◆レポート:松下ヨシナリ 写真:五十嵐 豊


 唐突ですが、MOTO GPの後の10月14日、今度はその“ツインリンクもてぎ”を舞台に、俺自身がレースに出場することになった。 BMWフラットツインエンジン搭載車で戦う 「ボクサー・トロフィー」 だ。
 マシンは新型R1200Sって事もあり、知らないうちにレベルの高い「ボクサー・トロフィー・エキスパートクラス」 にエントリーされていた。
 まぁ 「楽しめればいいや」そんな軽い気持ちでサーキットに乗り込んだ。



 パドックに入ると、ピシッ! と引き締まった空気が漂い、なんだかワクワクして
きた。ピットには神奈川のBMWディーラー[クラフト]さんの手により、いつでもコースに出られるように整備された、ゼッケン53番のマシンが在った。コイツが今回、俺の愛車になる。


 クラフト店長の滝本氏が忙しく準備に追われている。彼も、俺と同じボクサー・エキスパートに出場するライダーなんだよね。しかもオッサン(失礼!)なのに速い! イカしたオヤヂさんなのだ。
 このレースで俺は、[クラブマンRT&チーム・クラフト]って事で、チーム・クラフトの一員としてレースを戦う。

 なんで俺がこのレースに出る事になったかというと、雑誌クラブマンの取材でボクサー・トロフィーには今年、何度か編集長が出場しているが、どーも成績が芳しくない。じゃぁーいっちょ俺サマが見本を!(ハナシ3割増しね)なーんてのは冗談で・・(笑)クラブマン編集長が締切前で青色吐息だから、その代役で出場とあいなった訳です。(笑)


 ところで、確かに俺の愛車は、ボクサー・ツインエンジンのR1100Sだが、実はR1200Sは機会に恵まれず試乗したことがない。しかも、よ〜く考えてみたら、ビッグバイクでもてぎを走るのは、05年のもて耐以来約1年以上ぶり。一抹の不安を抱えながらの走行となった。
 今回のボクトロ。ジャーナリストとしての参加は[ライダースクラブ]のクラキンこと高橋サトシ編集長と俺の2名だけ。しかもクラキン編集長はBMWのオフロードファイターHP2をスーパーモト仕様にして出場! う〜ん斬新だ。。。

 ボクサー・トロフィー・エキスパート(以下:ボクトロEX)クラスの優勝候補は、ST600などでも活躍し、ボクサーレースでは何度も優勝経験を持つ羽田ホンダの小川選手と、JSB1000に参戦しつつ、サンデーレースで大活躍の大貫選手が、ともに俺と同じR1200Sで登場。パワーで劣るR1100Sで驚異的な頑張りを見せる篠田選手も油断できないライダーだ。


 予選が始まると、上手いこと大貫選手の後ろにつける事に成功、セコ〜くタイムを上げて、まんまと予選2番手、フロント・ローをゲット!
 予選終わって、ポールポジションは小川選手、3位が大貫選手、4位が篠田選手、5位にチームメイトの滝本オヤヂ! 流石ですな〜!
 ちなみに、予選1位の小川選手から3位の大貫選手までが、従来の2分11秒686のコースレコードを更新! 小川選手なんて、2分10秒895だからね、凄いもんですよ。
 決勝前、かつての世界GPチャンピオン坂田カズート氏に「2分10秒は切ってこいよ!(笑)」なんて、有り難くも迷惑な(?)激励をいただき、2番グリッドにマシンを進めた。
この日のために、友達の瀬崎氏がわざわざ俺のために、「MATSUSHITA」のキリ文字ステッカーを作ってくれた。こうなると、俄然プロっぽくなってくる。嬉しかったし、なんだかヤル気が出てくるよね。


アタマには夫婦坂工房製[馬革ハンチング]が。レーシングスーツとの組合せもまた、オツなもんです。意外にマッチしてますな。


新型のR1200Sは、バンク角も深くなり、左右に突き出した「エンジンのヘッドは擦らない」って聞いていたけど、タイムが上がってきたらヤッパリ擦ってました(笑)


妙なスリーショットである。ミドレンジャーとキレンジャー? 真っ黒な俺は… 悪役かいッ!?(笑) 左から、今回お世話になったチーム・クラフトの親分、滝本氏。ライダースクラブ編集長、クラキン高橋氏。そして俺


BMWのスーパーオフロードマシン、HP2は、実に軽くて俊敏。排気量は1169ccで、車重はガソリン満タンの装備重量で199kg! 213kgのR1200Sより軽いよ。そいつをスーパーモトに改造して、オンロードタイヤを履かせたのがコレだ。相変わらずゲテモノ好きですな、サトシさん!(笑)しかし、キマッてるなぁー。


