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※写真は全て坂上氏のものではありません。カタログ完成まで筆者フォトで我慢願います。


 「坂上さんの奥さんは、信州の出身だってねえ。うちのカミさんも信州生まれなんだけど、え、なに、南佐久郡、それも同じってのは偶然だねえ。坂上さんは? 四国の讃岐〜! じゃあ、蕎麦を食うか、ウドンを食うかでもめたりしない?・・・」 そんな他愛もない話からカタログ撮影の依頼をする。まあ、仕事なんてそんなものだろう。
 「でね、今回は秋冬カタログの繊維編イメージカットを信州で撮るんだけど、ひとつ難題があるのですよ。梅雨時の信州は、いつもより増して緑一面の世界。分かっちゃいるんだけど、それを秋冬のイメージで撮ってもらえるかなあ〜。坂上さんの技術で、、、カラーでね。。。」
 「そんなの無理にきまってるでしょう。モノクロならなんとかなっても、カラーじゃぁ・・・季節をひっくり返すなんてできませんって。」
 「最初から無理って決めつけちゃダメでしょう。努力と根性、気合いと技術があれば、なんとかなるって、、、。とりあえず撮りにいきましょう。」
 かくして6月某日の早朝、弊社を出発、中央高速を小淵沢で降り、まずはR-299麦草峠へと向かったのである。
 







 前のページの久山カメラマン「男の世界、革ジャン」とはガラっと変わって、繊維ウエア編は対照的に「都会の夫婦が信州ツーリング」的な軟弱路線とした。モデルはカミさん(蕎麦ぎらいだが信州出身)とライターの石野氏(東北の入口、宇都宮出身)、二人とも都会派ではないし、プロのモデルではないが仕方あるまい。(4人のスタッフのなかで、私だけが江戸っ子である。自慢にはならないが。)

 さて、小淵沢周辺で最初の撮影を開始した。ライディングベストを着た秋のツーリング風景といったところだが、坂上カメラマンの出るのはため息だけ。周りは緑々、上を見やれば夏の空、道路にカゲロウ。これじゃあどこを撮っても夏でしかない。とりあえずのカットだけをおさえて小淵沢をあとにする。
 目的のR-299麦草峠は標高2000メートル強もあるのだから、草木もそう青々していないだろうと想像していた。が、しかしその期待むなしくハズレ。自然は我々に美しい初夏の姿を与えてくれる。当然だが。
「やっぱ、坂上さんの技術でもダメ?」
「ダメ、自然には勝てないでしょう。」
「もう少し根性と気合い入れても? ギャラをはずんでも?」
 「・・・うぅ〜ん〜、どうかなぁ〜〜?」
※決してお金で動く人ではない!(ような気がする)
 
30代半ばの夫婦(無理は承知)が信州ツーリング、といった設定。なお、パトは仲間ではない。

500mmレンズとの格闘。

ここ小淵沢でも標高1000メーターほどあるのだが、暑い!


 悪戦苦闘の信州、カメラもレンズも撮った人間もちがうけど、カタログに掲載するであろう雰囲気の写真をちょっとだけお見せしよう。なお、お願いです。初めから季節感を頭から外してください。この件は十分反省しておりますので。。。


奮闘努力の1日目










「だれがどう見たって初夏の山の中じゃんかぁ、あ〜あぁ〜」
あきらめの早い石野ライター(左)と、あきらめきれないで岩の上までよじ登って撮る坂上カメラマン(下)。

 こうして1日目の撮影を終え、麦草峠を素早く駆け下り今夜は反省宴会、、、いや〜あ、そう簡単には酒を呑ませてくれないんだな、これが。すでに中央高速を降りてからやな感じだったBMW F-650GSのチェーンがついに外れたのだ。道端で工具を取り出し、チェーン調整をしつつ掛け直し走り出すが、わずか300メートルでまた外れる。そしてまた掛け直し走るが今度は1000メートルで「ガッシャッ、ガリガリガリ・・・」、チャリンコじゃねえっつうの。3度目の正直は時速20キロ以上出さないで走ると、カシャンカシャンと異音はするものの外れずにすんだ。しかし、トラックにあおられ、バアちゃんのチャリと並走し、おまけに田んぼのカエルにまで抜かれる始末。今夜の宿、“あさま工房”までの7キロがどれほど長かったことか。

キズだらけのF-650GSのチェーン。
前のオーナー、某A出版の広告部H氏が、
純正以外のスプロケを着けたためにこうなった。
多大なる損害(修理代だけでなく、後日レンタカー
借りて引き取りに行った)を受けたので、
広告1回分停止処分を受けてもらおう。
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