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 しらびその朝、本日の仕事予定がある坂上カメラマンとはお別れである。
 荷物整理をしていると氏が浮かぬ顔で寄ってきて、「僕、もう一泊付き合おうかなあ」
 「え〜? 今日は仕事あるから帰るって言ってたじゃんか」
 「うん、携帯に仕事の連絡入ることになってたんだけど、ここ“圏外”でやんの!」
・・・そんなわけで、もう一泊、写真撮りのオッサンと同行となった。
 



氷点下まで下がったしらびそでも、セル一発のトライアンフと、始動に手を焼くF-650GS。
そしてカメラマンのポンコツ車との3台で、信州を南下する。




しらびそから、下栗の里に通ずる林道。
筆者が90年代半ばにここを走ったときは、全線ダートであった。


下栗の里は、このガケの下。


 上村 “下栗の里” は、標高1000m前後の高地に小さな集落があり、山の急斜面に点々と農家がへばり付くというように建っている。そしてそこから望む南アルプスの山麓は美しく、荒々しくもある。これがニッポンのチロルと呼ばれる由縁であろう。
 今回訪れたのは10月25日、あと10日ほどあとに来れば、紅葉も色鮮やかになっていただろう、雪を被った南アルプスもさぞ素晴らしかっただろう、と容易に想像がつく。
・・・しかし、雪を被った山が見えるということは、標高1000〜2000mの高地をバイクで走り回るわけだから、こちら側も雪の可能性が高い。過去の記録をネットで調べ、安全策をとって11月上旬を避けたのである。


下栗の集落中腹部、それでも標高979m。


エンジンを切って静かな山里を眺める。


F-650GSも静かに止まっている。
静かに、、、。





ちっ、違う!
エンジンに火が入らないのだ!


 「F-650また壊れたの?」 そう、坂上カメラマンと同行した去年の八ヶ岳でも走行不能となり、佐久のあさま工房に置いてったっけ。(前オーナーが社外品の不良スプロケ装着の為)
 今朝の氷点下で、どうやらバッテリーが急激に弱ってしまったようだ。これは坂上氏の車からチャージするしかない。
 「僕の車、ボロイって言ってたよねえ〜」 そうブツブツ言いながら車からブースターコードを出してF-650に繋ぐ。セルを押す・・・エンジンかかる。コードを外す・・・エンジン切れる。コードを繋ぐ、かかる。外す、切れる。
 「あっ、バッテリー、完全に死んだねっ、ボロイねぇ〜、捨てちゃいなよ!」
 近づいてきた道路工事のオッサンが、この6キロ少々先にガソリンスタンドがあり、ずっと下り坂だから惰性で乗ってったら?、と言うので、そうすることに。
 しかしガソリンスタンドにバイク用のバッテリーがあるはずもないのに、、、。




坂上氏ボロ車のお世話になるが。



「写真撮ってないで交代してくれや、坂上殿!」
こうして2キロも押し歩くが、下り坂はまだない。工事のオッサンのフカシにやられたぁ〜。
(※フカシ:以前、東京で言われていたが、現在では“ウソ”が常用)



むなしい・・・。



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