決勝レース、スタート直前の俺。フロントローは当り前だけど、前に誰も並んでないから景色が良い。ちょっと緊張気味の顔してますね。




 シグナル・ブラックアウトで決勝レーススタート。レース前にBMWジャパン武藤氏に言われた「今日は頑張って良いぞ!」という言葉に後押しされたのか、ずいぶん冷静に走れた(と思う)
 序盤、俺はトップでレースを引っ張るもタイムが上がらず、一時は3位まで後退。
 ブッツケ本番仲間(?)の大貫選手が中盤以降レースを引っ張った。残り4周(だったと思う)、俺は小川選手を抜き2位に上がり、次の周に大貫選手をV字コーナーで交し再びトップへ。タイムを見ると予選タイムを大きく上回ってる。
 1周だけ全力で飛ばしてみて後ろを振り返ると、2位の大貫選手がちょっと離れていた。
 ラスト1周
 「あれ? 俺、もしかして勝っちゃう???」と思ったら、急にリズムが崩れた。
 俺も、まだまだですね〜(笑)
 メインストレートを通過する時、ピットクルー達がエキサイトして拳を振り回してるのが見えた。
 なんか、それ見て笑っちゃって(笑)、突然「冷静に!」って言葉が全身を駆け抜けた。

 レースは最終ラップ、ダウンヒルストレート終りの90度コーナーで大貫選手が俺のインに飛び込み、最後のアタックを仕掛けてきたが必死に押さえ込み、最終コーナーをトップで立ち上がった。
 そしたら、前の周より、更に馬鹿騒ぎしているピットクルーが見えた。

 「勝ったぁ・・・!」

 優勝のチェッカーフラッグは麻薬だ。
どんなレースでも、一度コイツを受けるとまた、それを目指して頑張りたくなる。

 力一杯のガッツポーズと、ワケの分からない言葉をヘルメットの中で叫んだ。久しぶりにバトルを征し、本当に嬉しかった。

 最終ラップのタイムを見ると、2分8秒767!
 おぉ これって、コースレコードじゃねぇ? 俺ってすっげー! 
 なぁーんて思いながらピットに戻ると、2位の大貫選手の最終ラップが2分8秒364! ありゃ? コースレコードは取られちゃった(笑)

 まぁ 何にしてもスプリントレースでは、ホント久々の優勝! 素晴しくも嬉しい、思い出に残るレースになりました。
 コレだからレースはやめられません(笑)

 ふと、思ったんだけど、
 革のレーシングスーツってもう、完全にスポーツウェアだよね。 この技術やノウハウを“俺の革ジャン”にも投入しなければ!
 ただ、そのまんまヤルと、着心地は当然犠牲になる。上手い具合に着心地も、格好良さも両立した “俺流” のライディングウェアは創れないものか、、、悩みはまだまだ続きそう。“隠密の二輪防護服”のヒョウドウさんも、苦労してるみたい。どーしよーかなぁ
 うん。取りあえず “パリッ!” とした秋の空気を浴びにツーリングに行こう!紅葉の季節だしね。

 最後に、今回のレース出場にあたりお世話になったチーム・クラフトの滝本さんとクルーの皆さん、BMWジャパンの武藤さん、俺のヘルパーを買って出てくれた飯田氏、橋本氏、本当にありがとうございました!
 みんなで勝ち取った勝利です。コイツは!!

 てへへー 俺だって、たまには活躍してみたりもするんですヨ(笑)
可愛らしい「もてぎサーキットエンジェル」さん。ごめん、名前が判んないや(笑)


コレはまさに最終ラップの最終ビクトリーコーナー!最終的には#2大貫選手との一騎打ちになった。


シケイン状の最終コーナーを切り返して、後はスロットルワイドオープン!
最後の直線に突入! 大貫選手、こ〜んなにピッタリ接近してたのね(汗)写真見るまで知りませんでした。


俺が、勝利を確信した瞬間。よく見ると、まだコントロールラインまでもうちょっとあるのに、もうガッツポーズしてます(笑)
いや、それだけキビしくて、嬉しい勝利だったんですよ!






[HP編集部あとがき]
いつでもどこでもテンションの高い松下だが、表彰台にもいちばん高いとこに登る。4年前の乗鞍ツーリング爆走で私にマグレで勝ったが、今回のレースもマグレで勝った。いや、、、コヤツはほんとに速いかもしれない。今勝負しても勝てないから、10年後にヤツが衰えだしたら勝機がある。・・・でも私も同じように衰えるか、、、何かコソクな策を考えよう。

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