2008年9月10日


 早朝5時、まだ夢の中にいるマサヤを起こさないように木村は静かに1人ライダーハウスを出た。一部の人を除いてまだ街は眠っている。皆を起こさないよう、少し離れた所でバルカンに火を灯す。ん・・・?エンジンの掛かりが悪い。主人は朝に強いというのにコイツは寝ぼすけのようだ。(ただ単に今朝は寒かっただけで、なんと吐く息が白い・・・!)
 わざわざこんなに早く起きたのはサロマ湖から昇る朝日を見るためだ。聞くところによるとサロマ湖から望む夕陽はこの上なく美しいらしいのだが、昨日通りかかったときは既に日が暮れてしまっていたので代わりに朝日を見ようと思った訳だ。

 サロマ湖展望台までのダート5kmをビクビクしながらクラクションを鳴らしつつ進む。1人でダートというのは予想以上に恐い。こんなときに熊にでも出てこられたら最悪、その日からマサヤの北海道ソロツーリングが始まってしまうだろう。まぁ滅多に遭遇しないらしいが・・・。
 そうしているうちに展望台へと到着。僕の他には誰もいないようだ。

 展望台からサロマ湖を望む。サロマ湖は日本で3番目に大きい湖で汽水湖としては1番の大きさを誇る。汽水湖なので目を凝らしてよく見ると海とちゃんと繋がっている。そして漁船が湖内をせわしなく動いていた。
 サロマ湖はホタテが有名だと聞いた。そうだ!今日はホタテを食べよう。そうと決まれば帰ってマサヤを起こしてすぐ北に向かって出発だ!

 明るくなったのでライダーハウスになっている車両の写真を何枚か撮ってみた。今にも動き出そうな程綺麗に整備されている。せっかくなのでバイクを前に並べてパシャリ!






 最北端を目指して進んでいる途中、道の駅に隣接されているあるモノが気になったので立ち寄ってみた。それはコイツだ・・・12mもある馬鹿デカいカニの爪!隣に並んだマサヤと比べればその大きさは一目瞭然だろう。というか、こんなにあったら一生カニに不自由しないだろうなぁ。

 その後、しばらくして道の駅で気になったものがあったのでまた寄り道。目的はおこっぺアイスだ。おこっぺってちょっと変わった響きだけど漢字に直すと「興部」って書くみたい。



おこっぺアイス。“★5つ”。期待して食べてみたけどふつ〜のアイス・・・?でもバリエーションが沢山あって、スイカップ(ぶどう味)なんてのは中々美味そう。



 休憩していると何やら町のほうが騒がしい。気になってちょっと覗いてみたらお祭りをやっていた!いいなぁ・・・楽しそうだなぁ。
 このままゆっくりもしていられない。今日のうちに最北端の稚内まで到着していないと残りの日程が厳しくなってくるからだ。ということで、ここからはひたすら走りに徹する。

 そうしてようやく宗谷岬の手前、20kmの辺りまでやってきた。ここで多数の牛を発見!
 面白そうなので近寄ってみる。1匹だけ茶色い牛を発見。お前・・・なんかイケメンだなぁ。


 走っていると少しずつ周囲の雰囲気が変わってきた。今までのように牧草地域が広がっているのは同じなのだがどこか物寂しい気配がし、風が強く吹き荒び、最果てという言葉が相応しいように思えた。それは日本最北端の地に少しずつ近づいていっている証なのかもしれなかった。

 原野の中を走っていると原野にポツンと建っているライダーハウスを見つけた。そこは食堂も兼ねているようだったのでちょうどお昼時ということもあり、ここで朝から楽しみにしていたホタテ料理を食べようと思い立ち寄ってみた。


牛の革ジャンを着た男が牛の革グローブで牛を掴む図。この某社のグローブは非常によく出来ていて、難しいハンドル操作も難なくさばくことが出来る。(コケたやつが言っても説得力なしか・・・?)次は馬鹿(うましか)グローブをバイトを頑張って買ってみるかなぁ・・・。



ホタテ料理。“★8個”。近海で獲れたホタテを惜しげもなく使った料理の数々。キムラのイチオシはバター焼き。香ばしい匂いがたまらないが何よりもその身の大きさが嬉しい!



 ホタテに満足し、いよいよバイクを日本最北端の宗谷岬へと進める。先程から一層強くなった風が吹く宗谷丘陵の豪快なアップダウンを走っている中、キムラにはささやかなある楽しみがあった。
 それはここ北海道の地でバルカンが総走行距離1万kmを突破したことだ。去年の11月に買ってから早、10ヶ月。これまでコイツに乗って行った色んな所を思い返してみるが、まだまだ行ったことのない場所の方が多いし、それは当たり前だろう。日本は広い。だからこそ、これからもバルカンに乗って色々な所に行けたらいいなと思う。これからもよろしくなバルカン!

 そうして・・・ついに日本最北端の地である宗谷岬へと辿り着いた!
 海の向こうはもうロシア領のサハリンだ。天気が良ければ見えるらしいが今日は雲が多く見えなかった。誰の歌かわからない、「宗谷岬」の曲が流れ続いている中、最北端のモニュメントで写真を撮る。風が強く吹き荒ぶ過酷な環境からか、その表情もそれとなく渋い・・・!
 この瞬間、僕らは日本で一番北にいる人ってことになる。ただそれだけのことだが、やっとここまで来れたって達成感でちょっと嬉しくもあった。その後すぐに違う人に最北端の位置は明け渡したが・・・(笑)
 観光客の例に漏れず、売店で最北端到達証明書をもらう。しかしここで気になったのが商品の何にでも最北端という言葉が付いていること。何でも最北端にすりゃ良いってもんじゃないでしょうに!?

