親が、子に負ける時は来る。
そんなことは承知しているつもりだが、
そう易々と負けるわけにはゆかないのである。
たとえそれがサーキット走行でも、、、
速いほうが偉いのである。

2006年9月21日、筑波サーキットに向かった。
俺の場合、3年前のモテギとナスの走行会以来久しぶり、しかし息子はなんだかサーキットにハマってるらしく、関東の小さなコースを年に10回ほどかよっている。・・・大丈夫だろうか。
筑波サーキットに着くと、一組の親子がニコニコしながら近づいて来る。
そういやあ、前日、俺のパソコンにメールが入っていた。勝負!ってな感じで。
そう、この親子、オヤジのほうとも勝負しなければならなかったのだ。ん〜、我が息子にも、特にそのオヤジにもぜったい負けられない。
気合い、入ってます、、、今日は。

2006年9月 文・写真:三橋(一部写真:カミさん)

 サーキット走行には、もうひとつ別の大きな目的がある。先日訪問した、浜松のヒョウドウプロダクツ社との “サーキット走行できる新型レザーウエア” の開発競争。その下見でもある。
 サーキット=レーシングスーツが当たり前だが、俺たちが作ろうとしているのは、ワンピースのレーシングスーツではない。
 「サーキットは走りたいけど、それだけの為に革ツナギを買うのはヤダ! ツーリング主体に使えて、サーキット走行可能な動きやすいの・・・」 みたいな。
 言葉では簡単だがその作りは、もの凄〜〜〜く難しい。特にレーシングアイテムを作ってない弊社にとっては。(正確には20年前までは作ってました)
 しかし、こちらから売ったケンカ、いや、勝負なので、これまたゼッタイ負けるわけにはゆかないのである。
 それにしても、なぜこうも敵ばっかし増えてしまうのだろうか。
ヒョウドウプロダクツ社の得意科目は、レーシングスーツ。サーキットでは数多く愛用されている。



「僕の勝ちだな・・・」 口に出して言わない性格だが、きっと心で思ってる兵頭社長。

 さて、走行会。 まだ走ったことのない人に、ちょいと説明しよう。
 ショップや雑誌社などのサーキット貸切の場合、ライセンスがなくても参加できる。基本的には革ツナギが原則だが、革ジャン・革パンでも可能な走行会もある。しかし転けた場合、身も着てる物も無事ではないだろうから、やはり革ツナギがお薦め。(でもその為だけに買うのが、、、という人に上記説明の弊社vsヒョウドウ社勝負服を思案中)

 今回の走行会は、関東に大型店を5店舗持つ “ライコランド”が主催。2006年の今年オープンした、弊社と同じ大田区の“環八蒲田店”は、売り場面積300坪と、弊社の10坪少々に比べてイヤミのように大きい。
 さあ、受付を済ませ、走る前のミーティング(いろんな説明)に参加する。ミーティングルームからは、どこかで聞き覚えのあるデッカイ声が聞こえてくる。


松下だ!(弊社HP“夫婦坂革ジャン改革”担当)。この走行会を仕切っている。


ゲストも豪華。左は元125cc世界GPチャンピオンの坂田氏、そして中央は元500cc世界GPの八代氏。こんな凄いお二人が初心者の先導を行う。


自称“単車オヤヂ”のご挨拶。こういった場合、話が長ったらしいことが多いが、この方は実にコンパクトでありがたい。

ピット裏では、各メーカーブースが出店。レアな品物もあり、買い物もできる。(発送可)


 ミーティングが終わり、配られた弁当をささっと食ってレーシングスーツに着替えよう。
 走行会は、1.速い(と思う)人 2.ある程度速い人 3.初心者 の3クラスに分かれる。当然、俺と息子は1番目で走る。(見栄もアリ)
 さあ〜て、例の親子はどこにいるのかな。まずはイッパツ、オヤジの方をつぶさねばならない。

