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幼い頃から魚を食ってるだけあって健康そのもの、歯も骨も丈夫な勇一君。
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私が万宝に初めて訪れたのは8年前である。知人のカメラマンから「旨いヒモノ屋があるよ」と聞いて、伊豆一周がてら、軽い気持ちで立ち寄る。しかしその場で焼いて食ったアジのヒモノ「あれっ?いつもカミさんが買ってくるのと違うっ、旨いじゃねえか!」と、その後、毎年訪れる。
その頃の話相手はオヤジではなく、その息子勇一君。これだけ旨いヒモノなんだからもっと売れるはず、とホームページ作りをあれこれ教えていた。しかしである、、、
「オヤジはホームページをぜんぜん信じてないっすよぉ。『あんなもんでメシが食えるか!』って、新しいパソコンを買うために貯めた店のおカネ、さっき全部持って魚の仕入れに行っちゃいましたぁ〜」
それから3年間くらいだろうか、私が万宝に行っても、その頑固オヤジとは口を聞いた覚えがない。
でもしかし、それにもめげずホームページ作りを頑張った勇一君、その効果で徐々にお客さんが増えるようになると、
「やっぱりパソコンてすげえなぁ、おいっ」
と180度の方向転換。オヤジさんよ、息子を信じなさいって(俺も!)。
まずは息子勇一君に素朴な質問をする。万宝の地物の魚(地魚)ってなんだろう、って。
「困るんですよぉ〜、その質問。地魚といっても、すぐまん前の海で獲れるわけじゃないし〜」
地魚の定義なんてあやふやである。その地の海のどのくらいの距離までの魚を地魚と呼ぶか、地域によってまちまちなのだ。しかし真面目な息子は、すぐ前の海の魚を地魚と考えてるようだ。それを承知で意地悪を一発、
「でもさあ勇一君、あんたの店の玄関にある大きなカンバン、『地魚 万宝』ってあるけど、それってどうなのよ、インチキかぁ?」
「インチキじゃないっスよっ! あの木のカンバンは15年前のもので、その頃までは地魚もヒモノにしてたんスからぁ! まあ環境の変化ってやつかな、だんだん獲れなくなってきまして、、、」 |