「ところで、伊勢エビは一昨日で終わったって港のお兄ちゃんが言ってたんですけど、今日はもうないんですかねぇ?せめて殻とか……」 「あななたち、伊勢エビ食べたいの? うーん。トミエちゃんとこならあるかも……」 おぉぉ、文明開化ならぬ運命開化の予感。三橋さんとても乗り気。喫茶店のお姉さん(サービス表現)とお客さんが2人で携帯電話を取り出してやり取りした後に、お客さんのこれもお姉さん(同サービス表現)が自転車で連れてってくれるという。そんなこんなで、トンチンカンな朝食を終え、充分になごんだあとに港へ向かう。外へ出ると、ポカポカ陽気と伊勢エビの予感で、土佐最高っ!! 伊勢エビに向けて爆走開始っー!! なんて無意味に拳を突き上げてみたくなる。先頭は自転車だけどね……。サイックリング、ヤッホー!! |
志和港の小さな船着き場に面したコンクリートの上に、簡易やぐらが組まれ、その中で網の手入れをしている。その一角にトミエちゃん夫妻もおりまして、我々が訪ねていったら港から直径1mくらいのカゴをザザーッと引き上げた。 パパパパッパーパーッ「伊勢エビ!」 トミエちゃんの旦那さんが、ドラえもんに見えるくらいの感激を噛みしめつつ、カゴの中に目をやれば、エビ、えび、海老……といるわ、いるわ。 |
三橋さんは大興奮で、40cm超の巨大なエビを手に取りあげ、顔を寄せ、頭に載せ、懐に入れ……大島さんも久しぶりに、フォトジェニックな被写体に出会えてやや興奮気味だ。うどん先生だけは、微笑みながらそんなおじさんたちを見守っている。冷静なのね。 カゴの中には、ウジャウジャと伊勢エビがおりまして、その中には手のひらほどの足袋エビ(ゾウリエビ)も入っている。背側は、漫画みたいでかわいいものの、腹側はプレデターみたいで気持ち悪いエビだけど、みそ汁にしたら美味しいらしい。 |
足袋海老 |
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左は、トミエちゃんの旦那さんで本物の海の男。そして上は伊勢海老にビビるニセモノだが、どことなく高倉健に似ている。 不器用ですが。。。 |
写真を撮るだけでは申し訳ないので、東京の家族に送るという三橋さんと大島さんが「ドヒャ〜」とか言ってぶったまげているので、何故かと問うと、100g500円+オマケと信じられんくらい安い。と、ここで、さらにドヒャ〜な展開に。 「エビ……食ってくか?」 トミエちゃんの旦那さんが、なにげにおっしゃる。けれど、その素晴らしい発言の意味を飲み込めない。 「いや、ここで食べるんじゃなくて、送るんですぅ」 せっかくだから、ここで食べちゃいましょうよぉ、と私が言いかけたとき 「いやぁ、これはサービスするから……」 と旦那さん。イヤッホーッ! グレイト土佐! グレイトトミエちゃんの旦那さん!! なのである。グレイトな伊勢エビを購入した、三橋さんと大島さんもグレイトぜよ!! かくして、漁港の片隅で、ついさっきまではピチピチと跳ねていた中サイズの伊勢エビ君が、透き通るようなプリプリとした刺身になっていらっしゃる。その身は、甘エビのようなほのかな甘味があり、歯ごたえもシャキッ、シャキッとしていてグレイトずくし。 「美味いですぅ」 「甘いですぅ」 「モチモチですぅ」 「食いしん坊バンザイ!!」 思わず口から出てくる言葉に嘘偽りはなく、次々に箸が伸び口に含まれ、あっというまに伊勢エビ終了。4人で1匹だしね。 |
なんつったって、この伊勢エビ君は、この撮影の5分くらい前までは、新鮮組に入隊させたいくらいピチャっとか跳ねてて、大騒ぎだったんだから。なのに、獲れ獲れピチピチエビ料理〜なのよ。あぁん、美味しいよぉ。 |
「これは、みそ汁に入れて飲んだら美味いでしょうね……」 ってなことを、残った伊勢エビ君の頭にむかってささやいていると、グレイト×2の展開!! 「みそ汁……飲んでくか? おい、作ってやんなよ」 軽い目眩をもよおしそうな展開に、ヘビメタ状態で頷くばかりの4人である。 食欲の秋だと意気込んで四国まで来て、戻り鰹にも伊勢エビにも出会えなかったら、傷心の秋になってしまうところだったが、ここにきてバクバク隊完全ふっかーつ。 なぜか再び、喫茶なごみ店内に戻り、伊勢エビ汁を待つ。 パンパカパーンと出てきたのは、合わせ味噌に浸かって真っ赤に染まったエビの頭。ダシがたっぷりと出た汁に加え、殻の中を探ればまだまだ身が入っているし、脚の中に割り箸を突っ込んでもカニのように身がプリプリっと出てくる。 |
すっかり気分も上々で、食後に再び氷コーヒーなんぞを飲みつつトレビアーンな正午なのであった。そう、気が付けば、とっくに午後になっている。秋の陽射しは恐ろしいほどにスチャっと落ちるのに……。 名残り惜しいが、我ら先を急ぐゆえ、これにて御免、と”なごみ”を後にする。峠道の途中から眺める志和は、幸せな味と暖かさにあふれているのだった。 |
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