何台かでツーリングに行って、並んで走らざるを得ない状況ってのがありますねぇ。その場合、どこを走るのが好きですかぁ? 私は、一番後ろからデレデレ付いていくのが好みでぇす。先頭は、ペースだとか、ルートだとか責任が重いし、中盤は前も後ろも気にしなくちゃいけない。けれど最後尾なら、行き先さえ確認しておけばどうにでもなるし、いざ追いつこうと思えば、何とかなるからね。自分のペースが作りづらいマス・ツーリングでも、わずかながら自分のペースを作りやすいのが最後尾なのよね。
 まぁ無責任なだけだし、結局は“走り”に行くなら複数台数のほうが面白いけど、ツーリングなら独りのほうがなんだかんだで気が楽だモンね。



 そんな、独り上手な私が先頭を走って栗焼酎のある大正町を目指していたのは、過去にも何度かこの道を通っていたから。沈下橋の場所も知っているし、だいいち三橋さんの後ろを走っていると、栗焼酎へ熱い想いのせいで、涎が後ろに飛んでKH状態。2ストじゃぁねぇんだから、捨てシールドが欲しいぜよ、と誇大表現をしつつ先頭を走る。
 それにしても恐るべし高知の内陸……なのである。ついさっきまでは志和でポカポカ小春日和とイキイキ伊勢エビを堪能してたのに、峠を越えた瞬間から急に寒いじゃねぇか。風はピュ〜っと鳴くし、陽射しも心なしか弱っちぃくなってきやがる。
 いかんぜよ……この先は、もっと山の中ぜよ。

スピードメーターの針は100Km/h弱の制限速度内で快走、
「西土佐高速道(仮想)」四万十インターチェンジ付近にて。・・・・・・信じられないくらいの追い風参照。

 四万十川に沿って走る国道381号線は、まことに快適。交通量は少ないし、ペースも速い。なので先頭にいる私は、ほんわかといい気持ちで快走を試みたい。けれど、こんな時に限って、あのいや〜な赤いハタをふる集団がいるんだよなぁ……という不安も拭えない。行きつ戻りつ思案橋、道の横には沈下橋。幕末の日本で、先頭に立って駆けめぐった坂本龍馬には申し訳ないが、やっぱり先頭はイヤぜよ。
 四万十川に掛かる沈下橋は数多あるけれど、橋自体の構造が美しいのが向山橋で、この国道381号線沿いにある。まあ、総合的に見れば風光明媚な橋や、フォトジェニックな橋は他にもあるのだけれど、時間の都合もあるからね。んで、この橋に立ち寄って相変わらず清らかな流れを間近にしよう。


 川は流れて どこどこ行くの♪
 人も流れて どこどこ行くの
 そんな流れが つくころには
 花として 花として 咲かせてあげたい
 泣きなさい 笑いなさい
 いつの日か いつの日か 花を咲かそうよ


 ありゃ、「花」♪は沖縄じゃん。

「ほうら三橋さん、魚がたくさんいるでがしょ……」
 と呼びかけているのに三橋さんはそわそわしながら、その向こうにある予土線の線路に惹かれている。そう、三橋さんはまごうことなき“鉄ちゃん”なのだ。だから今回も時刻表のコピーなんぞを持参して、高知のディーゼル車両の話を熱く語っていらっしゃる。バイク乗りには鉄ちゃんが多い……なぜだろう。
 その横では、つぶらな瞳で遠くを眺めるうどん先生。聞けば四国の環境問題にも詳しく、以前この近くの家地川ダムに来たことがあるという。ダムとはいっても高さがないので堰(セキ)扱いらしいのだが、この堰の水は山の中を通り太平洋に抜け、わずかながら発電をしているという。そして、この堰よりも下流の水量は少なく、死んでいるともおっしゃる。なるほど、本当に純粋な、なんの堰もない清流だと思い込んでいた私は少しガックシ。でも、久しぶりに訪れた沈下橋と四万十川は、相変わらずの清流だと感極まる旅人のセンチメンタルなココロ。

 おセンチなので、橋の下に降りて我がデジカメで水面ギリギリから、ゲージツ的な橋の写真でも撮るべえかと構えていると事件発生。ぬわんと、我がベストが水に浸かっているじゃありませんかぁ。どひゃ〜と写真も忘れて飛び退くものの、ポケットが濡れてる。やばいですぅ。ポケットの中にはビスケットが一つ……じゃなくて、携帯電話とか、地図とかメモとか財布とか……わりと大切なものが入ってるんでやんす。メッシュポケットには鮎がかかっているわけでもなく、本日何度目かのガックシ。と、三橋さんが橋の上からこうおっしゃる。
「こらこらこらこら、なにしやがんでぃ、うちのライディング・ベストを水につけやがって。ダシなんかでねぇぞい。だいたい水が付いたくらいでオロオロしやがって、みっともねぇぞぉ。そいつは試作品の防水加工仕様だからなっ」
ヘルメットをかぶっているので
左の方が30年前の高倉健だとは
誰も気づかないだろう。
しかし、
その頃にはたして
ケイタイがあったのか。

幸福の黄色い四万十川にて。
 おぉぉ、鼻の穴が3倍くらい大きくなってるぞ。でも、ポケットの中に、手を入れるとアラ不思議、携帯電話が濡れてなーい。おっ、着信履歴はっけーん! 大きなポケットにすっぽりと納まっていた地図も濡れてなーい。これぞ芸術っす。合格っすよ、おやっさん、うぅぅ。
「なにも、泣くこたぁねえじゃねえかぁ。新作だからよぉ。ん!? 新作ってことは、次の実験バクバク隊は高杉晋作を訪問するってかぁ?」
 すげえこじつけが出たところで出発。その先の道の駅四万十大正で歌う公衆便所を堪能。さらに売店にて、土佐四万十と判を押された檜のまな板が、前日に三橋さんがお土産に買った檜のまな板よりも安いことも判明したので、いよいよ栗焼酎の蔵元である無手無冠(むてむか)に行こう!
 道の駅からは、わずか数分で無手無冠到着なのだ。


健さん、まな板を買う。
そしてブルーハーツを口ずさむ。
リンダリンダ〜♪





みなさんもよ〜く自覚しましょう。
(大正町少年育成センターの張り紙)

自分ひとりぐらいと思って
リンダリンダを歌う
すると
地上に1億あまりの
どぶねずみが増える

ド〜ブネ〜ズミッ みたいに〜♪

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