いざ出港!〜1日目〜
                
 東京から2時間で大洗港に着いた。午前中まで降り続いていた雨があがり、カッパを着ずにすんだのは幸いだ。気温は低い。いわゆる梅雨寒というやつだ。常磐自動車堂の美野里PAでは22℃だった。

 昼過ぎに家を出て事前練習どおりに見事なバッギングをしてからセロー号の整備をしにバイク屋に立ち寄った。タイヤの空気圧やチェーンのたるみをチェックしてこれで万全と思ったら、フロントブレーキのメッシュホースの付け根部分からオイルがにじみ出ているのを見つけてしまった。以前に直したのに...。たいしたことはなさそうなので帰って来てから直すことにした。



ここから少しオイルがにじみ出ている          

 今にも降り出しそうな空模様だったが、東の空は明るい(気がした?)のでカッパを着ないで14時過ぎにバイク屋から出発した。途中、先日買ったばかりのレイングローブを取りに家に戻った。レイングローブなど使うことのない天候に恵まれたいものだ。週間天気予報ではこの先1週間、北海道のどこにも雨マークは出ていない。気温は低そうだが、雨の予報が無いのは嬉しい。家に寄る途中、仕事中のK氏にばったり遭遇する。単なる偶然だが運命的なものを感じた(嘘)。
「おい!仕事しろ!」と、私の旅の計画を知っているK氏がクルマの窓を開けて叫ぶ。
「気をつけて、いってらっしゃーい!」という声に見送られ、彼とは3秒の会話で別れて交差点を右折した。
 大井南ICから湾岸道路に乗り葛西JCTを左折して常磐道を目指す。クルマの流れはスムーズで、箱崎を経由しないで正解だったと思う。しかし寒い。ジャケットの下にトレーナーを着込み、ズボンは地厚な鎧ジーンズを履いてきたというのに、かなりの寒さを感じる。雨上がりで湿度が高く大気がひんやりしているせいかもしれない。走りながらヘルメットのベンチレーションを閉じたほどである。7月中旬というのに…。
 北海道はもっと寒いんだろうなぁ?などと思うとさらにゾクゾクしてくる。防寒着は某ショップの反則サンステートフリースとカッパしか持ってきていない。
それを着ても寒かったら厳しいものがある。やっぱり冬用のジャケット
にすれば良かったか?(実は出発直前までかなり悩んでいた) いや、明後日の旭川や小樽方面は25℃を超える予報だったはずだ。なんとかなるだろう。水戸あたりで雲間から青空が見えてくると気持ちも晴れてくる。そう、私の気分は天候にかなり左右される。だからと言って雨が嫌いというわけでもないが。
 高速道路を水戸大洗ICで下りて、国道51号線を20分ぐらい走ると殺風景な海岸べりに大洗港フェリーターミナルが現れる。出港2時間前に到着し乗船手続きを済ませて乗船待ちの列にセロー号を列べた。バイクは30台ぐらい列んでいる。ほとんどのライダーがソロのようだ。確かにこの時期に仲間と連れだっての旅行は少ないであろう。3年前の時と比べて(その時は八戸港だったけど)250ccのスクーターが多く目に入った。荷物をいっぱい積めるし、楽そうで羨ましい。でも、大型スクーターでダートを走り回る気にはなれない。大型スクーターでの北海道ツーリングは定年退職してからでも良いと思う。20年後に650
ccぐらいのスクーターで来ることにしよう。
 17時30分、バイクの乗船が始まる。いつもながらドキドキさせられる瞬間だ。あー、そうだそうだ、この臭い。オイルと潮の香りが混ざった独特の臭いが何とも懐かしい。


     大洗港フェリーターミナル


 フェリーは7階建てで、船と言うよりビルのようだ。2階にバイクを停めて、6階までエレベーターで移動する。ひとつしかないエレベーターの動きが遅いので行列ができてしまっていた。部屋は二等寝台。東日本観光赤坂見附支店のお嬢にぬかりは無かったようで、間違いなく予約はできていた。お礼に富良野からメロンでも送ってやろう(嘘)。二等寝台は二段ベッドと勝手に思い込んでいたのだがそうではなかった。ベッドの上で立ち上がって着替えができる高さがありなかなかよろしい。どうやら「ドライバーズルーム」というかつては長距離トラックの運ちゃんたち専用に用意されていた部屋を二等寝台として解放しているよう
だ。壁の案内図には「ドライバーズルーム」と書かれた上に貼られた「二等寝台」のシールが剥がれかけていた。そういえば、乗船待ちの時に大型トラックのコンテナ(貨物)の部分だけを残してトラックの頭部?のみがせわしなくフェリーから出たり入ったりしていた。フェリーにはコンテナだけを積んで、北海道で別のトラックがそれを引いて走るシステムなのだろう。なるほど経済的だしドライバーズルームも空くわけだ。フェリー会社には経営を合理化して、是非とも倒産から立ち直ってもらいたいものだ。
 廊下の向かいには「ドライバー娯楽室 トラック運転手以外の方の入室はお断りします」と書かれたプレートが貼り付けられている。いったいどんな“娯楽”が営まれているのだろうか?実に妖しい…。


↑ 二等寝台(ドライバーズルーム改) ↓

 18時30分、定刻どおりに「ばるな」は大洗港を出港した。ゆったりとだが少し揺れる。こうしてパソコンで駄文を列べていても、ゴォーという音と揺れを常に感じている。M氏ならひとたまりもないだろう。
 缶ビールを呑んで早く寝た方が勝ちであるが、エンジン音がけっこうやかましい。333号室は船の最後尾近くにある。特等室や一等室は前の方にあるので、船の中では前の方が高等なのであろう。船内にはレストランや売店以外に、ゲームコーナーや映画館がある。映画館ではアーノルド・シュワルツネッガーの「コラテラル・ダメージ」を上映するらしい。見そびれていた映画だが見る気はしない。ゲームコーナーには画面にヌード写真が出てくる麻雀ゲーム機が3台あった。船内には子供だっているのに呆れたもんだ。東日本フェリーも倒産の危機に瀕して小銭稼ぎに必死なのだろうが、いくらなんでも品が無い。


 
(撮影すな!)

 出港して2時間半、とっくに日が暮れており窓の外は真っ暗で何も見えない。呑んだばかりのビールを排出しに?トイレに行くついでに7階のデッキに出てみた。意外にも寒くはなかった。船窓から漏れる明かり以外にはまったく照明の無い真っ暗闇だが、見上げれば満点の星空。そして東の水平線の少し上に艶めかしく輝くオレンジ色の満月。そう、すでに“日常”から脱出しているのである。ケータイももちろん圏外だ。嬉しい‥‥。



<今日の走行距離:154km>



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