おぉ〜、もうすっかりスーツ姿だ。息子(ダイスケ)のほうは余裕こいてる。

 実はこのオヤジ、自身のブログで自らを“単車オヤヂ”と称しているので、失礼ながらここでもそう呼ばせてもらおう。

 しかし、単車オヤヂとその息子のレーシングスーツ、よくよく聞くと、レンタルでやんの! 自分のレーシングスーツも持ってないのに、我ら(気分的には“俺様”)に勝負なんて、なんつう無謀な親子であろうか。同業社(バイクウエアの販売店という意味で)ということもあり、なんとしても負けるわけにはゆかない。

※ライコランド走行会では、レーシングスーツのレンタルもおこなっている。2000円と格安だが、やっぱ基本は自前のスーツでしょう。欲言えばオーダースーツでしょう! 俺たち親子は、当然フルオーダーレーシング! (でも他社製。だからデカイ声で言えない)


「○△@%$>>」 単車オヤヂ親子は、なにか作戦を練っているようだ。・・・それにしても20年前のBMWなの? R100RSとK100? ほかにいないですぞ、そんな古くて重いの。 こちらはサーキットとは無関係な姿のカミさんとその息子。バイクはスズキGSF-1200(俺)とヤマハのツーストR1-Z 250(息子)。人のこと言えない中途半端な古さである。

 単車オヤヂの前に、まずは息子と勝負せなばならない。筑波サーキットが5年ぶりなのはどちらも同じだが、ヤツは他のサーキットを今年だけで約10回、俺はどこのサーキットも3年間走っていない。
 ・・・ん〜、なんだか言い訳がましくなってきた。すでに気分で負けている。こりゃあ本気でヤバイ。。。





先頭は俺、直後に息子、そのあとにぞろぞろとヤバイ連中が。
[第一ヘアピンにて、カメラ:カミさん]


 息子のR1-Zが先にコースに入り、そのあとを俺が追う。2〜3周はタイヤを暖める走行、その後が勝負だ。
 息子のツースト250の後ろをそのペースで走る。GSFのパワーにモノをいわせ、長いバックストレッチやピット前のホームストレッチではいつでも抜けるが、やはり腕の差を見せつけるには、タイトコーナーの連続する第一コーナーから第二ヘアピンの間で抜き去ろうってのがショックを与える作戦だ。
 しかし、、、2周ほどチャンスをうかがうが、だんだんとペースが上がり、抜くことが不可能に思えてくる。
 ちょっとマズイことになってきた。俺の場合、もう全速で25分なんて走れない。とりあえずストレートで抜いとこう。
 でも次の周回には追いつかれる(それが上記写真)。息子に抜かれるのはイヤだ。ならばその前にピットに入っちまえ!
 ・・・勝ち逃げである。
第一ヘアピンを立ち上がって、シケインに向かう先頭の俺。


先頭切ってる写真は速そうに見えるが、実は抜くより抜かれるほうが多い俺です。

筆者と違って気合いの入った息子の走り



 一回の走行時間は連続25分強ある。だが、体力も気合いもそんなに長く持続できない俺は、15分走ってピットに戻り、松下に冷たいお茶をもらって(「ダッセ〜」と言われるが)、また走る。連続走行したら息子には勝てない。だから、少々インチキして勝利するのである。
 さて次は単車オヤヂだ。こりゃあインチキなんてしなくても圧勝まちがいなし。
 


ピース? ツーリングじゃないっつうの。

 そもそも単車オヤヂの走行クラスは、初心者向けの遅いクラス。その走りの写真を撮っていると、のんびりと優雅に、カメラ目線だし、ピースサインは出すし、、、とても気合いが入っているとは思えない。いや、これは作戦かもしれない。この日最後の別枠走行タイムでは、R-1やCBRに乗り換えるかもしれない。俺も人のことは言えないが、なにかインチキ臭い。そんな気配がする。
 そのクラスの時間が終了し、単車オヤヂはどこかに消えた。ちょっと情報を盗もうとその息子、ダイスケに問い詰める。
 「オヤヂはもう十分だって、私服に着替えちゃいましたぁ〜」
 う〜ん、なんという負けず嫌いなオヤヂだ。(これも人のことは言えないが)
単車オヤヂの不敵な笑み。この方は、何を考えてるのか分かりません。



<< ツーリングメニューに戻る 最終頁へ >>