2008年11月21日
 私は16歳でバイク遊びを知り、以来30数年間、絶え間なくず〜っと乗り続けている。これまでにいったいどのくらいの距離を走っただろうか。今から8年ほど前の20世紀末に、50万キロをゆうに超えていたのをざっと計算したことがあるから、現在ではおそらく70万キロ弱なのだろう。その間、バイクも50数台乗り継いでおり、バイクメーカーの売り上げに十分貢献している、いわゆるバイク馬鹿である。
 そんな私がバイク一筋の人生だと思われたら大間違いで、実はバイクよりももっと前、もの心がついたかつかないかの幼い頃から“鉄”(鉄道好き)である。当然、バイクより鉄のほうが私の趣味の歴史は長く、現在に至っている。すでに今までのバイク旅紀行で、時おり鉄道の写真や話を掲載していたので、気づかれた人も多かろう。
 ということで、今回のようなバイク&鉄道旅は、私にとって一石二鳥、カモがネギをしょって来るような仕事である。 ・・・仕事、そうです、これも真面目な仕事なのだから仕方が無い。ではどんな仕事かといえば、、、おっと、品川駅23番線に“のぞみ9号”が入線。これにカミさんと乗らなければならないので、その件はあとで少しずつお話ししましょう。

※今回の旅は鉄道専門用語が頻繁に出てくるが、どうぞご安心を。ちゃんと分かりやすく解説しますんで。。。


ほ〜ら、すぐにやって来た。。。


のぞみ9号:500系


新幹線は、うんと速い!
指定券を買う時、大阪方面進行方向右側の席を指定する(しかも7番から11番席=真ん中周辺は揺れが少なく、静か)。理由は富士山が見えること。そして日陰の席だから。


京都駅を出てすぐの右側には梅小路機関区がある。そこにはチラリと蒸気機関車の姿が見える。
 カッコいいじゃありませんか、500系。東海道・山陽新幹線の“のぞみ”には、300系、500系、700系、そして最新のN700系が走っている。私は新幹線で出かける時、かならず時刻表で乗る車両をチェックするのだ。
 “のぞみ”初代からの300系・・・もう古い。700系・・・ちょい古のブサイク。N700系・・・高性能だがやはりブサイク。そして500系・・・300km/hでつっ走るイケメン! だから500系をチョイスする。とはいえ、“のぞみ”は1日110本前後も東京から発車するが、そのうちたった2本しかない500系“のぞみ”に乗れるのは、よほどタイミングを合わせない限り不可能に近い。いや、タイミングを合わせるのが“鉄”のこころざしなのである。
 いや〜ぁ新幹線てのは速い。何度乗っても感心する。東海道区間では線路の条件が悪く、最高速度270km/hに制限され、なおかつ品川、新横浜、名古屋、京都とこつこつ停まるが、それでも東京〜新大阪間は2時間30分ほど。もし東名・名神高速に速度制限が無く、我がカワサキ12R初期型(最高速度300km/h少々)を全開で走らせても、まず適わないだろう。というより、12Rも我が身も全速開けっぱなしで大阪まで持ちこたえるだろうか、、、きっとどちらも壊れるだろうね、たぶん。(なお、この500系も、我が愛車12Rも同じカワサキ製品である。)
 ・・・こんなことを考えながら、気持ち良い揺れにウトウトしていたら岡山に着いてしまった。

東海道・山陽新幹線の場合、大判時刻表には車両形式名も掲載されている。(JTB時刻表2008年10月号より)



[さらに500系のご案内]
丸みをおびた500系、これで山陽新幹線内を300km/hでつっ走る。ちなみに、やたらとSHOEIヘルメットバッグが目につくが、新幹線とはまったく関係がない。・・・岡山駅にて。

500系:「砲弾型」の美しいスタイルだ。となりに停車している700系と比べても、その丸っこいカタチがひと目で分かろう。但し、“鉄”でない一般人にとっては、車内の空間が狭く感じ、窮屈感は否めない。
なお、残念ながら500系“のぞみ”の運命はそれほど長くはないだろう。いまのうちに乗っておくことをお薦めする。(2009年1月現在、東京発は7:30と12:30の2本のみ)
最新のN700系:どうだこのブサイクなツラ構えは。カモノハシとかムーミンと形容されても仕方がない。しかしN700系の性能は最高速度こそ500系と同じだが、加速力、コーナリングスピード共にそれを上回る。たった1度の角度だが、自身の車両を傾けて(車両傾斜システム)カーブを通過する、いわゆる鉄道のバイクバージョンだ。(いまや東海道・山陽新幹線の主役である。私は認めないが)




