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文:石野哲也 写真:坂上修造(時々三橋・石野) ウェブデザイン:三橋 2007年4月8〜11日 5ページ [ショートカット・・・第二話 第三話 第四話 最終話] |
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第一話 2007年4月8日 |
「奈良にある鹿革のタンナー(革の鞣し加工)さんを訪問するんだけどよぉ、行くかい?」 行きます、行きます、行きますともぉ……と二つ返事で電話口から大田区方面に向かって5万回ほどお辞儀をしたのが数ヶ月前。 「ただ、タンナーさんを訪ねるだけではもったいないから、恒例の桜巡りをしようって寸法だぁ。どうだい、鹿と桜と奈良の旅だぁ」 「はい、はい。粋でがんすねぇ。アタシもねぇ、桜には目がないんですよ。本当に !! これまた桜鍋も良がんすねぇ、」 「馬鹿野郎! 桜鍋は馬で、鹿は紅葉鍋だぁ。ついでに言やぁ、猪は牡丹鍋だぁ。馬なのか鹿なのか、はっきりしろい!」 「へい、へい。その通りでがんす。奈良といえば、やっぱり鹿ですよねぇ」 と、タイコを叩きまくったのが、数週間前。 賢明な読者の皆様なら、すでに鹿と奈良の相関関係を目くるめく速さで結びつけていることだろう。そうなのだ。誰だって、あそこの鹿とこっちの鹿を無条件に結びつけてしまう。でも、そんなことはないんだな。だって、あそこの鹿は大切な神の使いなんだもの。それでも、なんらかの関係があるのではないだろうか……と下衆の勘ぐりをしたくなるのも人情でございましょ。そんなことを、内に秘めつつ旅に備える時間も、これまた楽しいものなのであった。 |
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今回の紀行のメインイベントは、奈良県宇陀(うだ)市の鹿革タンナーを訪ねて、その魅力を全力解明すること。そして、サブイベントとして、美しい奈良の桜と寺社仏閣を満喫しつつ、カタログ用の撮影をこなしてしまおうという、一石二鳥か三鳥かという忙しさ。 三橋さんは、今回の撮影に合わせて鹿革のジャケットを試作した。どこにでも着ていける落ち着いたデザインと、しっとりとしなやかな鹿革がマッチした逸品である。それに合わせて、俺、石野は同じデザインで、馬革仕様を試作してもらう。ふたりで並べば、馬鹿ジャンとなる。それがやりたかった……だけではない。牛革とは違う新たな素材への挑戦として、鹿革が選ばれ、同時に馬革も選ばれたことは、既にラインナップされている“馬鹿(うましか)グローブ”をみれば自明のこと。そして、その舞台に奈良は相応しかったのである。 そう、これまた賢明な読者なら、すでに新商品のPRが始まっていることに気付きつつあるだろう。これまでとはひと味違った、2枚目の革ジャケットに相応しい逸品の登場である。着ている人たちが、あからさまに3枚目であることだけが遺憾ではあるが……。 PRは、追々本文中に忍ばせるとして、旅のメンツにでも触れておこう。今回は、男カワサキのゼファー750とW650がモデル車両。どちらも、ペアスロープの広報車両(?)というか、三橋家の私財。それぞれのバイクは交換しながら乗っていく。ずっと同じだと、お尻が痛くなるからね。 そして、カメラマンの坂上修三さんは、カメラ機材と春物から革物までのジャケット類を満載したクルマ。走るクローゼット状態で、渋滞路は苦手ながら、風雨もしのげれば、いつでも煙草を吸える魅惑の1台だ。 さて、メインタイトルは「男奈良」である。今すぐにでも明かしてしまいたい事の顛末はまだ伏せるとして、男3人の西への旅が始まるわけだ。 |
