風に乗って霧島温泉に向かう。




R-01ブーツを見せたかっただけの写真、かもしれない。


 肥後(熊本)から“SL人吉”“いさぶろう”と乗り継いで吉松駅、ここは薩摩(鹿児島県)の国である。

 真っ黒い車体を揺らしながら、特急“はやとの風”がホームに入ってきた。粋な名だ。
 しかし車両は“いさぶろう”と同じくキハ40系で、この形式は国鉄が普通列車として製造したもの。乱暴な言い方をすれば特急列車にはふさわしくないのだが、その粋な名と木目調に改造された車内のインテリアセンスで、ゆるそう。
 “はやとの風”は自由席と指定席のたった2両の特急気動車。実は前もって指定席を予約しようと手配したが満席で取れなかった。けっこう人気列車なのだ。そして乗客の半数以上は“いさぶろう”からの乗り継ぎ客。“SL人吉”からの客も多い。だから見覚えのある顔がおおぜい乗っているのである。・・・やはり鉄ちゃん列車なのかな、、、。





出発進行!

 ディーゼルエンジが唸りを上げて吉松駅を発車。ギアは1速から2速に入りスピードを上げる。しかしその非力なパワーは、エンジン音とは裏腹にたいした加速ではない・・・これ、文句をつけてるんじゃありませんよ、逆ですよ逆。このまったりとした加速感がいいのです。
 それではご案内しましょうか。。。








木目調の落ち着いた車内、なかなかいいですな。


特急らしからぬスピード!

吉松の次、栗野駅を発車するが超スロー走行。そして車内放送で左側の綺麗な池を伝える。「丸池は名水百選で・・・」。う〜ん、この列車は“先を急ぐ”より “見せる”特急なのだ。



大隈横川 (おおすみよこかわ)
乗る人も降りる人もいない。いやホームに降りたのは車掌さんと、こののどかな駅を眺める乗客。


しばし停車。 やがて反対方向から普通列車がやってくる。

通常は特急列車が普通列車を待たせるのだが、ここでは逆である。





そしてついに・・・“霧島温泉”駅 到着!




 この旅の目的地、霧島温泉駅に着いた。駅には龍馬のノボリ旗が勢いよく風にたなびいている。それは“はやとの風”の影響かもしれない。

 1865年、あの寺田屋で襲われ、負傷した龍馬は、妻のお龍とともにこの地に訪れている。のちに、ニッポン最初の新婚旅行といわれたその二人の旅、龍馬の人生のなかで、傷にも心にもいちばん癒された時間だったであろう。

 二人はこの薩摩の国に83日間滞在していたと伝えられる。このままその地で暮らすという選択肢もあっただろうが、龍馬はそれを選ばず、また「ニッポンを今一度 洗濯いたしたく」と、戦場に旅立っていった。そしてその2年後の1867年、何者かに暗殺されて、帰らぬ人となった。

 さて我らも霧島温泉の湯に浸かろうではないか・・・。



・・・しかし列車の中。


車内で何を買ったか?・・・“はやとの風”車内販売オリジナル品だったと思うが。


 龍馬通り:第二章 鉄の道、霧島温泉はこの旅の目的地である。しかしホームに3分間ほど降りただけで、また列車に乗っている。
 龍馬夫婦と同じように、温泉に浸かるのは悪くない話だ。しかしそれはさして重要ではなかった。・・・霧島温泉駅に立ち、この地で龍馬と同じ空気を吸う、、、ただそれだけで良かったのだ。
 しかしそのために、なんでこんなに長い鉄道編を制作しなければならないのか、は、まあ長崎ついでの惰性かな。いやいや、さまざまな列車に乗りたかっただけか。。。





嘉例川 (かれいがわ)
1903年、明治36年開業の、すでに100年を越えている木造駅舎。“はやとの風”はこの駅を乗客に見学させるため、数分間停車する。



そこらの特急とはハートが違う。お客が残らず乗車するまでは、勝手に発車しないのである。




薩摩の車窓・・・でも寝てるし。
 それにしても、まったく先を急ぐことのない特急列車だ。吉松〜隼人(はやと:肥薩線終点)まで、次に来る普通列車の所要時間が52分だというのに、いかにも速そうな名の“特急 はやとの風”は56分かかる。割り増し料金を必要とする特急がドン行より遅いなんて、全国ここだけだろう。もしこの特急の性格を知らずに乗ってしまう客がいたら、さぞイライラするだろうな。が、しかし、今日の乗客は皆さんは満足顔。急ぐことだけがサービスってわけじゃあないのですよ。(特急とは特別急行・・・“特に急いで行く列車”の略、なのだが)
 これまたJR九州にアッパレ!





肥薩線終点の隼人駅:久しぶりの架線。電車はこれが切れると動かないが、ディーゼル気動車は無関係。
左は電車特急“きりしま”。中央の白いのは我が特急より速いドン行。ちなみに「発車は知らせますから、どうぞ写真を撮ってきてください」と、車掌さんの粋な計らい。




隼人を発車してしばらくすると、列車は鹿児島湾(錦江湾)沿いを桜島を横に走りつづける。・・・でも電線がじゃまだし!
すると車内アナウンス。「左に桜島が見えておりますが、この先は車窓に電線が入りません・・・」 かゆい所に手が届く、といった感じ。

で、こういった写真(↓)が車窓から撮れるわけで、、、。





終着駅 鹿児島中央に到着。ご苦労様です、運転手さん。


“はやとの風” 1時間45分の旅は終わった・・・。
[ 吉松〜鹿児島中央間の運賃1430円(長距離キップで通過ならもっと安い)+特急券500円 ]





 鹿児島市内には、大島紬(おおしまつむぎ)の織り元である関絹織物、そこに関健次郎という、ぶっきらぼうな飲み仲間(取引先ともいう)がいる。このまま素通りしては可哀想と、一杯つき合ってあげたいのだが、やはり素通り。
 もしこれを知ったら、今日東京に帰る飛行機を変更すればいいじゃないか、とぶっきらぼうな健次郎氏はきっと言うだろう。しかし我らは格安チケットで九州に来ているので、変更はきかないのである。またにしよう、芋焼酎をぶっきらぼうな健ちゃんと・・・あまり言うと、ほんとうに怒りそうだ。

 さて熊本に戻ろう、2羽の“つばめ”で。。。


 ・・・次でやっと最終話。こんなの読んでる人、いないだろうに最終話。


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