P-6

 朝、いるかはいない“いるかホテル”の前の浜には、たくさんのカモメがやってくる。数メートル先を気持ち良さそうにビュンビュン飛んでくるのだが、そんな光景を写真に収めていると、突然、鳴き声が騒がしくなり、散らばるように遠ざかってしまった。なにも悪いことしていないんだが、ただカメラを構えているだけなんだと、ファインダーから目を離すと、カモメやカラスとはあきらかに大きさの違う鳥が飛んで来た。オジロワシだ。


カメラから数十メートル先を飛行中のオジロワシと、その下は逃げてゆくカモメ。まだ子供のワシだとホテルの人に説明を受けるが、そうとうな迫力。
オジロワシとカモメの空中戦もあるという。小型のカモメを捕食するわけで、けっこう凶暴。それにしても、羽を広げて悠然と飛ぶ姿はカッコ良すぎだ。
なお、子供のオジロワシはカモメの集団に逆襲されることもあり、そんな時は親のオジロワシが手助けに飛んで来るそうだ。ぜひ見たい光景だが、今回は捕食をあきらめて、山へと帰ってしまった。



いざ、知床横断道路
 さて、我々も山の峠へと走り出すことにする。“知床旅情”を唄いながら。「♪しれ〜とこ〜の岬に〜」、森繁久弥のジイさまのではなく、加藤登紀子バージョン。そんなことはどうでもよく、これから五大峠の最後を飾る「知床峠」は、ウトロ側の道とラウス側の道とでは少々趣が違う。朝、登ってゆくウトロ側は、カーブも勾配もゆるいが、対してラウス側は、箱根やいろは坂のように急ではないもののヘアピンカーブが点在し、勾配もきつい。ライディングにとっては一粒で二度おいしい峠といえよう。しかし、昨日までの峠めぐりがすべて晴れていたものの、なんだか今日は雲行きが怪しい。峠まで走っても、どっしり構えているはずの羅臼岳は、姿を現さない。
 
ウトロの街を出ると、すぐ知床峠に向かう上りが控える。

知床峠ウトロ側

曇り空ではあるが、快適なウトロ側の上り。カーブもゆるく、70〜80km/hで巡航。


雲におおわれた知床峠。かすかに羅臼岳が見え隠れ、今日は北方領土も見えない。

知床峠ラウス側

峠を下ること数分のラウス側で天気急変。青空のもと、羅臼岳がくっきりと現れる。

気まぐれ天気
 ウトロ側が曇り、峠は雲の中、ラウス側下りは青空、と結局は晴れて良かったなと思いきや、ラウスの町を通過中に今度は霧。たった30分少々の走りで、こんなに目まぐるしく天候が変わる。しかも気温は急激に下がり18℃! これでは腹を冷やさない優秀なサマージャケットも寒くてかなわず、雨が降ってるわけでもないのに全員レインスーツを着る。
 はたしてこの霧の先の行く手は、晴れなのか、雲りなのか、雨なのか。霧の中を出ないことには分からないが、北海道上陸初めての雨も多少なら良かろうと思いつつ霧を抜けると、、、らっ、雷雨かよ。


北海道には、急カーブの予告看板が多い。
信用して走ると「ぜんぜん急じゃねえ、減速してソンした」となる。
まったく無視して突っ込んでいくと「ほんとに急じゃねえか」とあせる。
まぎらわしいので “ ほんとに急カーブ ” と書いてほしい。
狼少年カンバンにぜひ注意。


峠のあとは、一直線
 知床半島の南の付け根あたりで海岸を離れ、内陸に入る。ここ標津は、まわりが牧草地、そして道はどこまでもまっすぐ。カーブといえば、交差点を曲がる時くらいといってもいいくらいだ。
 道道975号を開陽台に向かって走っている。過去に3度ほど標津を訪れているが、有名な開陽台には行ったことが無く、今回は家族に広大な景色でも見せてあげようと立ち寄ることにした。のだが、開陽台入口を前にして、また雷雨。で、断念。