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西へと向かう高速道路で、ボーッとしながら何となく考えてみる。“奈良と鹿”は多分に勘違いを含みつつ繋がるけれど、“奈良と馬”はあっさりとは結びつかない。 西風(ゼファー)に乗って西に向かう。(向かい風じゃねえか?) 訪問予定地は、宇陀はもちろん、吉野山と東大寺も確定。他は天気と時間に合わせて考えるから未定である。 東大寺といえば、大仏殿と南大門。南大門は、大仏様の代表的建造物。大仏様とは天竺様ともいわれる。天竺とくれば、西遊記。 身震いするくらい素晴らしいこじつけを考えちゃった厚木IC過ぎの東名高速!! 三橋さんは申(サル)年だから孫悟空としよう。坂上さんも申年だけど、悟空はふたりもいらないので、沙悟浄にしちゃえ。そう思ったら、顔もそれ風に思えてきたぞ。じゃぁ、石野は猪八戒かぁ、というほど単純じゃないんだな。 馬革ジャケットの石野は午(ウマ)年。そう、孫悟空には白毛の馬がさりげなくレギュラーだった。しかも石野は、ひじょうに馬面である。馬面の馬が馬革を着て、天竺へ向かうご一行に付いて行く……。なんて、強引なんだ。身震いしちゃうぞ。 それじゃ、猪八戒と三蔵法師はどこにいるのか。それは、まだまだ秘密なのだ。謎が多いほうが、楽しいんではないだろうか、ということですな。鹿はどうした? という声も聞こえておりますが、鹿は奈良でお持ち下さるわけですな。うん、うん。 |
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奈良へは、環七夫婦坂を出発すると、国道246を左に折れて環八で右に折れて、用賀から東名高速。東名高速豊田から伊勢湾岸自動車道を経て、伊勢自動車道から東名阪と国道25号をひた走るという、いたってお手軽なルート設定。 伊勢湾岸自動車道は、名古屋市内を抜ける面倒くさい分岐の数々を避けられるというだけでも利用価値は高い。距離にしたら15kmくらいの違いだけれど、それ以上に紀伊半島方面への接続が早いし、利用料金も少し安くなる!! これは素晴らしいね。眺めも良いし、空いてるし、路面は新しいし。中京地区の猛烈な勢いを感じるねぇ。空港は造るし、高速道路も造るし……あの大企業はすごいねぇ。 ということで、お腹も減ったし伊勢湾岸自動車道の刈谷ハイウエイオアシスで昼食。 ここの商品購入システムはとっても近代的で、都会モンの我ら3人がオロオロしてしまう。券売機で商品を選び、食券が出てくる。ここまでは、お馴染みの風景なのだけれど、ここからが違う。カウンターで食券を渡そうとすると拒否される。すでに、券売機でボタンを押した時点で、注文が入っているんだね。恐れ入ったよ。こっちは、食券持ってウロウロしまくりだよ。そうしていると、放送で「○○番の方ぁ」と食券番号でお呼びが掛かる。食堂内は、つねにその声が響き渡り、駅のホームにいるような気分だ。運転免許試験場みたいに、電光掲示板式にしてくれないだろうか。ちょっと騒がしいぞ。 三橋悟空さんは「名古屋なら天ぷらだぁ」と言いつつも、“エビフリャア”という響きに負けたのか、海老フライカレーを選択。結果的に「失敗したぁ」と繰り返しながら、フリャアを食べていらっしゃる。坂上沙悟浄さんは、独りだけ抜け駆けして牧ノ原SAでうどんを食べていたので、ここでは食券も持たずにウロウロしていらっしゃる。石野馬は、讃岐風カレーきしめんを選択。どこがどう讃岐風なのかは謎だけれど、味には満足。 再び走り出して、東名阪自動車道亀山ICからほとんど道なりに国道25号線、通称“名阪国道”を西に向かう。東日本の皆さんにはご存じない方もいると思うけれど、びっくりだぞ名阪国道には。60km/hの一般国道なのだけれど、自動車専用道路で、しかも流れの速さは高速道路並。まったく日本的じゃない道である。あれよ、あれよという内に針ICに到着。 ここまで、数回しか曲がってねえだよ……。 |
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