外浦海岸、そこには伊豆に来ると必ず立ち寄る万宝(まんぽう)というヒモノ屋がある。たいへん不幸なことに、釣りにはまったく興味のないカミさんと坂上カメラマン、その二人は店に預かっててもらい、私はひとりVマックスで海岸に向かう。
この日は風があり波も荒いが、私のような名人の域に達した釣り師には、魚にちょうどよいハンディを与えているようだ。悪条件など私の釣りには関係ない。
狙う魚はキス(白ギス)。それも刺し身にできるような25センチクラスの大きなキスだ。淡いピンクが白っぽい魚体にうっすらと輝く細長く美しい魚である。その白身の味ときたらたまらない、言葉に言い表せられないほど上品なのだ。そういえば万宝のオヤジの息子、勇一君が言っていた。
「昔は大きなキスをヒモノにしてたみたいだけど、今は漁が少なく値が張る高級魚だから、仕入れも販売も困難で……」
「じゃあ、俺がササッと釣ってくるから」
ということで万宝親子に刺し身+ヒモノをご馳走しよう。
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万宝の勇一君「最低このくらいのキスを釣ってくださいな」・・・私を誰だと思っているのかね、名人だよ、名人! |
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まあもし20センチ程度のキスでも天ぷらが旨い。我が家ではスーパーで売っているいったいどこの国のキス?だか分からない魚はぜったい買わない。魚屋のキスだって買わない。なぜなら、私がいつも釣ってくる超新鮮なキスの天ぷらの素晴らしい味を我が家族は知っているからである。 |