哀愁の急行列車

 岡山で新幹線を降りた我ら、まずは駅弁を買い、目的地津山への乗り換えでJR西日本の非電化ローカル、津山線のホームに向かう。そこに待っていたのは、全国JR線で、昼間に走る最後の急行列車 “つやま”である。 ※“急行つやま”は2009年3月のダイヤ改正で廃止。(ダイヤ:列車の運行時刻の図表。ニュースでよく「台風の為、列車ダイヤが大幅に乱れてます」と言われるソレ)


国鉄時代からの地味な車両(右)が“急行つやま”。その向こう側の派手なディーゼル列車は、四国宇和島行き“特急しおかぜ9号”俗称アンパンマン列車。カレーパンマン、バイキンマン、ドキンちゃん、しょくぱんまんにジャムおじさんと、キャラクター勢ぞろい。ガキは喜ぶだろうが、私はこういった車両に興味はない。

列車の側面にある“サボ”(表示板)。これを盗むコレクターもいる。鉄のファンとしては許せない行為だ。





たった2両編成の“急行つやま”である。






キハのキは気動車(ディーゼルエンジン)、ハは普通座席車両を表す。ちなみにモハなら電気モーター付の普通座席車両、すなわち電車。(※JR東日本の山手線などの電車は“E”と表示)
 「急いで行く」から急行である。もっと急いで行く列車に“特急”がある。特別な急行 の略だ。さらにもっと急いで走る列車が “超特急”。そう、昔、新幹線はそう呼ばれたもので、私の幼い頃も 「とうちょっきゅう(※超とっきゅう と言えなかった)に乗りたい」 と親にせがんだものだ。
 さてここで問題になるのは、“急行つやま”が2009年の3月で廃止となり、昼間に走る急行はJR全線から消える。となれば、急行があってこその特急、急行がないのなら、それはちっとも“特別な急行”ではないじゃないか! それってどうよっ、JRさん!。
 まあ、私ごときの“鉄”がぼやいたところで、どうなることでもないが、、、。
 そうそう“鉄”のことだが、“鉄”のファンにも種類があるから説明しておこう。私なりに大きく分けると3種類の“鉄”がある。
撮り鉄・・・鉄道写真を撮るためにはどんな努力も惜しまない。カメラメーカーに恩恵はあるが、クルマ移動が多く、鉄道会社の収益にはあまり貢献せず。
乗り鉄・・・愛読書は“時刻表”、古いのもぜった捨てない。運賃を払って、ひたすら乗ることに喜びを感じ、鉄道会社に恩恵をもたらす。ほとんどの乗り鉄の少年時の夢は“列車の運転手”。
模型鉄・・・幼い頃のプラレール(鉄道のプラスチックおもちゃ)に始まり、大人になっても、ジジイになっても鉄道おもちゃをやめない人種。Nゲージ、HOゲージなどがあり、けっこうおカネの掛かる趣味。

 その他に、車両鉄、録り鉄(走行音などの録音)、駅鉄、廃線鉄などあるが、私の場合の“鉄”は、先に書いた3種の鉄すべてだが、特に気合いが入るのは“乗り鉄”である。(撮り鉄はバイクでたまに実行中。模型鉄は自分の部屋がないので運休中。)
 なお、“鉄”は男の趣味、とばかり思っていたが、近年は“鉄子”と呼ばれる女性のファンも現れている。しかしカミさんは、鉄にまったく興味を示さない。


 おっとっと、“急行つやま”の話に戻そう。というより、ツーリング紀行なのにバイクの話題がまったくないじゃないかぁ! と聞こえてきそうだが、次のページでしっかり話しますんで、ちょっと待っててくだされ。終点の津山に着かなければバイクがないのです。
 で、下記の時刻表を見ていただきたい。

JTB時刻表2008年10月号より

 岡山発 津山行きの“急行つやま”は1日1往復。“快速ことぶき”は6往復である。“つやま”には運賃+急行料金730円が必要で、対する“ことぶき”は快速だから運賃以外の料金は不要。ではなぜ“つやま”は高いのか、、、速いからか?
 もういちど時刻表をご覧あれ。岡山〜津山間の所要時間、“急行つやま”65分、“快速ことぶき”67分・・・たった2分しかちがわない! この2分で余計に730円払うわけだ。
 では急行だから車両が良いのでは?、、、いやいや、どちらもドン行車両のキハ48系。正確にはドアの位置など内装がちょっと違うだけの差である。
 “乗り鉄”としては“急行”という水戸黄門の印籠みたいなもので、それに730円など喜んで払うが、はたして一般人はいかがなものだろうか。だからということで“急行つやま”は廃止となるような気もしないではない。