 間宮林蔵(まみやりんぞう)と共に樺太(サハリン)を望む。間宮林蔵は江戸時代後期の探検家であり樺太が島であることを発見。樺太とユーラシア大陸の間には間宮海峡という名の海峡がある。実はこの人、幕府の隠密(忍者)でもあったと言われています。

 ついでに宗谷岬のGS、通称日本最北端のGSにて給油。ここでも証明書と、他に手作り感溢れる貝殻で出来たお守りをもらった!このためだけにわざと前のGSでガソリンを少なめに給油しておいたのだ。バイク乗りにとってはこっちの証明書の方が嬉しいなぁ。











 宗谷岬を過ぎた後はそのまま稚内市内のライダーハウスへ早めに向かいゆっくりと休む予定だ。毎日、何だかんだで宿泊する所に遅い時間に到着しているからたまにはいいだろう。
 そうして稚内市内のライダーハウス「みどり湯」に到着。隣接している銭湯「みどり湯」から名付けたらしい。

 このみどり湯、北海道の数多くのライダーハウスの中でも高い人気を誇り、なんとこのライダーハウスで出会い結婚したカップルが18組もいるのだというから驚きだ!
 室内の壁にはそんな方々の幸せそうな結婚式の写真が沢山貼ってあった。北海道には様々な出会いの形がある。このことは到着する前から知ってたけど変な下心があって、このライダーハウスに決めた訳じゃないですよ!・・・念のため。
 この日の夕食はみどり湯のオーナーであるおばちゃんのお勧め海鮮料理屋へ。


ウニ丼。“★7つ”。時価(この時は2500円。)ご飯の上一杯に敷き詰められたウニ、ウニ、ウニ。稚内まで来てようやくウニ丼を食べることが出来た。気になるお味のほうは・・・、正直に言おう。ウニってどこがどう美味いのかあまりよくわからない!あれは珍味なのか、それともキムラがウニの味を理解出来ないお子様なのか・・・。おそらく後者だろう。隣のマサヤの鮭イクラ丼の方がよっぽど美味そうだ!しかも安いし。(鮭イクラ丼は1200円。)身も蓋もない感想ですいません。。。


 みどり湯に戻った後、僕らを待っていたのはみどり湯のメインイベント。それは、旅人同士の交流を深めようというおばちゃんの粋な計らいにより9時になると突然、消灯し天井にあるミラーボールが突如回りだし、あたかもディスコのような部屋になるのだ。そしてそこで居合わせた人同士で自己紹介をして、みんなでカラオケを歌ったりして一夜限りの交流を楽しむ。

 若干落ち着かない雰囲気の中、各自の自己紹介を終えた後は早速カラオケとなり、北海道が誇る松山千春の「大空と大地の中で」か、コブクロの「桜」のどちらかをみんなで歌うことになった。個人的には「大空と大地の中で」を歌いたかったが、みんなが知っている曲とのことでコブクロになった。え、みんな「大空と大地の中で」知らないの!?

 一列にならんで隣同士肩を組み合い、みんなで桜を合唱する。知らない人同士、最初は声も小さくフレーズの節々もぎこちなかった。しかし、歌を歌うことで少しずつ打ち解けてきたのか気付くと最後には声も大きくなりいつの間にかみんなで肩を揺らしそれは楽しく歌っていたんだ。「名〜もな〜い花に〜は名前を付〜けましょう♪」ってね。
 こうとなればこの後に始まった宴会も楽しくない訳がない。焼酎が入ったコップを片手に今までの旅の思い出を肴にして大いに語り合う。僕らも気付けば北海道に来てもう1週間も経っていた。楽しかった時間は本当にあっという間に過ぎていく。僕らも北海道を満喫しているライダーの顔をしているのかな?と思ったがすぐに思い過ごした。これだけ楽しんでいるんだから当然してるに決まってるんだから。

 こうして最北端の地で迎えた夜は今日も楽しく更けていった。











[ ウェブ担当者よりこのページの・・・あとがき]
 やはりこのページから写真の掲載はガクンと減った。大きく扱う写真もない。通常、数百枚も撮っていれば、数枚くらいの“まぐれ当り”があるものだが、残念ながらそれもないようだ。こんど会ったらしっかりと写真の撮り方を教えておこう。
 それはさておき、30年ほど前に私が最北端の宗谷岬に行ったとき、延々とスピーカーから流れていた“♪流氷とけて〜春風ふいて〜 ・・・ハマナスゆれる〜宗谷の岬 ♪” これはダ・カーポが歌う“宗谷岬”という曲。木村青年が聞いたのもたぶん同じ曲だろう。そしてそれはけっこういい歌なのだが、宗谷岬にいた30分以上の間、ぶっ続けで曲が流れていたので、その地を離れてもヘルメットの頭の中は“〜宗谷の岬♪”とこびり付いていた。そんな記憶がある。 ・・・というか、宗谷岬にそれしか記憶がないのはサビシイ。。。



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