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 朝起きて窓の障子を開けると、小雨。もうこれでツーリングは戦意消失である。
 宿の玄関の横の、源泉垂れ流し(もったいない)の側溝前でバイクに荷を積み、女将さんの見送りで出発する。
 鳴子温泉から国道108号を北西に向かって秋田方面をひた走る。
 しかし、なんと惜しいことか。この108号線は交通量少なく、路面といい景観といい一級品、特に新緑の杉林の中の走行は、素晴らしいの一言につきる。雨さえ降っていなければ。
 クソ長いトンネルを抜けると、いつのまにか秋田県に入るが、相変わらず雨は降ったり止んだり。こんなにいい道を写真に収められなかったのが、なおさら惜しまれる。

 やがて国道13号を北上、横手市を通りすぎ、休憩処の道の駅“雁の里 せんなん”の案内板。
 “あ・ら・伊達な道の駅”では伊達政宗のうんちくなどを述べて疲れてしまったので、ここでは単に休憩しようと思いきや、、、馬に乗った武将の像がドォ〜〜ン!と現れる。
 どうか、義経とは関係のないようにと願う。(歴史を語るのはたいへんだから) これから向かう八幡平の温泉へは遠いのだから。

東鳴子温泉の下車駅
小雨降る “鳴子御殿湯駅”


願いむなしく、その派手な武将像の名は“源 義家”(みなもとのよしいえ)
・・・源氏でやんの。。。
またの名を “八幡太郎”と呼ぶ義家は、間違いなく義経とつながっていると思われる。仕方がないので簡単に説明しよう。
八幡太郎といっても、北に位置する八幡平から名がついたのではなく、京都の石清水八幡宮からの由来。そして義経の100年近くも前に活躍した武将である。
だが、義経とこの八幡太郎 義家とのつながりは、少々強引につなげた伊達政宗どころではない。なんと、義経・頼朝兄弟のひい爺さんにあたる直系であった。(ま、これも家に帰って調べたんだけどね)


バアさまが喜びそうなまんじゅう菓子が豊富にある。と思えば「ここは酒屋か?」と思うほどの日本酒の数々。源 義家は両党使いだったのか。。。?

しかしどう見ても、不二家のペコちゃんがヨロイ、カブトを被っているとしか思えない。このへんは “あ・ら・伊達な・・・” と通じる東北独特のジョークか。



 みちのくの“道の駅”は恐ろしい。うかつに入ろうものなら、歴史の餌食になる。
 そんな歴史のワナに、こちらから入り込んでしまった所が “武家屋敷の街 角館”。
 しかし現在ある屋敷街の成り立ちは、江戸時代の初期からだから、きっと源氏とは関係ないと確信して詮索しないことにした。そうしないと、このツーリングのメインテーマ“極上の湯巡り”が薄れる。
 ということで、有名な武家屋敷が数あれど、ひとつとしてその門をくぐってはいない。(あとで思うに、見学だけでもしときゃあよかった。せっかく来たのに。)

 角館町の武家屋敷街は、保存活動も、その見せ方も立派だ。広い道路には電柱や目障りな道路標識、センターラインもない。アスファルトやそこに止めているバイクさえ写さなければ、江戸時代そのものである。もしバイク共々写すなら、「カタナとニンジャ」がベストマッチか。



ウドンといえば讃岐うどんが最も有名だが、秋田にも名物 “稲庭うどん”がある。


さてその味、ちょっと太めの温かいソウメンみたいな、、、。カミさんは美味かったと言うが、どうも私は讃岐うどんの方に軍配が上がる。おそらく1,000円という価格に期待しすぎたのだろう(観光地価格だが)。讃岐は100円、200円の世界だったから。

どこから買ってきたのかソフトクリーム。

雨の降る中、カッパ着て、美味いか?




 角館町を出るころに、雨は本降りとなってきた。晴れていれば見事なクリアブルーの田沢湖もやり過ごし、国道341号線を八幡平の山深く入ってゆく。
 広葉樹林が生い茂り、秋の紅葉シーズンにはさぞ素晴らしい景観だろうと思うが、緑豊かなこの時季も格別だ。クソッタレ雨じゃなければね。
 ヤケ気味にどんどんと前に進んで行くと、突然イオウのにおいが鼻につく。ほどなく、玉川を渡るつり橋の向こう岸に“新鳩ノ湯温泉”が見える。いい感じのシチュエーションだが雨で写真はパス。
 そして登り坂もいちだんと急になり、またイオウの匂いがかすかにしてきたと思えば“玉川温泉”の入り口。そうなんだ、バイクの旅なら標識がなくても匂いで温泉に近づいていることが分かる。車じゃあ味わえないけど、でも雨の時だけは車の方が少しはマシか。
 しかしほんとうに悔しいものだ。341号線沿いの素晴らしい広葉樹も、最高所付近の見事な高山植物群の満開咲き乱れも写真に収めることができない。

 嗚呼、なんて運がないんだと思いながら、国道341号から、県道23号に入る。通称 “アスピーテライン”、 今回の旅、待望のスーパービュー ワインディングロード・・・しかし濃霧。

 晴れていればさぞかし楽しいだろうヘアピンの連続を10mに満たない視界のなか、20km/hほどのチャリンコ速度で次々とクリアする。時折イオウの匂いがしては消える。辺りが見えないが、きっと温泉地を通過しているのだろう。
 やがてアスピーテライン最高所の秋田と岩手の県境にたどり着き、もうどこも寄らずに“樹海ライン”を一直線に下り、今夜の宿「松川温泉 松楓荘」に向かう。そこには至福の風呂が待っている。
アスピーテラインには、所々に温泉が吹き上げている。







松川温泉はあの真っ白い雲の下、樹海ライン中腹より。


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