 カミさんと私は、すぐにでもバイクに乗れる状態で新幹線、そしてこの急行に乗っている。しかし、車内の乗客の誰ひとりも我らがバイク乗りとは気づかないだろう。これ、一般人にはどうってことないだろうが、バイク&鉄道ファンの私にとっては、おおいに自慢です。
 “急行つやま”が岡山駅を発車。ガァ〜ァ〜と6気筒エンジンの唸りを上げて、、、いい音だ。 ということで駅弁を食おう。

カミさんは栗おこわ弁当。



私は“さよなら0系”の印刷に魅かれて、でもシンプルな幕の内弁当。




フタを開けると、真っ赤なウインナーだぁ! おっ、フタに米粒が付いてきやがる。まずはそれを食って、、、。

急行列車で食う駅弁は、もの凄く旨い!

 駅弁を食い終わり、車内をうろつく。乗車率は50%に少々満たないといった感じだ。この“急行つやま”のキハ48系車両は、ノーマルエンジンならばたったの220馬力。しかし少々の上り坂でもフルノッチ(バイクならフルスロットル)でけっこうな速度で走るとこをみれば、ノーマルのDMF-15エンジンではなく、きっと積み換えているのだろう。ちょっと確かめてみようと後ろの運転席にカメラを抱えて行くと、気の良さそうなアンパンマン顔の車掌さんに声を掛けられた。どうやら私が“鉄”だとバレているようだ。
「お客さん、私に着いて先頭にいらっしゃいな。次の亀甲(かめのこう)駅で・・・の写真を撮りなさいな・・・」
 と、聞き取れたのだが、この車掌さん、マイクでの車内の案内は標準語だったが、会話はかなりの地域なまりがあり、まあそんなふうに言われたような、そうでないような、、、。




ストレートをフルノッチ運転中。“鉄”の専門用語では、この眺めを“かぶりつき”という。なお“かぶりつき”はストリップ劇場用語でもあるが、意味はさほど変わらない。

亀甲駅進入。左に立つ標識、90は通過の際の制限速度。35はポイントを右に走る際の制限速度。35km/hを守らねば脱線する。


津山線は単線(山手線のようなのを複線と言う)だから、列車のすれ違いは駅で行う。でないと正面衝突するのである。

亀甲駅のカメ! でもなんで列車から降りて撮ってるかって? それはねえ、運転手とアンパンマン車掌のわずかなご好意にちょっと甘えて、、、。


発車の合図を私に送る最後尾の車掌。


白い標識に14と書いてある。これは勾配表で、1000m走って14m下るという意味。ここで“つやま”の運ちゃんノッチオフ。アイドリング状態で駆け下りてゆく。

カミさんをほったらかしで“かぶりつき”していたら、いつのまにか終点津山駅に進入。おっ、右に円形の建物があるぞ。これが機関庫かぁ?


“330PS車”とある。ほ〜らね、やっぱりそうだ。ノーマル220馬力エンジンから330馬力に置き換えた車両だ。加速力が違うわけだ。

津山駅に到着して「先ほどはありがとうございました」と車掌さんに挨拶したら、「ちょっと待ってて、車内を点検するから」と。




私と車掌さんと“急行つやま”のスリーショットで写真を撮らせてくれました。
どうです、この車掌さんの表情は、、、。



帽子を貸してくれたのも車掌さんのサービス。
それにしても筆者が登場するのは珍しい。



 最高だね、JR西日本の“急行つやま”、ローカル線ならではのサービスだね。だから“鉄”はやめられないっ、つうの。

 いかがだったろうか、鉄道の旅。私の“鉄”人はこれで少しお分かりいただけたかと思うが、でもなぜバイクで津山に来なかったのか?を最初に話するのを忘れていたようだ。説明しよう。
 話は簡単だ。ちょうどひと月前の東北二輪旅、4泊5日の初日の新潟でカミさんが立ち転けした。その時は単なる打撲と思い、そのまま旅を続けたが、帰宅して病院で検査したら骨盤にヒビが入っていた。完治するであろう2〜3ヶ月間は無理ができないので“鉄道”の旅、となったわけだ。
 しかし、だからといって鉄道を、この二輪旅紀行でこんなに濃く露出することはないじゃないか、ときっと思われることだろう。でもそれは、私が“鉄”であるから仕方がない。あとでさらに濃い鉄ページを作るのも仕方がない。

 ところでここ津山に来た“仕事”の内容も、そろそろ明かさなくてはならないだろう。先ほどは品川駅新幹線ホームに“のぞみ9号”が入ってきて説明する時間がなかったものでね、、、
 ん? 津山駅前にクルマの迎えがやって来た。この街のスカしたバイクショップのマダムであった。待たせるのも悪いから、説明は次のページにしよう。。。



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