセーフか。おっとボールをこぼしてセーフ! 全てが全力の球児たち。



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