標津のド直線
はるか地平線まで何も走っていない。これでも国道、R-244。

10kmほどの直線、道道975号を快走。


走りきるのがもったいないから、思わず停車。


上機嫌な母と娘。

ここ、開陽台近くの“北19号”直線ははあまりにも有名ポイント。「な〜んだ、やっぱりあんたも撮るのぉ」って言われそうだから敬遠しようかと思ったが、家族&ご存知ない方へのサービスカットということで。

収納・・・世の中にはこんなに優れたツーリングギアがある。  <広告>
RVM-05 メッシュベスト 2ヶ所の簡易防水ポケットを含め5箇所の多機能ポケットを持つ、最強のツーリングギア。料金所もグローブ外さず通過。
PRICE:\19,600
WB-1 ウエストバッグ 弊社あさま工房で丹念に作る丈夫な牛革製バッグ。1983年の創業以来、改良を重ねて現在に至る定番品。
PRICE:\14,300


牛と馬とオートバイ
 開陽台あたりの雷雨も5分走れば晴天となり、中標津の回転寿司“すしロード”で昼飯。さすが、ツーリングマップルやツーリングGO GOの地図に掲載されてるだけあって、駐車場のバイクの数は15台ほどと多い。その味は、手ごろな値段で新鮮、やはり東京の回転寿司より美味い。なお、なぜかツーリングライダーには「サケ汁」がサービスされる。食後に駐車場で一服しながら、いろんなライダーと話をする。釧路方面の天気は?、道路状況は?、ネズミ捕りは?等々、各方面からの様々な情報が得られ、「じゃあ、気をつけて」って別れる。なんだかみんないいヤツらに見える。いや、きっとそうだ。
 中標津町、別海町、浜中町と抜ける道は、牧場が多く、牛を眺めながら走る。広大な牧草地に元気な牛の姿を見ると心が安らぐのだが、よくよく考えてみると、その牛の革でライディングギアを作っている弊社。間を置かずちょっと心が痛む。

 太平洋に出て、霧多布。その名のとおり霧の中を走り、トイレ休憩と立ち寄ったところが“琵琶瀬展望台”パーキング。着いた時には、霧でまわりが見えなかったが、まもなく晴れてくると、出店はあるは、馬はいるは、湿原がみごとだは。。。






馬を見ると吉田拓郎の“馬”「♪馬が走ってく、馬が走ってく、でっかい鼻の穴おっぴろげて馬が走ってく♪」をくちずさむのです(知ってる人は40歳以上でしょうね)。ところでこの馬たち、“道産子”っていうんですかね、とにかくデカく、そして太い。地響きをたて、両手両足おっぴろげて馬が飛んでゆく。

駐車場の脇の掘っ立て小屋の出店は、地元特産のいろんなものを売っている。なかでもお気に入りは“小松のコーヒー牛乳”、これ、ほんとに美味いよ。ウソじゃねえ。



最後の宿泊
 カキ(柿じゃない)で有名な厚岸を通り、釧路に向かって走っている。なんだか早いもので、とうとう釧路が道内5泊目の最後となる。市内のビジネス系ホテルにバイクを置いて、特産品ショッピングセンターといった“釧路フィッシャーマンズワーフ”でお土産を買い、さて晩飯はどこで何を食うかと外に出ると、なにやらいいニオイ。ビルの脇、釧路川沿いにテントを張り、“ろばた”が営業中。もうここで決まり。
 このろばたは、あらかじめ金券を買って、店内(テント内)の好きな食材を求め、個々のろばたで焼いて食う。その食材も釧路ならではといった新鮮なものばかりで、しかも4人で7,000円(含む生ビール三杯)とは、けっこう安く楽しめる。


フィッシャーマンズワーフ
“ ろばた ”
選ぶのに苦労するくらい、新鮮な食材が豊富にある。 炭火は暑いが、すぐ外は釧路川河口の涼しい風が。生ビールの美味さは想像を絶する。 刺身でも食える活きている厚岸のカキ、ホッキ貝、ツブ貝。美味すぎて申し訳ない。


明日は道内最後の走行。
<<戻る 最終頁へ>>